第 8話 神樹
更新が遅くなり大変申し訳ありません。仕事がバタバタしていて書けなかったです。
今回は会話パートが多くなりました。
次は火曜日位には更新できるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。
核を撃ち抜かれた皇蟲は再生された身体を一瞬の内に石化させ、その活動を停止した。
更にとても大きく、強い光が何個も産まれ、その内の半分ほどが俺の身体へと吸収される。
普通に怪物を倒した時も光の粒になり、吸収されたが、今回の光は規模が全く違う……。
やはり皇蟲はレベルの次元が他とは遥かに違うんだろう。
『た……倒せたの……でしょうか……?』
ルヴィスの声が頭に響いた。
彼女が手伝ってくれなければ皇蟲は倒すことが出来なかっただろう。
お礼をしないといけないな。何が良いだろう?
「どうやらそうみたいだな。光が出て吸収されたし、多分、もう大丈夫だと思う。」
『良かった……。お兄さん、それなら早くそこから逃げてください。その辺りはもう外周部所か深部すら超えて深淵部に入ってるはずですから相当危険ですよ?』
「いや、心配してくれるのは嬉しいけど、俺は神樹に用があるんだ。だから戻るわけにはいかない。……あっ!さっきも言ったけど領兵達には気付かれないようにしてくれ。頼む。」
『それは……勿論お兄さんがそういうのであれば、私は言わないので大丈夫だと思いますけど……何故神樹に?何か有るんですか?』
「上手くいけばそれで俺もルヴィスもこの奴隷状態を打破出来るかも知れない。その為には少なくとも、まだ俺の行動を気付かれたく無いんだ。」
まぁどうやって解放させるかについては彼女に教えるわけにはいかないけどな。手段が手段だし、彼女を巻き込みたくは無いからな。
解放された後は神樹の枝が命綱に成りうる。だからこそ今、手に入れて隠し持たなくては……。
『お兄さんも解放される為というなら、私が反対するわけにはいかないですけど……それでも出来たらその森からは早く出て欲しいです。その森はこの世界の全ての種族が神樹を我が物にしようとしているにも関わらず、攻略する事が出来ずにいる禁断の森なんですから……。』
「禁断の森……?確かに皇蟲を俺が倒せたのは運が良かったからだろうけど……本当に強い人なら何とか突破出来るんじゃないのか?」
『本当なら皇蟲を倒すこと自体が異常ですけど……皇蟲だけではなく、その森には神の使徒が居ると聞いています……。お願いですから無理をしないでください。』
神の使徒……。皇蟲よりもやばいんだろうな。
とはいえ、さっきからルヴィスと話ながらも全力で神樹へと向かっているのに虫の1匹も見なくなった。
皇蟲を倒した事の影響なら構わないけど、もしも、ルヴィスのいう神の使途って奴のせいだとしたら……。
「なぁルヴィス。神の使徒ってのはどういうやつなのか知ってるなら教えてくれないか?」
『伝承は各種族で違うらしいですけど、私達の種族に伝わっているのは“深淵の森の最奥地、神樹へと辿り着く者へ神の試練を与え、相応しくない者を必滅させる者”として伝わっています。
私が知っている他の伝承は、“神樹に野心を持つ者、その使徒により滅亡せしめる。神樹は不可侵の聖域なり。触れるべからず”と言う耳長族のものしか知らないです。』
種族毎に伝承が違う。つまり、同一のタイミングで起こった事ではなく、別々のタイミングで起こったのだろう。
また、ルヴィスの種族はきっと単独で、耳長族は集団で挑んで、その上で全滅。もしくは行方不明になったんだろうな。
「……つまりはよくは知らないけど、やばい存在が居るってこと位しか伝承されて無いって事か。……出会わない事を祈るしか無いな。」
野心とかモロで俺が抱いている内容に合致しちまうしな。
出会わない事を祈るしか無い。
常時展開している紫電雷纒の消費MPのせいでさっき使用した攻撃魔法分のMPは回復してないからな。
『この森の調査状況は外周部はともかく、深部以降は一向に進んでいませんから……。特に深淵部は伝承クラスの話と皇蟲について位しか……。』
「いや……大丈夫だ。急いで神樹へ向かって急いで出るさ。」
そう。もう神樹は目の前だ。
俺が最初にこの世界に現れた場所。この場所ではあれさえあればきっと役に立つ筈だ。
少しだけ小高くなった丘、森が途切れ、たったの1本の樹だけで構成されたその丘は最初にこの世界に転生した時と全く変わらない。
まぁ数日程度じゃ変わるはずないけど……なんとなく既に懐かしく感じてしまうな。
『これが……神樹ですか。どうせならスキルで視るより直接見たかったですね。まぁこんなにそばで神樹を見た人は居ないでしょうし、充分にありがたい事なんですけど……。』
「そういえば俺の視界と共有してこの光景を視れるんだったな。幸い使徒には会わずに済んだし、早速目的を済ませて戻るよ。」
『は……を……つ……』
ん?ルヴィスの声がまた途切れ途切れになった?
MPが切れたとかかな?
まぁ良いか。先ずは目的だった枝や葉などを空間収納で出来る限り集める。
小枝も葉もそもそも余り落ちてないが、とはいえそれでもトータルで100~200位はあった。
葉でもあの棍棒みたいに虫が襲わなくなる効果があれば良いけど……。
一通り集め、俺はなんとなく神樹へと手を置いてみた。
転生したばかりの時も壮大な樹だとは思っていたけど、まさかそんなに大層な樹だとは思わなかったな。
『酷いなぁ♪これでもこの樹は神話の時代からある樹なんだよ?こうして僕がお話を伝える媒介に出来るくらいの高い神通力もあるしね♪』
!?
直接頭に響いた声に驚いて樹から手を離す。ルヴィスじゃない。この声はあの自称神様の……?
『そうだよ♪この樹は紛れもなく“神樹”だからね♪僕達、神が下界に干渉するための媒介であり、世界の楔でも有るんだ♪』
手を離しても声は聴こえるのかよ……。あ、でも神様ならこの奴隷輪も何とか出来るんじゃないか?予定とは違うけど好都合かも知れないな。
『あ、先に言っておくけど僕はこの世界に対しては必要以上の干渉をする気はないからね~♪既に君っていう干渉をしているんだし、これ以上の直接的な干渉はつまらなくなるじゃない?』
「頭の中を読めるのかよ……。なら何か用事でもあったのですか?」
『ん?ん~……強いて言うならアドバイスをしに来たって所かな♪僕以外の神がこの世界の過去に干渉したみたいでね♪ちょっと干渉が過ぎるから君に横槍を入れてもらおうかなって思ってるんだよね~♪』
……めんどくさい。つか別にそれをしないといけない理由は俺には無いよな……。いや、まぁ過労死した俺を転生させた事に恩を感じなくも無いけど……。
『ちなみにその神が干渉した者が奴隷輪の開発と奴隷制度の設立をしているし、今代の干渉者は奴隷の斡旋をしているみたい♪つまり……』
「間接的に俺にとっても敵って訳か。
で?俺にそいつを倒せって言いたいのか?」
『違う違う。そんなことを頼むつもりは無いよ♪僕が頼みたいのは奴隷にされた子達を解放してあげて欲しいって事さ♪』
「解放と言っても……俺が今考えている方法は奴隷の使役者、つまりは王を殺すしかないって考えていたんだぞ?まさか奴隷持ちのやつを全員殺すのか?流石にそれは……」
『うわ……君、そんなことを考えてたの?そんなの無駄なのに……。』
「無駄?いや、だって例えば範囲魔法で図らずも巻き込むとか、この腕輪を槍に変化させた時に誤って心臓を貫くとかすれば……。」
『できる訳ないじゃん。仮にも神の使徒が作った首輪を軽く考えすぎだよ♪その首輪はね?奴隷に害意があるないに関わらず、主人に危害が及びかねない事には全て反応するんだから。』
「って事は後は誰か奴隷以外の人間が主人を倒すなり、殺すなりするしか無いって事になるのか?」
『まぁ昔はその手法で奴隷から解放された子も居るけどね♪今は大抵そのまま主人が変わるだけで終わるみたいだけど。後は天災や事故かな?』
「……まぁ要するに俺に奴隷の主人を殺して回れって事だろ?流石にそれは嫌だ。」
こちとら人殺しとは直接関わらない日本で過ごしてるんだぞ。なんで見ず知らずの奴等の為に大量殺人なんぞしなくちゃならないのか理解できない。
今回あの王を殺すのだって自分自身が関わって居る上、このままだと殺され兼ねないからであって、そうでなければ殺すなんて発想自体が出てこないからな。
『やだなぁ♪そんな真似を神である僕がお願いするわけないじゃないか♪さっきも言ったけど解放して匿って欲しいのさ。ステータスウインドウを開いてごらんよ』
『ユーリ』
レベル 34
力 270+80%
素早さ 340+80%
丈夫さ 290+80%
体力 780+80%
賢さ 290+80%
HP 880
MP 290
スキル
企業戦士
依頼に対するステータスの超高補正。依頼に対する獲得経験値の増加、成長率への高補正
ラーニング
知識、技術の習得に対し高補正。対象により被弾時に習得する場合あり。
空間収納
任意のアイテムを収納、取り出しが行える。収納量はMPに比例し、収納分のMPを常時使用。取り出す事で元に戻る
神の加護Lv34
幸運と試練、成長の加護、神の知識の代弁者、神の使徒へと至る者
解放者Lv34
あらゆる因果、運命を断ち切る者。レベルに応じてその権能の上限解放する。
皇族に連なるもの
皇蟲、皇龍、皇獣、皇魚、皇神の末席に連なる者。皇魔法の開発、習得を可能とする。
属性適性
風 10
風纏 斬風 暴風陣 風神乃剣 風神乃槍 暴龍乃息吹
水 10
水撃 水刃 水流擊 海神乃鎧 海神乃障壁
雷 10
雷纏 紫電 雷刃 紫電雷纏 雷神乃鉄槌
闇 10
暗玉 暗幕 重力 邪龍乃牙 暗黒神乃抱擁
光 10
小癒 浄光 癒光 光乃矢
極光癒 神乃審判
うわっ……異常にレベルが上がってる。
しかもスキルまで増えてるし。
解放者に皇族に連なるもので2つも増えた。
……多分解放者は神様の言っていたやつなんだろうな。
でもこの皇族に連なるものってなんだ?皇蟲を倒した訳だし、心当たりはあるけど……皇魔法とか聞いたことも無いしな……。
『解。皇魔法とはロストマジックと呼ばれる3属性以上の複合魔法の事です。複合魔法は同時発動とは違い、2つの魔法の性質を混ぜ合わせ、別の物と変化させます。』
「誰だ!?神様以外に誰か居るのか!?」
『我は神の加護です。神の知識の代弁者にして試練を与えるもの。我が主、今後ともよろしくお願いします。』
『あははははっ♪ついでだから神の加護の権能のロックも外したからね♪役に立つ筈だよ♪』
神様が笑いながら答える。声質はまぁ似ているんだけど、いかんせん神の加護は固い。そして神様の声は軽い。
まぁ良いか。知識は有り難いしな。
解放者のスキル、因果や運命を断ち切るって事は要はこの奴隷輪の契約も断ち切れるのだろうな。
レベルに応じてってのはレベル次第で出来ることが変わるのだろうか。
『そうだよ♪因果律にも干渉するスキルだからね。奴隷輪位なら30も有れば断ち切れるけど、例えば死者蘇生とかのレベルの話だと最低でも100位は必要になるかな♪先ずは奴隷の子達の事、よろしくね♪じゃあ僕はもう行くからね~♪ばいばーい♪』
「ちょ!?……マジかよ。本当にもう気配が無いじゃないか。……まぁ仕方ないか。どうせ少なくともあのクズの奴隷は解放してこの森に匿うつもりだったしな。後はこの葉や小枝でもこの森の虫達を大人しくすることが出来れば良いけど……。」
『解。結論から言えば可能です。この森の生き物は例外なく神樹には害意を持たないのでそれを持つ者にも害意は持ち得ません。』
あ、そうか。神の加護が教えてくれるなら聞けばいいんだな。
まぁ効果があるなら良かった。
目的達成したしルヴィスの元へ帰るかな。
そうして俺は神樹へと一礼をした後、野営地へと向かって進むのだった。
『久々の下界は楽しかった~♪彼は救世主へなるのかな~♪案外破壊神になったりして♪期待してるから頑張ってね~♪』