超ショートショート「クラゲのランプと魚の尾ヒレ」No63
私はクラゲのランプを作った。
クラゲを模したランプなのだが、これがなかなか上手くできて、風に揺れる触手の一つ一つや、半透明の体などが、まるで生きているように見えるほどだ。
なので、ちょっと作りすぎてしまったのも仕方がない。…と思う。
私はこういう時はだいたい、雑貨屋のムラサキの店に行くのだ。
ムラサキの店は昔から変なモノばかり売っているのだから、変なモノが少し増えたところで問題は無いだろう。
洞窟みたいに薄暗いムラサキの店に入ると、奥から彼女が出てきた。
彼女は魔女のようなローブを着て、魔女のような帽子を被り、魔女のような話し方を
る、至って普通の女性だ。
「いいよう」
彼女は要件を聞く前から、私の持っていた3個のクラゲランプの買取を決めてくれた。
そして私は店の中をじっくりと眺める。
「これに決めた」
たっぷり10分かけた後、私は作り物の魚の尾ヒレを手に取って、宣言する。
買い取ったものと同価値のものを交換する。それが私とムラサキの取り決めだった。
「そんなんでいいのかい?それはただの壊れちまった船の梶だよ」
「あら。私はこの店で一番高価なものを選んだつもりだけど?」
それを聞いたムラサキはカッカと笑ってこういった。
「あんたが来ると、在庫が整理出来ていいねぇ。」
私は木でできた魚の尾ヒレを持って街を歩く。1人だけ変わった物を持った私は、まるで宙に泳いでるみたいな気分だった。
お恥ずかしながら、本を書く仕事を目指しています。先はまだまだまだ遠いですが、少しずつ進んでいきたいとと思います。
お気軽なアドバイス、コメント待ってます。