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03.初めてのテイム。おっぱいは出ません。

 ん? あれは……?


 おれがティーとの剣術の訓練を終え、汗を流すためにお風呂へと向かい、何故か一緒に入って来たティーにむにむにと汗を流され部屋へと向かう途中。それの姿をちらりと見ることが出来た。


 白いハムスター……この世界では、プチ・ラットと呼ばれるモンスターの姿……世界最小のモンスターとも呼ばれているらしい。鼻をひくひくと動かし、廊下の隅をちょろちょろと駆けている。結構可愛いな……プチ・ラットはモンスターではあるが、危険性は皆無と言われている。


 力がまったくない上に、危険感知能力が優れているので、滅多に人前に現れないのだ。それに、生殖能力が無いから前世の世界のネズミのようにやたら増えたりもしないしね……。


「あ、そうだ……!」


 プチ・ラットなら、テイムの練習に丁度いいんじゃないか?


 何時かは、とは考えていたが、今の今まで家の中で見ることが無かったので諦めていた。ティーが空間魔力まで綺麗に掃除をしてしまい、屋敷の中に歪んだ魔力というのが皆無で産まれることがなかったのだ。こいつは、恐らく外から屋敷の中に入ってきたプチ・ラットだろう。


 どちらにせよ、これはチャンスだ。


 おれは慌てて服を弄る。今日は食べてないから残ってるはずなんだけど……良し、あった! 取り出したのは、訓練の間にどうしても小腹が空いてしまった時用のビスケット。こいつであのプチ・ラットを誘い、テイムしてしまおうという作戦だ。要するに、単なる餌付けである。


「ちちちち……」


 ビスケットを手に、プチ・ラットの気を引く為に、小さく声を上げる。小動物相手には、前世も今世もこれが定番である。相手は動物でなく、小さくともモンスターだが……。


「……? ちゅちゅ」


 おっと、こっちに気付いたようだ。こっちを見て、鼻先をひくひくと動かしている。ビスケットの匂いでも感じ取っているんだろうか……ほれほれ、ママ特性のめちゃうまビスケットだぞ?


 おれはテイマーとしての能力を使用しながらプチ・ラットに向け、ビスケットを差し出す。この能力は、僅かではあるがモンスターとの意思疎通が出来るという優れものだ。まぁ、なんとなくでしか無理な上に、興奮している相手にはまったく通じないので使い所は難しくはあるが……。


 まぁ、今回の場合はそう難しくは無い。『美味い食い物』という意志をプチ・ラットに送ればいいだけだからだ。欲しかったらおれにテイムされようねー、そしたらいっぱいあげるよー……と、プチ・ラットに毒電波を流す。


「ちゅちゅっ!」


 すると、プチ・ラットがビスケットに一目散に突っ込んでくる。余程腹を空かせていたのか、その勢いのままビスケットに飛びつくと、カリカリと音を立てて齧りはじめた。


「はは、落ち着いて食えよ。ビスケットはまだあるしな」


 そう言って、おれはプチ・ラットの頭を指先でくりくりと撫でるのであった。あ、これは結構なもふもふで……。




「そろそろ落ち着いたか?」


 計三枚のビスケットを食べ、プチ・ラットは満足そうに腹を見せぐでーっと寛いでいる。こいつ、即効で野生を失ってやがる……プチ・ラットとはいえ、チョロ過ぎない?


 う、うぅん……なんか、こぉ警戒心が皆無なのが微妙に気にはなるが……とはいえ、約束通りテイムさせてもらおうか……始めよう。


 まずは、自分の中にあるテイマーという職へと意識を向ける。すると、なんとも言えない感じではあるが、そこから応えが返ってくる。おれが、今テイムしているモンスターの数は無し、そしてテイム可能な枠数は三つ、といった具合におれの中から伝わってくる何かがあるのだ。


 まぁ、良くラノベにある表示枠として視界に現れるステータスの、枠無しバージョンのようなものだろうか? 視界ではなく、感覚でわかる感じだ。


「こほん。我が名はアルリアース、汝の名は……」


 名は……名前、何にしよう? やべ、考えてなかった……まぁ、プチ・ラットだし、『チット』でいいか!


「汝の名は『チット』也。契約の履行により、汝を我が従魔とする。共に末永く同じ道を歩むことを……願う」


「ちゅっ」


 おれが呪文、というより誓いの言葉? を唱えると、チットの下に魔法陣のようなものが現れ、そのまま消えた。あまりにあっけないが、おれの中から伝わってくるのは、これで完了したという感覚のみ。ならば、これでいいのだろう。


「チット、悪いけど、起き上がってもらえるかな? おれの言うことがわかるなら、その場で三回周ってくれ」


 従魔となったのであれば、おれの言葉が通じるはず……実際、おれの言葉通りにチットは行動をしてくれた。そして、逆にチットの言葉もおれに伝わってくる。


『食べ物、おいしかた。ありがと』


 おぉ! チット、ちゃんとお礼の言えるいい子じゃないか! おれは小さなチットの身体を手の平で抱き上げ、頬ですりすりとする。おれの初めての従魔、むっちゃ可愛い! うん、小さいけどもっふもふだし、最高だ!!


 こういうのを、親バカというんだろうか……?


 しかし、おれには使命がある。そう、神から与えられた、という体の使命が……でも、まずはチットに聞いてみないとな……チットが嫌がるようなら、モン娘化を強制するつもりはない。


「なぁ、チット。嫌なら嫌と言ってくれな? おれは、お前を変態させようと思う」


『……へんたい?』


「うん。まぁ、チットの身体を造り替えるってことだね」


『どうなるの?』


 言葉の意味があまり解ってないのか、チットがきょとんっと首を傾げる。かわええ。


「チットの身体が、おれと同じようになる。それと、チットが成長出来るようになる」


『せいちょう……チット、つよくなれる?』


 そのチットの問いに、おれはうんっと頷いた。あ、でも……強さにも色々な種類があることだけ伝えておいた。元々がプチ・ラットだからね、腕力という点では余り成長出来ないかもしれないからだ。しかし、プチ・ラットの力の本質は、その弱さ故に身に着けた危機感知能力にこそある。それは、チットだけでなく、おれにとっても心強い力となるはずだ。


『チットへんたいする! アルのやくにたつ! 美味しいものもらう!!』


 うん。おれの役に立つって意志より、美味しい物をもらうって意志のが力強い気もするけど……ま、まぁプチ・ラットだし、やっぱ食い気のが先立っちゃうよね!

お読みいただきありがとうございます。

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