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第11話 悪神降臨

いつも読んで下さり、ありがとうございます。

少し遅くなりましたが、第11話公開になります。

あと3~4話位で纏めて第一章としたいと思っています。

読み直して誤字、脱字や言い回しがおかしい所が何ヵ所も有りましたので一章としてのお話が終わり次第纏めて直したいと思いますのでよろしくお願いいたします。


感想、レビュー、評価を頂ければ励みになりますのでよろしくお願いいたします。

痺れによる一瞬の身体機能停止。眼前に迫る剣戟。何か手はないかと目まぐるしく思考を繰り返すも起死回生となる一手は何も思い付かなかった。

ヴァインは自らが放った最初の攻撃に対して、俺が回避しただけでなく、反撃行動までとった事からおおよそのレベルを予測し、自らと余り変わらないと見ているのだろう。

少なくともこの一撃には、王の言葉通りに手加減をしているような様子は全く見られなかった。


俺に残された手は……この一撃に耐えきり、自己治癒を行うしか無いだろう。

しかし、正直耐えきれる保証の無い一撃に対し、一瞬の怯えが出てしまってその一撃から目を反らし

、少しでも致命傷を避けられるように身を捩ってしまった。

視界を閉ざし、その一撃が俺の身体へと届くはずと考えていた俺に訪れたのは、激痛ではなく、暖かく、柔らかい感触だった。

それがルヴィスの抱擁に依るものだと気付いたのは、既に事が終わり、ルヴィスの身体から流れ出る、生暖かい液体が俺の身体を濡らし、その力が抜けてずり落ちた時だった。

俺は咄嗟に彼女の身体を抱き止めるも、大きく斬り裂かれた背中から大量の出血で意識を失っている彼女の身体は、力無く俺の腕の中で倒れていた。


「ルヴィス!しっかりしろ!……ルヴィス!」


その身体からはどんどんと血が溢れだし、抱えた俺の腕の中から少しずつずり落ちていく。

俺は身体の麻痺が完全に消え、動くようになった瞬間、極光癒(リジェネレーションキュア)を掛けてルヴィスの傷を塞いでいく。

重傷ですらも数秒間で癒し、毒や呪いさえも癒す、上級回復魔法。

今、俺が使える最高位の回復魔法は、確かにその効力を発揮してルヴィスの背中の傷を癒していく。

しかし、深く斬り裂かれた背中の傷は大きな傷痕として残ってしまった。

しかも、極光癒(リジェネレーションキュア)では失ってしまった血液までは回復させることが出来ない。

傷が塞がったとはいえ、大量に出血してしまったルヴィスの意識までは回復させることが出来なかった。


「ルヴィス!ルヴィス!!意識を取り戻せ!……死ぬな!」

「……不覚。よもや小娘が出てくるとは……。」

「ヴァイン!貴様、余の玩具に傷をつけるとはどういう了見じゃ!しかもそんな醜い傷痕を残しおって……そんな醜女はもういらん!ハンク、その娘を処分した後、ヴァイン、貴様も降格じゃ!死刑が嫌じゃったらさっさと仕事をせんか!」

「……御意。」





あまりの怒りに周りの音がとても遠くに聞こえる……。

クズが何かをほざいているが聞き取れないみたいだ……。

……俺が馬鹿だったんだ。クソどもを信用して奴隷に落とされ、能力があるから……神の依頼だからと……無茶をした。

その結果がこれだ。

ルヴィスを護ると言ったのに……そのルヴィスに護られて……。

なによりも自分自身への怒りで頭がどうにかなりそうだ。


もういい。俺は、俺が護りたいやつ以外には容赦しない。


ルヴィス……少しだけ待っていてくれ。あの外道達は必ず……殺してやる!






『告。世界への憎悪を確認。暗黒神乃抱擁(アンリ・マユ・ブレス)悪神乃降臨(アンラ・マンユ・ディセント)へと変質しました。我が主、即刻、この魔法の使用を禁ずるよう強く進言致します。』





悪神乃降臨(アンラ・マンユ・ディセント)

原初の悪神を現界させ、最悪の厄災と死をもたらさせる。


……奴等には似合いの死を与えられる魔法じゃないか。

使用禁止?知ったことか!ルヴィスに与えた痛みを何倍にもして奴等全員に返してやる。




「……悪神乃降臨(アンラ・マンユ・ディセント)。」




俺の呟きに呼応するように玉座に昏く、重く、冷たい空気が漂い始める。

やがて俺の身体から吹き出た漆黒の霧は、玉座の間の全てを覆い尽くした。


「……なんじゃ!?これは!!ヴァイン!なにをしておる!はよう余を安全な場所へ運ばぬか!」


漆黒の霧に包まれた王は、大きな声で狂ったように大声で叫ぶ。しかし、その命令に従える者は現れず、代わりに返ってきたのは……。




「……ぐ……あ、あ、あ、あ、あ……なん、だ?これは……俺の……身体がぁ……!き、貴、様ぁ、」

「い、イヤぁ~……し、死にたく、な……」

「た、たす、け……」

「ゆ、ゆる……し、て……」

「い、痛い~!誰か、誰か助けてくれ!?」

「や、やめて!お願いだから殺さないで!?」





阿鼻叫喚。その一言に尽きた。

漆黒の霧に包まれた兵士たちは、次々と醜悪な怪物へと姿を変え、呻き声を上げながらその魂を貪られていく。

抵抗力が強い兵士や俺の意思で外れている数名以外には成す術もなく、呻き声や叫び声が全く聞こえなくなると、玉座の間を覆っていた霧が天井へと集まり、1つの球体になった。

視界が晴れたその時点で、その場に立っていた者は、俺を除けば僅か2人のみとなっていた。




「な、なんじゃ……?我が兵達は何処へ消えたと言うのじゃ……?ヴ、ヴァイン!何故貴様は直ぐに余を助けに動かんのじゃ!?」




王は唯一見つけた家臣、ヴァインへと怒鳴り付けた。

ヴァインはその声に反応し、ゆっくりとその身を翻す。


「ひ、ひぃ!?ば、化け物!?」


王が見たヴァインの顔は、半分以上が腐り落ち、腐肉に蛆が沸き、足や腕の一部からは怪物の鱗まで生えている、正真正銘化け物のものだった。

片方の濁った目には既に光は無く、残った目は恐怖と絶望をうつし、更にその表情には無傷の王を見据えて憎しみすら宿していた。


「お、おのれ!何故この俺がこのような目に遭わなければならんのだ!俺は……し、死にたく、無い!貴様の事など知ったことか!!」


ヴァインは王と俺に対して呪うかのように言葉を吐き捨てると、再度その身を翻し、玉座の間の出口へと歩き始める。異形と混ざり合った脚はバランスを欠き、なかなか歩が進まないがそれでも少しずつ出口へと進んでいった。


「ヴ、ヴァイン!貴様、余を置いて逃げれば死罪ぞ!余を、余を護らぬか!!」


王の声が玉座に響き、更にはその身体を玉座から滑り落としてプルプルと這うようにヴァインを追いかけるも、腰が抜け、何度も転んで先へと進めていなかった。

そんな王へと返ってくる言葉はヴァインからの罵声のみ。

ヴァインは罵声を吐きながら、それでもゆっくりとした歩みを止めることなく、玉座の間の出口までたどり着いた。

そして開き戸に手を置き、その扉が開かれようとしたが……。



「……貴様を逃がすわけがないだろ。悪神(アンラ・マンユ)、奴を貪り尽くせ。」


俺の声に呼応し、球体になった霧が闇の龍へと姿を変えてヴァインの脚に噛み付いた。その拍子にわずかに開かれ、外の光を室内へと入れていた玉座の間の開き戸が再度閉まる。

ヴァインは生還した希望をその目に宿した次の瞬間、閉じた扉に再度の絶望を刻み込んだ。

闇の龍の顎門が生々しい音でヴァインの脚を噛み砕き、ヴァインの絶叫が玉座の間に響き渡る。

そしてその顎門は数十秒もの時間を掛けてヴァインの命を貪り尽くす。




「ヒ、ヒィ!?ヴァ、ヴァイン!?」




「さぁ……次は貴様の番だ。この世に産まれた事を後悔させてやる。」




俺は闇の龍を従え、玉座から転げ落ち、無様に地を這いながら逃げようと壁際へと寄っていく王をゆっくりと追い詰めていく。

……逃がすわけがないだろう。

貴様はすべての元凶だ。ヴァインよりも惨たらしく、苦痛と絶望に満ちた死を与えてやる。


俺の憎悪に呼応するかのように龍はその姿をどんどんと禍々しく変え、王の両手足へと延びた闇の糸が拘束し、縛り上げる。


「や、止めぬか!余は、余はこのイーストフォレストの王じゃぞ!?余に危害を加えるなぞ神が赦しはせんのじゃぞ!?」

「……神?神か……。どうなんだ?アンラ・マンユ。」


俺の問いに対する答えは、玉座の間に響き渡る王の大絶叫が答え代わりとなった。

闇の糸が王の手足の先を覆い尽くすと同時に、王は大絶叫を響きわたらせたのだ。

腐食。

少しずつ、痛覚を残しつつも出血は無く、しかも毒素すらも身体を巡らない。その権能は生きながらに地獄の苦しみを与えてくれる。


「神は貴様の苦痛がお望みのようだぞ?」

「ひ、ひぃぃぃ!ゆ、赦してくれい!頼むぅ!そ、そうじゃ、わしを助けてくれるのならばこの国の王座を明け渡す!じゃから、じゃから命だけは助けてくれい!」

「……そんなものに興味は無い。ルヴィスを殺した貴様は絶対に許さない。この世の苦しみをその身の全てで受けるがいい。」


少しずつ、本当に少しずつその手足を腐らせ、更には狂わないようにその精神にすらもアンラ・マンユは干渉していく。狂うことも赦されず、地獄の苦痛に悲鳴を上げ続ける。

数分の時間を掛け、王の両手足が腐り落ち、残るは胴体だけとなった。






「……これは……何故、俺は生きているのだ?確か、陛下に処刑されて……。!?へ、陛下!?」


王の絶叫が弱々しくなってきた頃、困惑した声が玉座の間へと響いた。


「……目が覚めたのか。兵長さん。あんたもやるか?こいつが憎いだろ?」



俺は、王以外の声が聞こえ後ろを振り向くと癒光(リジェネレーション)を描けていたハンク兵長が目を覚ましたようだったので、声を掛けた。

あれだけ職務に対して従順に働き、国へと忠誠を誓っていたというのに、このクズ王はそんな彼を無惨にも処刑しようとしたのだ。

その恨みはかなりのものだろう。


「なっ!?お前は……戦闘奴隷のユーリ!?貴様、陛下に何をしているんだ!?今すぐに止めないか!!」


ハンクは俺の前まで歩いて近づき、俺の胸倉を掴んで止めるように言ってくる。

……こいつは一体何を言っているんだ??

わからない。こんなクズに未だに忠誠でも誓っているのか??


『なんじゃ、其奴も妾が食べて良いのじゃろう?ユーリよ、さぁ、奴を食べさせておくれ?』


……そうだな。アンラ・マンユの言う通りだ。こんなクズに忠誠を誓うような奴はアンラ・マンユの餌になれば……。

……いや、何を考えているんだ?俺は……。兵長は何もしていない……それどころか俺やルヴィスにもきちんと接してくれた人じゃないか……。森では危ないところも助けてくれて……だから……生かして……


『ユーリ……妾はお腹が空いたのじゃ。はよう食べさせておくれ……』


ダ……メ……だ。勝手に……

あぁ……でもこのクズに報いを与える邪魔をしているんだ……。ルヴィスの仇を……討たないといけないんだから……邪魔するなら……殺し……?


「ユーリさん!止めて!これ以上“それ”を解き放たないで!」


あれ……?この声……は……誰……?


『さぁユーリや。王もあの兵士も、女も全て妾に食べさせるのじゃ……。さぁ……妾を解き放つのじゃ……。』


あぁ……そうだ……アンラ・マンユを世に解き放たなければ……。

この世界は……腐っているのだから……


「アンラ・マンユ、お前を……」


「ユーリさん!正気に戻って!」


闇に包まれ、寒かった。声に従わなければ凍えそうだった。なのに……急に柔らかくて、暖かい温もりに包まれたんだ。

暗い靄が掛かっていた視界が少しずつ晴れていく。

……ルヴィス……?


「ルヴィス……?どうして……?死んだんじゃ……?」


はっきりしてきた意識が最初に捉えたのは泣きながら俺に抱きついている、さっき死んでしまったと思っていた少女、ルヴィスの姿だった。

『アンラ・マンユ……。何故君が……そこにいる。僕は君がそこに居ることを許していないよ。』

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