僕の幸せ
人間は忙しない。今日もまた僕が足にスリスリしてるのに、ごめんごめんと謝って家を飛び出していった。僕が抱っこをお願いしてるのになんていう対応だろう。いつもいつも円盤を見上げては急いで飛び出していく。ろくにご飯も食べずに。
今日もまたひどくあわてて飛び出していった。何がそんなに忙しいのか、猫の僕にはちっとも分からない。
目の前を蝶が飛んでる。正直飛んでいても何も感じない。太陽が頭の上を通ってやがて沈んでいく。眠って起きてご飯を食べてまた眠る。そうやって僕は1日を終える。何にもすることなくただ1日が終わっていく。でもたった1つ、僕には楽しみな事がある。
コツンコツンと音がして、僕は丸くなってうずめていた顔をはっと上げた。そうして僕は玄関に向けて走り出した。
ガチャっと音がして扉が開く。そうして中に入ってきた彼女は僕を見てにっこりと笑うのだ。
「ただいま」
この瞬間から、退屈な時間はおしまいだ。だから僕は君が帰ってくるこの瞬間が一番好きなんだ。
僕は彼女の足元にすり寄った。
僕のこの幸せが君に伝わればいいな。