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第4話 悪意

4話を更新致します。

よろしくお願いいたします。

「貴様を強奪と詐欺の容疑で捕縛する!無駄な抵抗はするんじゃないぞ!」

「ま、待ってくれ。そもそもあんたらは何なんだ?全く身に覚えが無いんだが。」

「しらばっくれても無駄だ!その娘の奴隷輪が動かぬ証拠だ!」

「いや、だから話を……」

「問答無用!引っ捕らえろ!」



その後、部屋の外に居た領兵と名乗る兵たちに俺とルヴィスは捕らえられ、イーストフォレストの城の牢屋へと入れられた。

槍を突き付けられ、下手に抵抗すれば刺されかねない剣幕に抵抗はしない方が良いだろうと無抵抗で兵達に従う。

本来ルヴィスは連行される必要は無い筈だが生きた証拠と一緒に牢に入れられた訳だが……。


「ルヴィス、大丈夫か?悪いな……こんな目に合わせて。」

「……私は……大丈夫です……。」


ルヴィスは膝を抱えて座り込み、ポツリと一言だけ言葉を発し、また黙り込んでしまった。

ルヴィスからすれば、俺が下手に昨日の夜、希望を与えてしまっただけに今の状況はショックも大きいはずだ。

何とか解放してあげないとな……。

昨日、ミーシャ、ケインに話を聞いた限り、本来であれば奴隷の売買を行えば奴隷輪の更新なり除去なりが必要になるはずだ。

だが昨日は俺が無知だったがゆえにその点には全く触れていない。

すなわちあの貴族風の男が脅されて奪われたとでも領兵に訴えたといった所だろう。

しかし、それならかなりの数の町の人達が目撃しているし、流石に昨日の今日だから誰かしら覚えている人もいるだろう。


まぁあの男は、この件が解決したらしっかりと報復してやらなきゃな……。


それにしてもサーシャとケインは一体どうしたのだろう。

昨日は両隣の部屋をとっていた筈だから、この騒ぎに気付かない筈は無いと思うんだけど……。

まぁケインの方には若干俺を敵視しているような気がするし、気付いても動かない事もあり得るのかもしれない。

流石にそんなことはしないと思いたい所だが……。


「出ろ。王が自ら裁くそうだ。」


そんなことを考えていると、領兵が俺とルヴィスを王の元へと連れていくために鍵を開け、縄で手を縛られた。

ここで騒いだ所で、なんもならないので素直に指示に従う。

どうやらルヴィスも俯いたままでは有るが、指示に従っているようだ。

若干罪人扱いにイラッと来ないわけでは無いし、暴れてやりたいと思う衝動に駈られもするが、流石に王……もとい国が相手では勝ち目なんか有るわけもない。大人しく従った方が良い。

まぁちゃんと捜査をすれば身の潔白は証明されるんだからほんの少しの辛抱だ。


領兵に連れられて城内を歩いたが、なんというか……あの有名なRPG、竜の冒険みたいな作りの城だなと感じた。

所々に領兵は立っているが城の規模のわりに人の数が少ないように感じるし……。

まぁ何かしらの任務とか町の方の警備にでもあたっているのだろう。

やがて異様に大きく豪華な扉へと辿り着き、扉の両サイドに居た領兵が扉を押し開けると、その中は大広間になっていた。

奥には玉座に座った、眼光の鋭い初老の男と、俺がルヴィスを買い取った貴族風の男、そしてミーシャとケインが居た。


両サイドには領兵がかなりの数いるが4人は揃ってこちらを向いている。視線にはかなりの敵意を感じた。

……なんだか雲行きが怪しくなってきた気がするな……。

俺たちを連行していた領兵が、王の前まで歩くように俺とルヴィスを促し、玉座の下に辿り着いた所で、無理矢理俺たちをその場に跪かせた。

その様子を見て、王が頷き、此方を一瞥する。



「さて、強奪犯ユーリよ。儂がこの国の王、ウドガルド・イースト・フォレスト10世だ。

今回貴様は儂が調達を依頼した鉱人属の奴隷を奴隷商より強奪し、更には仲間の武器を脅して奪ったそうだな。何か弁明は有るか?」


ウトガルド王は丸めた羊皮紙を読み上げると、俺を無理矢理座らせ続ける領兵に下がるよう伝え、俺が動けるように戒めを解かせた。

俺は自らの意思でその場に跪き、ウトガルド王に声を掛けた。


「陛下、お初にお目に掛かります。その件につきまして、私は奴隷商よりルヴィス……彼女を金貨3枚で買い取りました。陛下の所望していた事とは露知らず、横槍をいれた形になってしまい申し訳ありません。また仲間の件に関しましては彼等から貸していただいたのであり、脅しても奪ってもおりません。」


俺は事実を話し、王へと視線を向けると、王は此方へは視線を向けず、奴隷商やサーシャ、ケインに視線を送っていた。

やがてニヤリと王は笑うと……


「なるほど、彼等の言う通り貴様には虚言癖もあるようだ。その奴隷は儂が直々に買い取るように奴隷商へと依頼していた物。それをどこの馬の骨とも判らぬ輩に売るはずもない。その証拠に奴隷輪も着いたままではないか!……判決を言い渡す!奴隷の少女は儂の奴隷へと主従変更!強奪犯ユーリもまた戦闘奴隷とする!……貴様には属性適正が5つもあるそうじゃし、馬車馬のように働いてもらうとしよう!」


「なっ!?陛下、私が奴隷を買い取った所は多数の住人が目撃しています。どうかご確認を!」


「黙れぃ!この判決はウドガルド・イースト・フォレスト10世の名の元に下した判決じゃ!異論は認めぬわ!領兵、こやつの剣をやつらへと返し、奴隷輪を着けるのじゃ!」


俺の訴えは即座に却下され、その場で領兵に取り押さえられて腰の剣を奪われる。

更には暴れる俺の首に無理矢理奴隷輪が装着され、その瞬間、奴隷輪より、全身に強力な電流が流れ、俺は指一本動かせなくなった。


「(……声までっ!?)」

「さて、これで貴様も儂の奴隷となるわけじゃ。その首輪が有る限り、儂の依頼を達成しなければならぬからのぅ。まぁもう意識も有るまい。

さて、奴隷商ガルド、貴様には奴隷を2匹、儂に届けた褒美に金貨8枚、そこの2人にも金貨を1枚ずつやろう。また良い奴隷を見つけたら儂に届けるのじゃ。」

「「「は、陛下の仰せのままに」」」


王が声を掛けると、3人はニヤニヤとしながら跪く姿が俺の視界に写った。

王の話では本来なら意識を失ってしまうのだろうが、俺は特に意識を失わずに済んでいるようだな。

だが……身体を全く動かせないのではあまり意味はない。

……クソっ!まさかあいつらが全員グルとは考えていなかった。

せめて、なんとか……この首輪を外して逃げなくては……。

……そうだっ!ルヴィスは無事なのか!?

どうにか視線を動かし、ルヴィスを見ると、俺と同じく、倒れている姿が視界の端に写り込む。

気を失っているようだが……ちゃんと無事なんだろうか……?


「領兵達よ、こ奴等を森へ連れていき、成長させよ。この娘もこのままでは幼すぎるからのぅ。あとの手筈はいつも通りに行うのじゃぞ!」


王の命令と同時に、俺とルヴィスは小さな檻に入れられた。

どうやら意識は無いと思われているようだし、機会を伺う為にもその勘違いに乗らせて貰う。

意識があると思われたところでなんの得もないだろうしな……。


「ふふっ。いい金づるになりましたわ。頂いた神樹の棍棒もかなりのお金になったし……。ありがとね。お上りさん。……クスクス。」


この声はサーシャか。畜生。あの女、絶対いつか報復してやるからな……。


俺たちを檻に入れた領兵達が、その檻ごと運んで行く。

やがて何かに乗せられる感覚を感じた。

どうやら身体の痺れが少しずつ取れていっているようだ。

俺は少しずつ身体の動きを確かめながら、あの外道に言われた成長について考えていた。

正直、今の力では何をするにしても力不足なのは明らかだ。

今は大人しく従うしかないが、最後まで思い通りになると思うなよ……。


俺は走る荷台の中で静かに拳を握り締め、成長し、この状況を打破し、可能であれば報復出来る方法を考える。

外道の思惑に乗るのは癪ではあるが、基礎のステータスは無いよりもあった方が良い。実際、兵に簡単に押さえ込まれてしまっていた事からも、今のステータスはあまり高くないのだろう。

情報が足りないし、この世界の強者がどれくらいの者なのかの基準値がわからないが、追々情報を収集していくとしよう。

……しかし、普通物語の主人公って転生した時点で、最初からチートだろ。まぁ、教会の話を信じるのであれば、今後成長していくとチートになれるのかも知れないけど……。


幸い鎧も腕輪になっている武器も取られてないんだし、一先ずはルヴィスも含め、2人とも基礎能力を上げるしかないな。

後はこの奴隷輪をどうにか解除する方法を考えなければ……。

やがてそんなことを考えているうちに、森の奥地に到着したようで、領兵達に檻ごと外に運ばれた。


「さぁ出ろ!」


檻の鍵を開けられ、俺とルヴィスは素直に指示に従って檻の外に出る。ルヴィスの装備は出会った時の、ボロ布のままだ。

あの外道、ルヴィスを成長させろとか言いながら装備も用意して無いのか……。


「貴様等には今からこの地でレベル上げをして貰う。鉱人であるこの奴隷が成長するまでは行って貰うからそのつもりでいろ!」

「待ってくれ!レベル上げと言うがルヴィスがこの装備のままでは守りきれない。せめて何か防具をくれ。」

「問題ない!この女は森には入れん!この檻に入れたまま貴様が戦えば良いのだ!経験値はパーティーさえ組めば、多少目減りするとはいえ入るのだからな!代わりに貴様にはこの剣を渡してやるからさっさとこの女とパーティーを組んでレベルを上げに行け!」


領兵は鉄で出来た武骨な剣を俺の足元に投げるとルヴィスを移動に使った檻に入れ、俺に催促してきた。

……この野郎……。

頭には来るが、確かにいくら装備を固めても、ルヴィスを守りきれるかは不明なのだ。である以上は仕方がない、というか好都合か……。


俺は剣を拾うとパーティーの組み方を領兵に聞いた。

ふざけているのかと怒鳴られはしたが、どうやらステータスウインドウから申請を行えばパーティーを組めるらしい。

事のついでと色々と聞いてみたが、怒鳴りはするものの領兵は質問にちゃんと答えてくれる。


パーティー上限は8名まででそれ以上は経験値を共有出来ないらしい。

また、戦闘中に何をしたのかで経験値の入りが決まるらしく、なにもしないのと全て対応したのでは凡そ2倍程度の差が出るらしい。

ちなみに人数による増減もあり、数に反比例して経験値は少なくなるが人数がいれば狩る速度が上がるし、何よりも命の危険があるこの仕事では、安全性が第一も上がるのでパーティーでレベル上げするのが主流とのことだ。


「聞きたいことはそれで終わりか?終わったならばとっとと行くが良い!この森の虫どもを少なくとも200は狩って貰うからな!」


200……虫ってことはあの大樹に近い森か……。

あの森、確かに大きな虫が居たけど何だかんだで点在していたし、200ともなるとあいつ等を探す方に苦労しそうだな……。


「ひとつ忠告だ。処理が難しくなったら直ぐに森を出ることだ。奴等はそれで追わなくなるからな。」


……?あの虫は好戦的でもないし、処理も何も1匹ずつ片付けていけば処理が追い付かないなんてことは無いと思うが……。

まぁそりゃ攻撃したら反撃もあるだろうし、周囲の仲間が集まる位は普通にあり得るか。

それでも処理が追い付かなくなる程とは思えないし、正直な所、そんなことは無いだろうなとは内心考えている訳だが……。

……まぁとりあえずは行くしかないか。


俺は剣を腰につけ、周囲の警戒は怠らずに森へと入って行った。

『あ~……。奴隷になっちゃったね~♪波乱万丈な人生だね♪見ていて飽きないよ♪君の冒険譚を楽しみにしてるんだから直ぐに死んだりしないでね~?』

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