第14話 臨界者
いつも読んでくださりありがとうございます。
この話で第一章を終了予定です。
次の話から第二章として旅立つ予定ですが、一旦投稿済みのお話の誤字脱字、言い回しの修正や一部訂正等を行いたいと思いますので、次回の更新は恐らく来週後半になるかと思います。
訂正後もまだ誤字等見つけて頂けましたら教えてくださいますと助かります。
評価、感想も頂けましたら励みになりますのでよろしくお願いいたします。
俺が意識を失った後、様子を見に来たハンク兵長が俺を見つけ、町の宿屋まで運び込んだそうだ。
その後、生き残った領兵達により、崩壊した城の探索が行われた。中心部から正門の辺りまでは崩落が酷く、その上、最後に漆黒の液体が染み渡った事でかなりの死者が出ていたらしい。
何とか門番が独断で門を閉めたお陰で町には被害がほとんどで出なかった事は不幸中の幸いだった。
また、城の内部で生き残っていた者もそれなりには発見された。
地下牢に収監されていた奴隷の一部、そして城の最奥の外れにある、もっとも高い搭に幽閉されていた女王と王子とその搭の地下に居た元領兵軍の元帥が生き残っていたそうだ。
城の兵士達に関しては、あの王に忠実だった者達は現場に早い段階で向かった事で全員がその命を散らしたようだが、女王配下の者や元帥に付き従う者達等、多少の人数は生き残りとして救出されたらしい。
ちなみに俺とルヴィスはあの後、一週間もの間意識が戻らず、ようやく今朝方に意識を取り戻し、今はハンク兵長に状況を説明してもらった所だ。
「……って訳でまぁ城自体はまだ再建しちゃいないが何とか国としての形は保ってるって事だな。さて、なんか言うことは無いか?」
「……いや、まぁ……すまなかったとは思わなくもないが……。だがあのクズに対しては全く何も思わないな。」
「はぁ……。まぁ貴様はそう言うだろうよ。聞けば嬢ちゃんも斬られたらしいしな。陛下の蛮行に関しては女王陛下や元帥閣下が散々諌めていたにも関わらず、2人を投獄してまで強硬されていた事だから一定の理解は出来るけどよ。」
そう言い、ハンク兵長は肩を竦めた。
実際、あの時も彼は王に対して苦言を呈し、結果文字通り切り捨てられたらしい。
そんな事情もあるから本心からは庇いたいとまでは思っていないのだろう。
そもそも、実はハンク兵長自身も王にというよりも女王と元帥に従っていた兵士だそうだ。
女王が元帥と共に投獄される際に、王が国を無茶苦茶にしないよう、見張りとしてあの王の下に着いた経緯があるそうで、目に余る王の奴隷の使役や軍備増強、更には戦争を仕掛ける準備までしていたらしく、常々昔の賢君へ立ち戻って下さるよう進言を続けていた。
今回だけの事では無いのだろうが、結果としてはこのような事態になってしまった事で責任を感じている様子が伺えていた。
「ハンクさんは……正しい事をしていたと私は思いますよ……?だから、その……あまり、落ち込まないで下さい。」
「……嬢ちゃん……。まぁ……女王陛下が今は方々に掛け合って何とか混乱を治めようとしてくれているから、少なくともお前らを処刑とかそんなことにはならないはずだがな……。」
「当然です!彼等は非公式とはいえ、この国の膿を取り除き、戦争を回避したのですから。」
突如聞き知らぬ声が響くと同時に部屋のドアが開き、奥からは申し訳程度に着飾られた妙齢の女性と隻眼、隻腕だが、凄まじく威圧感がある中年の男が連れだって部屋に入って来た。
俺とルヴィスが誰かわからず困惑しているとハッと我に返ったようにハンクが座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、跪いた。
「こ、これは女王陛下!な、何故このような場所へ!?」
「ハンク、楽になさい。我が国の膿を取り除いた英雄が目を覚ましたと聞いた以上、私から出向くのは当然でしょう?」
「女王……様?し、失礼致しました。ご無礼をお許し下さい。」
ルヴィスもハンクに習い、身体を動かし辛そうにしながらも跪うとし、女王に良いからと止められていた。
俺?いや、身体目茶苦茶だるいんで……ちょっと無理ですね。
「自己紹介が遅れました。私はヴルド・イースト・フォレスト10世。貴方がユーリ様でお間違いは無いでしょうか?」
「……えぇ。俺がユーリで間違いはありませんよ。女王陛下。……目的は……やはり旦那さんの件ですか?」
「いえ、先程も伝えた通り、夫、ウトガルド・イースト・フォレスト10世は既に国賊の扱いとなっています。付き従っていた将軍ヴァインとその配下も同様です。」
「……なるほど。ではどういったご用件で?」
「お、おい!女王陛下に対して無礼だぞ!?敬語を使わんか!」
「ハンク。良いのです。……さて、用件でしたね。……実は……特には無いのですよ。強いて言えば私が一度貴方に会って夫の事を謝罪したかったといった所でしょうか……。」
女王が言うには今回の件は表向きには王族殺し、もしくはクーデターとしかならず、正式な表彰や感謝は出来ないそうだ。
だが、内情としては確かに内乱や戦争を回避した事になり、また、投獄され、幽閉されていた女王以下の救出にも繋がる功績も有るのでお忍びで感謝を伝えたかったそうだ。
もっとも罪に問われる事が無いよう国賊を討ったと国外には通したらしいが。
「まぁせめて明確な形として報奨をお渡ししたいところでは有るのですが……宝物庫も瓦礫の下に埋まっている現状では難しく……誠に申し訳ありません。」
「じょ、女王陛下が頭をお下げになられる必要は!?わ、我々が代わりに頭を下げますからお止めください!」
「黙りなさい。ハンク。今、私は私人として赴いているのです。国の恩人に対し、無礼でしょう。」
「俺、いや、私としても特に気にしているわけでは無いので頭を上げてください。」
流石にちゃんとした王族に頭を下げられてしまえば俺としても居心地が悪い。
それにもう気にしていないのは事実だ。ルヴィスも無事だったし、何よりもやり過ぎてしまって内心ではちょっとどうしようかなとか考えちゃってるし……。
「ちなみにユーリ様。今後はどうされるのですか?出来る限りの支援はさせていただきますが……。」
「あ~……一応は身体が治り次第、他の国……先ずは鉱人族の国の方に行こうかと思っています。それに神に依頼されたアンラ・マンユの種子の討伐もしなければなりませんし……。」
「……その実力で……か?」
ずっと後ろで話を聞いていただけだった隻眼で隻腕の男が片方しかない眼で俺とルヴィスをじっと見据えていた。
まるで全てを見抜かれるような鋭い眼光に、軽い威圧感を感じ、俺は言葉を詰まらせる。
今、負傷している事を差し引いても……ルヴィスと2人がかりで殺す気で挑んだとしても、かすり傷すら負わせられる気がしない。
「お前達は……一体そんなレベルでどうやってヴァインを下したのだ?……たったのレベル1で倒せるような軟弱な奴では無い筈だが……。」
……はい?レベル1?いや、一体何を言って……
『あはは♪ごめんね♪まぁ最後の引き金は君なんだからよろしくね♪あ、そうそう。僕ももう神界に戻るけど、今回の僕らの降臨で君や彼女、アンラ・マンユが喰らった全ての者達の魂力レベルが一気に無くなったから気を付けてね♪じゃ、まったね~♪』
「あっ……!」
俺は意識を失う前にあの神……スプンタ・マンユが言っていたことを思いだし、ステータスウィンドウを開いた。
『ユーリ』
レベル 1
力 30 (270+80%)
素早さ 45 (340+80%)
丈夫さ 50 (280+80%)
体力 300 (780+80%)
賢さ 45 (290+80%)
HP 300
MP 50
スキル
企業戦士
依頼に対するステータスの超高補正。依頼に対する獲得経験値の増加、成長率への高補正
ラーニング
知識、技術の習得に対し高補正。対象により被弾時に習得する場合あり。
空間収納
任意のアイテムを収納、取り出しが行える。収納量はMPに比例し、収納分のMPを常時使用。取り出す事で元に戻る
神の加護Lv38
幸運と試練、成長の加護、神の知識の代弁者、神の使徒へと至る者
解放者Lv38
あらゆる因果、運命を断ち切る者。レベルに応じてその権能の上限解放する。
皇族に連なるもの
皇蟲、皇龍、皇獣、皇魚、皇神の末席に連なる者。皇魔法の開発、習得を可能とする。
属性適性
風 8
風纏 斬風 暴風陣 風神乃剣 風神乃槍 暴龍乃息吹
水 8
水撃 水刃 水流擊 海神乃鎧 海神乃障壁
雷 10
雷纏 紫電 雷刃 紫電雷纏 雷神乃鉄槌
光 10
小癒 浄光 癒光 光乃矢
極光癒 神乃審判
マジか……ステータスが激減している……。つーか1って!!どれだけレベルを持っていきやがったんだ!?
……あれ?でもこの()内の数値はなんなんだ??
『解。レベルダウン前の数値まではレベルが上がる際に上昇しやすくなります。その上限がその数値となり、その後は今までと同じように上昇していきます。また、魔術、魔法に関しては習得はしているものの器の問題でレベル10までは初級のみ、20までは中級、20後半から徐々に上級のものが使用可能となっていきます。』
神の加護の解説は健在らしい。
解放者や神の加護のスキルレベルは下がらないみたいだな。
とはいえ闇の属性適正が無くなってしまったし、水や風も適正が下がったから普通に弱体化したことに間違いは無いか。
「信じられないかも知れないけど、神をこの世界に降臨させた事でレベルが一気に下がってしまったみたいだ。ルヴィスも下がっているのか?」
「みたい……ですね。覚えた魔法や魔術はそのまま習得していますがステータスは低下しています。」
「なるほど……。にわかには信じがたい出来事ですが、そもそもあの悪神や光の神を見たあとではそのような事もあるのでしょう。でしたら……彼とレベルを上げてはいかがですか?」
女王はそう言い、先程の隻眼、隻腕の男へと視線を向ける。
男はその場に跪くとその頭を下げ、言葉を待っていた。
「彼の名はジェラルド・バレンティン。この国の元帥にして只人族に5人しかいない臨界者の1人です。」
『お~♪臨界者があの国に居たんだね~♪アンラも彼が矢面にいたらもっと大変だったんじゃない?♪』
『ただの臨界者にやられる妾ではないわ。そもそも降臨したばかりで完全体の妾ではないのじゃから弄るのは止めよ。』
『ごめんね♪もう苛めないからそんな膝を抱えないで一緒に観ようよ♪』
『ぐすっ……スプンタなんて嫌いじゃ……。』