実行する
俺は急いだ。いつも以上に。
もう、日が暮れようとしている。
そして会議室へ帰ってきた。
「あれ、アーレ。今日早いんじゃない?どうしたの、そんなに血相を変えて」
メーテは俺の汗を拭いてくれている。見たことのない顔をしていると思う。
「そうかな。メーテ、早急にみんなを集めてくれる」
俺は急ぎ、みんなをを集めるように言った。
メーテも緊急だと気付いてくれたのかすぐに集めてくれた。
「明日、すべてを終わらせる」
「それは、何かわかったということか?」
「ああ、最悪の結果になるかもしれない」
それは任務を果たすという合図。
みんな、深刻な事態になっていることを理解してくれただろう。
「俺らとこの世界の崩壊は目指す先が一緒だったんだ」
そう、この世界には元からあったんだ。環境を壊す兵器、五素を消し去るほどの力を持った兵器が。
それは世界の源。
科学者たちはUPVは人間を神に等しき存在にする。
擬似的な神をUPVで生み出してあれを掌握し操作しようとしていた。
しかし、そんな紛い物では拒否され、世界の一部の環境を消滅させた。
このままではシンは必ず死ぬ。あれに拒絶され。
また、彼の願いは叶わず、自分の手で逆の事をしてしまう。
それは俺たちにすら最悪の結末だから。
この世界のすべての生命力が失われれば世界が混沌に飲み込まれてしまう。
それを聞いたみんなは膠着した。当たり前だ、予想よりも早すぎるから。
「だが、その前にコスモスを見つけ出すのは不可能だ。どこにあるかわからないからだ」
神は世界の源に外部からは干渉できず、場所を知ることすらできないからだ。
だから、この短時間では無理。それは全員わかっているから。でも、止めるのは不可能じゃない。
「だから、俺はシンたちを助け出す。そうすれば計画自体が止まる。うまくいけば誰かしら場所を知っているかもしれないからな」
「OK、アーレ。それで作戦内容は考え付いているんでしょう。ないわけないでしょ」
メーテは俺の顔を見て何もかもお見通しよって顔をしてきた。メーテには心を読まれている気がする。
「メーテは怖いな。じゃあ、作戦を説明する……」
俺は急いで作った作戦を説明した。それは急いで作ったから完璧なものではない。だが、みんなが色々な意見を出してくれてより良いものになった。初めよりは確実に成功する作戦になった。
短時間でよくここまでの作戦になったと思う。
俺はいい仲間を持ったと思った。
そして、気が付けば日が昇り始めた。俺たちは実行に移した。
「なんだか外は騒がしいな。おい、早くいくぞ」
「遅くなってすみません、父さん」
髪がしっかり整えたシンが玄関に来た。だが、目の下に隈ができていて眠れなかったことがわかる。ほかの子たちも眠れなかったように見える。
科学者はシンたちを連れて家を出た。車に乗り中心街の方へ。
だがなぜかその光景はいつもと違う。いつもより人や軍隊が多いのだ。
だが、今日は大事な計画の日、科学者は気にしないようにした。
到着したのは中心街にある巨大な科学研究所。
そこはシンたちにとっては魔界、地獄の入口なのだろう。
シンを含め全員中学生くらいだが、やはり怖い。
だが、科学者が連れられ仕方なく入る。
これが最後の空で最後の日差し、最後の外と思って。
「じゃあ、手続きをしてくる。絶対にこの部屋出るんじゃないぞ」
といい科学者は出て行った。ガチャっと鍵をかけて。
「みんな、大丈夫だ。必ず成功させよう」
「だけどシン、誰一人としてかえって来ていないんだよ。そんなところに行きたくないよ」
「マホ、大丈夫だから。絶対に」
シンはマホという女の子に笑顔で優しく声をかける。
それでもマホは安心しない様子。
「わかった。もし、死なずに帰ったら僕のそばに一生いてくれ」
シンが好きだった、守りたい子ってマホだったのか。
シンが言った言葉にマホは「うん」と答え二人とも顔を真っ赤にした。
周りはこれを聞いて祝福する。
だけどシンのしたこと前にどこかで見たことがあるような気が……。
まあ、そのあと二人はしばらく引っ付いていたけど。
しばらくして鍵がガチャと開いた。
その瞬間、空気はぽかぽかな感じから一変した。
「ごめん、手続きに時間がかかってしまって。全員居るな。よし、行くぞ」
科学者の一言にみんな、もうそろそろなんだと再度実感している。
それはもう帰ってこれないかもしれない。
こんな小さい子たちが死ぬ覚悟をしている。かわいそうに。
シンたちは手術室に連れてこられて、それぞれ椅子に座らされた。
そこでUPVを打つのだろう。そのあと、世界の源のところへ連れて行かれるのだろう。
手術室にはあの科学者を含め3人いる。
みんな心の中では「怖い怖い」とさかび続けている。
「怖い怖い怖い」シンの心の中ではずっと思っている。
しかし、ふと思い出した。
それは、ある約束。昨日した約束を。「もし、怖くなったら助けてと心の中で叫ぶんだ。そしたら僕が救い出してあげる」と。
そう、シンの心の支えだったあの言葉。
「お兄さん、助けて」
心で叫んだつもりだったのだが声に出ていた。
「心の中で叫べって言ったよな。まあ、約束だ。助けてやるよ」
声がした瞬間に科学者たちは壁に吹き飛んでいた。シンはすごく驚いていた。
まあいるはずのない人がいたら驚くか。カヤの能力で姿を消していたんだけど。
科学者はパトスとヘーラ、セイが吹き飛ばして壁に押し付けている状態なんだけど。
一つ失敗したことは吹っ飛ばしたときにあの科学者が手に持ってボタンを押されたこと。それでサイレンが鳴り響いてる。
「パトスとヘーラの方はもういらないから」
というと二人は銃で心臓に一発、殺した。血はあまり飛び散らず。
でも、子供たちには悪いな。
「お前ら、何者だ」
あの科学者が口を開いた。まあ動けないから何もできないんだけど。
「はあ、口うるさそうなやつが話しかけてきたよ。俺たちは神の軍、黒界軍の六神徒です。俺はそこの隊長のアーレと申します。よろしく」
「神、笑わせるな。そんなわけないだろう」
「はあ、そこのエセ神を作っている奴に言われたくないわ。カヤ、あいつに教えてやれ」
「ははい、隊長」
カヤは能力を使って科学者の脳に直接情報を送る。それは俺たちが神だということを。
科学者は苦しむ。直接脳に情報を送ると脳が壊れるんだけどギリギリのところで送る。
送り終えると科学者は少し静かになった。
そこへほかの科学者たちがやってきた。
「お前ら、軍のやつらはどうした。こいつらをつかまえろ。こいつらを使えば計画が成功する」
科学者たちは捕まえようと手術室に入ってくる。
だが、入ってきた科学者はメーテが二丁の銃で撃って殺しているんだけれど。
「なぜ、軍のやつが来ない」
「それはね。街の周りの壁を破壊しといたから軍は外から流れ込む人たちの処理に追われているよ」
俺はあの壁は外にいる人間を中に入れないようにするのと、外にある情報を内部の人に知られないようにする役割だと確証していた。
また、外の人を生かしていたのは中の人に脅威とさせるためだったのだと。
「朝、騒がしかったでしょ。だからいつまでたっても軍は来ないよ」
科学者はおとなしくなった。よし、次のフェイズへ。
「シンに一つ聞きたいことがある。コアの場所はわかるか?」
「は、はい」
シンは震えながら答えた。怖いに決まっている。
目の前にいるのは楽しく話してた時の俺には見えないもんな。
殺されるかもしれないとおびえているのだと。
「じゃあ、セイ。もうその科学者にようないからいいよ」
セイは銃を取り出して科学者を殺した。
メーテも外から来る科学者の処理も終わったみたい。
読んでくだりありがとうございます。
黒界軍が本格始動しました。
次回もお楽しみにーー