壊された日常
あの日、アイツに出会わなければ俺は今まで通り保健室から一歩も外に出ず(少しの問題も抱えつつ)平穏な中学生ライフを送れていたのだろうか……
あの日は寒く、俺は保健室の布団にくるまっていた。宛ら某携帯獣のゲームに出てくるとある獣のように。しかし、これでも寒い。余りの寒さに養護教諭の千颯先生は支給されているストーブでは足りないと、校長にエアコンの使用許可を取りに行っている。先生には頑張って許可を取ってきて欲しいところだ
先生が帰って来るのを待っていたら
コンコン、ガラガラ
というノック音と保健室のドアを開ける音が聞こえてきた。俺は
「ちは、じゃない、織原先生ならしばらく帰ってこないと思うよ。校長先生のところにエアコンの使用許可を取りに行ってるから」
と、寒いなぁと思いつつ布団から顔を出して、入ってきた男子生徒に話しかけた。するとその生徒は驚いた時の表情をして、こう言った
「うお!人いる気配なかったからビックリした〜。というか同学年だよね。初めて会った気がするんだけど。名前教えて貰ってもいい?あ、俺は五十谷遊ね。後、ベッドって空いてる?」
……すごい肺活量だな。ここまでをノンブレスで言い切りやがった。しかしそんなに気配薄かったか?普通にいたのだが
「確かに同学年だがあったことないのも当然だ。今年度になってから一回も教室に行ってないんだから。この先も教室に行くつもりは無いし、関わることも無いだろう。だから名前は教えない。ベッドは空いてるがどうした?見た限り健康そうだが」
「えー、いいじゃん。あー、いや俺じゃなくてクラスメイトがさ、倒れちゃって。もうすぐ来ると思うけど……」
「しつれーしマース。遊、こいつどうすればいい」
「そいつに聞いて」
「こっちのベッドに寝かせといてくれ。もうすぐチャイムが鳴る。早く教室に戻ることをおすすめする」
「げ、あと一分もないじゃん。急ぐぞ!」
「あ、おいちょっと待てよ!」
彼らは走って出ていった。すやすやと寝ている女子生徒を置いていって
間もなく、学校特有のキーンコーンカーンコーンというチャイム音がなった。走っていったが彼らは授業に遅れなかっただろうか。まぁ、遅れていようが間に合っていようが俺には関係ない話なのだが。俺が今、一番気にしなきゃいけない事は隣のベッドで寝ている女子生徒の事だ。苦しそうにしていないところを見る限り、彼女は命にかかわる重病と言うやつでは無いだろう。なら、なぜ倒れたのか。まぁ、大方踏み込まれたくない過去なりなんなりに踏み込まれたのだろう。下手に聞いて面倒なことになってもどうしようもない。こればかりは放置の一択だろう。俺自身話したくない事聞かれたくない事があるしな。そう考えつつ布団にくるまっているとその女子生徒は目を覚ました
「んっ。ここは、保健室?」
「あ、起きた。保健室で合ってるぞ。ち、じゃねぇ、織原先生がちょっと出払っていてな。俺が応対する。まず来た人の名前とか書かなきゃ行けないから教えて」
「ちゅーとーぶにねんびーぐみ ほしのそらだよ〜」
「何、その舌っ足らずな言い方。ほんとに俺と同学年?七つくらい下なんじゃない?後、漢字教えろ」
「失礼な。天はちゃんと中学二年生です〜。星に野原の野に天空の天だよ〜。あ、そういえばなんで天が保健室に居るか知ってる?」
「嘘つけ。連れてきたやつの話だと倒れたらしいぞ。なんでかは知らんし、聞こうとも思わないがな」
「嘘ついてないもん。倒れた、かぁ……天もあまり話したくないしそうしてくれるとありがたいな〜。あ!天、黒マスクくんの名前知りたい!」
黒マスク君って……まぁ、確かに黒いマスクつけてるけどさぁ
「ハイハイ、嘘ついてないんでちゅねー。名前は教えない。今後関わることは無いだろうし」
「乳幼児扱いしないで〜。えー、おしえてよ〜」
「嫌」
「むぅー。天、教えてくれる迄教室に戻らないからね」
「いや、戻って。体調悪くないでしょ」
「もーどーらーなーいー」
「戻って」
「やだ」
「戻れ」
「嫌!」
と、まぁ途中から始まった言い合いをしていたら、保健室のドアが開き千颯先生が帰ってきた
「エアコンの使用許可、取ってきたぞー」
「ありがとうございます!千颯先生」
「おう。で、その子は?なんで、喧嘩してんの」
「倒れたらしく、保健室に来たことはいいんですけど、目が覚めて元気そうだったので教室に戻るべきだと思うんです。でも、戻らないと言われて」
「それは黒マスクくんが名前を教えてくれなかったからでしょ。名前を教えてくれたら天は戻るよ?」
「黒マスクくんが名前を教えれば済む話やん。減るもんでもないだろ。教えてやれば?」
「先生まで!!分かりましたよ。言えばいいんでしょ、言えば!」
「やったぁ!」
「俺の名前は黒城翠。黒い城に翡翠の翠だ。二度と関わらないでくれ」
「すいくん……すーくんだね!よろしく!」
「いや、二度と関わらないでって言ったの聞こえてる?」
「聞こえてたよ?けど無視したの〜。天は関わりたいしー」
は?聞こえてたのに無視したのかよ。そう言おうとしたその時
キーンコーンカーンコーン
授業終了のチャイムが鳴った
「あ、授業終わったみたいだね。星野さん、教室に戻った方がええんやない?」
「はーい。すーくんまた明日ね!失礼しました〜」
そう言ってアイツは保健室から出ていった
まぁ、この翌日からアイツは毎日昼休みと放課後に来るようになり、昼休みには保健室から無理やり連れ出されるようになったのだった
そして時は春となり、今にもなる。まぁ、季節が冬から春になろうが学年は変わらない。所謂、サザエさん方式の世界なのだ。あぁ、今日も授業終了のチャイムが鳴り、昼休みになる。あと一分もすればアイツがやって来るだろう。今日はどこに連れてかれるのだろうか
ドタバタ、ガラッ
「すーくん!今日天気いいし、中庭で食べよ!」
「えー、外かよ。めんどくせぇな」
「こんな天気良くてあったかい日今の時期だけなんだよ?行こ?」
「ハイハイ、分かりましたよー」
「よし、中庭まで競走ね!失礼しました!」
「あ、おい、ちょっと待て!」
そうして、俺は保健室の引きこもりではなくなったのだった。こんな日々が楽しいなんて、思ってない、ハズ
中庭への道中
「さっきの時間、すーくんは何してたの?」
「アンタに初めて会った時のこと思い出してた」
「ふーん。そーいえばすーくんって天のことちゃんと名前で呼んでない気がする」
「気の所為だ」
「気の所為、かなぁ?」
「おう」
「そっか」
(一回も名前で呼んでないのバレなくてよかった!アイツがアホでホントに良かった!!)
さて、後書きという名の語り(時々懺悔)タイムの始まりですね!
今回は、締切まで三日ほど余裕を持つことが出来たので成長したと思います。初回、二回目共に締切ギリギリ、二回目に至っては誤字やらなんやらでミスを連発し、三回目はまだ余裕があったのかな。そして、四回目は粘りに粘って提出が日付が変わった頃で五回目は別なことで手一杯で間に合わないと投げ出し、六回目の今回はちゃんと余裕を持ってやりました。今後も余裕を持って提出出来るようにしたいです!
閑話休題
この話は『目指せ、ほのぼの』というのが目標でした。ほのぼのになってますかね。むしろギャグに近しい気もしてきました。そして、何よりも見え隠れしているシリアス感(天の倒れた原因、翠の聞かれたくない事等)。いなくなって欲しかった。しかし、お前がいないと私は何も書けないらしい(今回ので証明されてしまった)。なので、今後もよろしくお願いします
天の倒れた原因に関しては何も書いてないんですが翠の聞かれたくない事についてはなろうとは全く別なサイトにあげている設定集に乗っているので気になる方(多分いない)はお探し下さい
最後になりましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました。少しでも楽しんでいただけたら幸いです