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第9話 解放者

いつも読んで下さりありがとうございます。

更新間に合いました。次の更新ですが、木曜日、金曜日と仕事が忙しいので土曜日には更新するようにがんばります。


よろしくお願いいたします。

予想通り……というかスキル 神の加護が教えてくれた通りでは有るが、神樹の葉や枝を持つだけで、この森に生息する生き物は敵対行動をとらない事がしっかりと確認出来た。

そのお陰で帰り道には戦闘も全くする必要も無く、順調に帰路を辿って夕方には野営地へと帰りつく事が出来た。

道中、神樹へ向かう途中で狩った敵の牙や甲殻の一部、余り数はなかったが小さな結晶を片っ端から空間収納へと仕舞い込み、野営地に入る前に見張りから見えない位置で1つ1つの間隔を開けて置いておいた。

初日や2日目も同じように殆んどの素材を集め、 使えそうな物や明らかに高位な怪物のドロップ品以外は同じように置いておき、領兵達に回収してもらっていたから今回も回収してくれるだろう。


ちなみに素材を落とす……所謂ドロップ品が出現する確率は思ったよりも低く、大体5匹に1匹程度、更には質が良さそうな部位は自分で確保したので、全てのドロップ品の3分の2位が領兵達に回収して貰った数だ。

大体300位は狩ったので40に届くかどうか位を回収させた事になるかな。


今回で予定数の狩りが終わったと告げると領兵長は随分と早いと驚いていた。

夜の移動は危険なので明日の朝一にイーストフォレストの町に帰還するらしい。やはり今回も兵長は俺には休息を言い渡して部下達にドロップ品の回収を命じてくれた。

予想通りではあるが、俺としてもかなり助かる。MP枯渇こそ起きていないが、皇蟲との戦いはかなりギリギリだった事もあり、正直な所今すぐ寝たい位だ。

ルヴィスの援護がなかったら負けていてもおかしくないし、皇蟲を倒してレベルが一気に上がった今でも、サシで戦ったら勝てるかどうかわからない。


「無事で良かったです。神樹に近づいた途端に私のスキルが強制解除されて、パーティーメンバーからも名前が消えていたので本当に心配しました。」


檻に戻るなりルヴィスが直ぐに話しかけてきたが、パーティーメンバーから消えていたというのは知らなかった。

言われてステータスウインドウを開くと確かにパーティーが解除されている。

……自称神様の仕業だろうな。……きっと。


「すまない。俺も今気付いたよ。多分神樹の影響だと思う。もう1度申請をするから受けて貰えないか?」


俺はそう言い、ルヴィスへ再度パーティー申請を送る。

ルヴィスは快諾してくれ、ステータスウインドウにルヴィスの名前が表示された。

……考えてみれば不思議な物だよな。ステータスウインドウをお互いに開いている。かつ、半径5メートル以内と縛りは有るが、パーティーを組めば、距離に関係なく経験値が自動で振り込まれるようになるって言うのも、まるでゲームみたいだ。

まぁレベルなんかもそうだけどな。

大方あの神様が作ったシステムなんだろうし、現実世界よりも分かりやすくて良いけど……。

ゲーム感覚で無理したりして死ぬような事をしないように気を付けて行動するとしよう。


「そういえば……結局目的の物は手に入ったんですか?何を探しているのかも教えてくれませんでしたけど……。」


「ん?あぁ……手にいれたし問題も解決しそうだ。追加でちょっとした依頼を受ける事になったけどどちらにせよやることは変わらないからな。……絶対にルヴィスの事は護るから安心してくれ。」


そう言い、ルヴィスの方を見ると真っ直ぐに此方の眼を見ているルヴィスと眼が合った。

信用は……してくれていると思う。

燃えるように紅い瞳は揺らいだりもしていないし、絶望に陰っていたりもしないようだ。


ふと、ルヴィスと見つめ合っていた俺だが、全身に目が行き、咄嗟に目を逸らす。

この3日、どんどんと成長していることは知っていたが、洋服は初日に着ていた子供用の丈のワンピースと肌着から変わっていない。

つまり……正直、今の18才~20才に近い体型ではパツパツになっていて目のやり場に困ってしまう……。

昨日まではギリギリミニスカートみたいな感じだったけど流石にこれはもうアウトだろう……。


「なぁ!兵長さん!この娘に替えの服は無いのか!?」


大声で領兵長を呼ぶと案外そばに居たようで直ぐにこっちに顔を見せに来た。

若干ニヤニヤしている。……ぶん殴りてぇな……。


「お、なんだ、坊主。あの娘の格好が気に食わねぇのか?なかなかセクシーだと思うぜ?」

「うるさい。替えは無いのか?あんたら、この娘がレベルアップで成長すると想定していたんだろ?」

「くくくっ。まぁそりゃ用意してるさ。普通はここまで一気に成長しないんだけどな。坊主が予定の半分以下の時間で狩りを終わらせるからタイミングを見失っちまったんだ。……ちょっと待ってろ。」


兵長はそう言うと奥の馬車から動きやすそうなズボンとサラシ、それに羽織を持って出てきた。

その服をルヴィスへと渡すと俺は檻から出され、檻に大きな布が掛けられた。

パッと見ではあるが、巫女服と新撰組の服装を混ぜたような感じだったな。



「ありゃ鉱人族の伝統的な衣装だそうだ。陛下があの娘用にと特注で用意させたくれてな。なかなかの逸品のようだぞ?」


あのクズがねぇ……。大方、自分自身の為なんだろうが少し意外だ。

奴隷などぼろ布で充分だ!とか言いそうなイメージがあったし……。

そういや俺用に武器もあったけどあれもあのクズの用意なんだろうか?

……まぁそうだとしてもだからどうしたって話だけど……。気になるし、聞いてみるか。


「なぁ。俺に渡していたあの剣もオウサマが用意していたのか?」

「装備に関しては全種類最低1本、防具も色々なものを一式ずつは用意をするように言われているな。そもそも陛下の戦闘奴隷集めは国力の増強が第一目的だからな。当然育てるのに投資はするさ。」


……なるほど。まぁそりゃそうか。装備も無しで戦わせるとかただの処刑だし、処刑するのにわざわざ奴隷として買い取るとか意味わからないもんな。

とはいえ、せめてもう少し、安全面に気を配る位は出来ないもんだろうか。国力強化が目的とか言うくらいならもう少しやりようもあると思うけどなぁ……。


「あ、あの……着替え、終わりました……。」


そんなことを考えている間に、ルヴィスの着替えも済んだらしい。布で覆われた檻の中からルヴィスが兵長に声を掛けていた。

兵長は布を檻から外すと、中から先程渡された服を着たルヴィスが姿を見せる。

濃紺の羽織に金の刺繍で西洋風な竜の絵が2匹向かい合うように両方の胸部へと精彩に彫られている。

下の袴のようなズボンはシンプルな白を基調に余計な装飾は無いようだ。

民族衣装らしいがかなり豪華な服だな。


「あの……どうでしょうか……?」


っと、まじまじと見すぎたかな。


「よく似合っていると思うぞ。でもヒラヒラした感じだけど動き辛くは無いのか?」

「は、はい。結構、絞めるところは絞めている感じなので動きやすいです。」


ルヴィスは頬をうっすらと赤らめてそう言い、後ろを向いてしまった。

お、背中側には炎を纏った鳥の絵が彫られてるんだな。

鉱人族の守り神とかなのかな?


「うむ。今の姿なら陛下もお喜びになるだろう。しっかりとお相手を勤めるがいい。」

「おい、ちょっとまて、あのクズ……オウサマは見た目が育ったとは言え、実年齢幼女に何をさせる気だ!?」


「貴様、陛下に対する呼び名、今は聞き流してやるが次は無いからな!……年齢?そんなものは奴隷には適用されん。まして別種族なら尚更だ。この国の人間ならば子供でも知っている。」

「……あんたもそう考えているってか?ちょっとはまともかと思ったがそうでも無いみたいだな!」

「ふん。吠えるだけなら犬でも出来るわ。……そう思うというのであればこの国を変えてみるのだな。もっとも貴様も同じ奴隷な訳だが。……ただし、陛下に危害を及ぼすならば、容赦はせんから覚悟するが良い。」


そう言い放ち、兵長は俺達の元から去っていった。

いや、そりゃ俺だってルヴィスがなんのための奴隷かはわかっていなかった訳じゃないが、まさかそんなに早いとは思ってなかったんだ。

流石にそれは容認出来ないな。今のうちに手を打ってなんとかしないと。


「あの……私の事は良いので、本当に無理はしないでください。私を見捨てようとしなかった。助けてくれようとしてくれただけで充分ですから……。」

「ルヴィス、少しこっちに寄ってくれないか?本当はギリギリまでは使うつもりは無かったんだが今の話を聞いた以上、今、この場でやっておきたい事があるんだ。」


ルヴィスの懇願に対し、俺が予想外の言葉で返した事で、ルヴィスが少し困惑の表情を見せた。

それでも直ぐにルヴィスは俺のそばまで近いて来てくれたので、兵長達には見えないように直接奴隷輪に触れると、俺は最後にルヴィスへと1つの問いかけを投げ掛けた。


「1つだけ最後に確認をさせてくれ。ルヴィスは奴隷のままで居たいのか?両親や友達には会いたくないか?」

「……私は……既に奴隷に落ちました。だから、そんなことを願うわけには……」

「建前なんてどうでもいい。君が、君自身はどうなのかを聞かせてほしいんだ。」


ルヴィスは俺の言葉に一瞬だけ身体をビクッと震わせると顔を俯かせ、ポツリ……ポツリと声を、心の内を話始めた。


「そんなの……そんなの……会いたいに決まってる。奴隷でなんて……居たいわけが無い。でも……でも!!私は奴隷に堕ちた!じゃあ諦めるしか……受け入れるしかないじゃない!」


ルヴィスの声は最初こそ小さく、呟くような声色だったが、言葉を続けるにつれ、段々と叫ぶような声色に、魂からの叫びへと変わっていた。

取り繕った言葉でもなく、素のままの言葉で。


「確かにその願い、依頼を承った。今、俺が解放してやる。」


後ろを見ると領兵長達が何事かと此方に歩いてくるのが見える。急がないとな。出来る限りは見られたくない。

俺はそっと彼女の首に嵌められた奴隷輪に触れた場所へと解放者のスキルの力を流し込む。

解放者は他者に使用する場合は本人の願いが必須になる。

運命も、因果すらも断ち切る能力はあまりにも強大な力がある為、神様の方でむやみに使用して悪用出来ないように1種のリミッターとして制限されているのだろう。


解放者を使用しても奴隷輪が消えたり即座に外れたりといった見た目だけで解るような変化はない。だが、その効力は断ち切られ、彼女を縛る奴隷輪の効果は完全に消え去っている。



「今、君は奴隷輪から解放された。だけど、ギリギリまではその首輪を外さずに居てくれ。頼む。」


奴隷輪がその効力を失った事はこの力を注がれたルヴィス本人が1番ハッキリとわかるはずだ。

身体に根を張っているような、この縛られている感覚が一切無くなるはずだから。


「え……?これって……?あの……説明、してくれるんだよ……ね?」


困惑するルヴィスに1度静かにするように促し、領兵達をやり過ごすと、俺は彼女に計画の一部始終を全て説明するのだった。

『僕のコーナーを取り戻せて良かったよ♪解放者、上手く使いこなしてね~♪そのうち解放者として大成してね♪』

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