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私の愛した召喚獣  作者: 樹兎
第三章 領地改革
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アトリアの母1

【アトリアの母1】


 「はい、私ですが、どちら様でしょうか?」

 そう、聞いてきた母親はかなり具合が悪いのか、頬は落ちてしまってかなり痩せているようだ、着崩れた服から覗いている鎖骨が痛々しい・・・

 

 「あっ、紹介が遅れました。私、篠崎久志と言います、実はうちの娘がお宅の結花さんとネットの友達でして、最後に話したのがなるなる前日だったのでその事をお伝えしようと思って参りました。」

 「娘はまだ、10歳でして、概要は私の方からお話ししようとおもって・・・」

 と話していたところと・・・

 

 「ゆっ、ゆ、ゆか、ゆかちゃんね!」

 アトリアを見ていた母親は突然、変な事を言い出した。

 (いや、実は変な事ではなく辺りなんだが・・・そういう訳にも行かない)

 取り敢えず、俺は防音の結界を母親のベッドの周りに張った。

 

 「木梨さん、このは私のむすめですよ、大丈夫ですか?」

 母親は聞く耳を持っていないようだ・・・・

 

 「あ、あなたはゆかちゃんでしょ。。ねぇ、、ゆかちゃん答えて・・・」

 「・・・・・・」

 母親の必死の問いかけにアトリアは何も答えないが、顔は真っ赤にして涙をボロボロと流し続けている・・

 (おい、しっかりしろよ、それじゃ自分が結花って行ってるようなもんだと思いながらもアトリアの気持ちを考えるとせめる訳にも行かない。10年間も心配し続けていた母親が目の前にいるのだ・・・それも病床についている、様態も良くないとなればよく頑張ってる方かも知れない。)

 

 「お、お母さん落ち着いて下さい。」

 「結花ちゃんは亡くなりました、ここにいるのはアトリアです、それは間違い有りません、でも、結花ちゃんの心を持っています。」

 

 それまでアトリアを見ながら狼狽しうろたえていた母親の動きが止まった。

 

 「へっ、どういう事なんでしょう?」

 

 「アトリア、こうなったら仕方がない事実を話して、信じる信じないはお母さんに任せよう」

 「うん」

 アトリアは力なく小さく頷いた・・・

 (私は自分自身が否定される事が怖い。元々荒唐無稽な話なのに、信じる方がおかしい。だからこそ遠くから眺めるだけにしようと心に決めてきたのに、色々と状況が変わってそうも行かなくなった。あぁ、娘を騙る詐欺師とののしられたら立ちなおれないかも知れないわ)

 

 「お母さん、結花ちゃんは事故で亡くなった後、別の世界で生まれ変わりました、結花ちゃんの記憶をもったまま・・・」

 「俺は事の成り行きを正直に話した・知り合った時から、母親が心配でこちらの世界に様子を見に来るまでの事を」

 突拍子も無い事だ、何かの詐欺だと思われても仕方ない、最終的には催眠魔法で眠らせてから退散する事にしようと思っていたが話は違う方向に転んだ・・・

 

 結花の母親の恵さんは全てを受け入れた。

 結花と恵さんは昔の事などを一生懸命に話していた・・・

 俺は暫くの間、席を離れる事にした・・・

 「アトリア、俺はちょっと散歩してからジュースでも買ってくるよ、15分ほどで戻る」

 

 「うん、待ってるね。」

 アトリアは涙の後を残した顔で元気よく笑って返した。

 

 廊下に出ると先程、婦長に耳打ちしていた看護師と出会わせた。

 「お帰りですか?、いえ、今娘が話していますのでわたしはジュースでも買ってきます、元々付き添いみたいな物ですから・・」

 

 俺はポケットから丸めた100万の札束を取り出すと看護師は一瞬ぎょっとした顔をしたが直ぐに平静に戻った。

 俺は素知らぬふりをしながら看護師のポケットに丸めた札束を押し込んだ・・・

 「こ、困ります。」

 

 ポケットから取り出そうとする手を押さえて

 「大きな声を出しますよ。」

 「あなたが金銭を要求したと・・・これでも足りないと・・・」

 

 「な、なっ、なんで私が・・・」

 「事の真相はどうであれ、あなたのポケットには分かりますね。騒ぎになれば困るのはどちらかな?」

 実際問題、看護士には何の落ち度もないのだが、ポケットに札束が入っている事実で看護師の判断力が低下していた。

 

 「わ、私に何をしろって言うんですか?」

 「木梨さんの病名と状況を教えて下さい。」

 看護師の顔にはほっとした顔が浮かぶのを見逃さなかった。

 (何を要求されると思ったんだろうか?、まさか体でも要求されると思ったんだろか?)

 

 「木梨さんは肝臓がんのステージ4、末期です、余命はもう何時亡くなってもおかしくはありません、昨日も危篤状態になったのを何とか持ち直しましたが、残された時間はもう、あまりないでしょう。

 ご親族もいらっしゃらないって事でしたので本人にも告知されています。」

 「そうですか、有り難う御座いました。」

 

 「あの、私が喋ったとは誰にも言わないで下さいね。」

 「もちろんです、言う必要もありませんしね。」

 看護師はポケットに入っている札束を見えないように取り出しズボンのポケットに押し込むと何もなかったようにエレベーターの方へと消えていった。

 

 (はっ、びっくりしたぁ・・・100万ぐらいあるかしら・・・執刀医でもないんだから普通は5万とか10万が普通よね、どうせ本人には告知されてるんだし最悪、本人から聞いたとしらを切れば良いわ。今日ラッキーだったわ、欲しかったあれ、思い切って買っちゃおうかなぁ・・・)

 そんな事を考えならが看護師の頭の中はアフターの事で一杯だった。

 

 その頃、品川の自宅では事件が起こっているとも知らずに俺は売店へと向かっていた。

 

 □■□ 自宅 □■□

 

 リネーネは前回、買っておいたスナック菓子を思い出し、探し出してソファーに寝転んで食べながらTVを見ていた。

 「ピンポーン」

 リネーネは無視していた。

 ルーカスたちなら勝手に入ってくるだろうし出迎えに出る必要はないだろうと考えていた。

 

 「ピンポーン、ピンポーン」

 さらに無視を続けていると・・・

 

 「せんぱーい、いるのは分かってるんですからね、出てきて下さーい」

 若い女の声がインターフォンからリビングに響く・・・・

 

 仕方なく立ち上がったリネーネはインターフォンに向かうと驚いた。

 あれ、フロントのロックはどうしたのかしら?

 なんと、若い女性は部屋の前まで来ていたのだ・・・

 

 リネーネは先輩は留守ですよって言って追い返そうと思ったが、また出直されても正直困る、ルーカスはまた、向こうの世界に戻るはずだ、そう何度も押しかけられても困る、ここできっぱりと追い返そう。

 リネーネはドアをあけた・・・

 

 「あっ、あ、あなたは誰ですか?、久志さんはいらっしゃいますか?」

 「私はメイドです、ご主人様はいらっしゃいません、当分ご帰宅の予定もありません、お帰り下さい。」

 そういって、ドアを締めようとした。

 締められる前に女は力ずくでドアを開けて入ってきた。

 「ご、ご主人様?、はぁ、一体あなたはだれですか?」

 (へ、変だわ、ご主人様だなんて、絶対変だわこの女・・年増のくせに生意気な・・こんな女が家政婦のはずはないわ)

 

 「だから、先程も申しましたように私はこの家をあずかるメイドで主は不在です、どちら様か存じませんが、名も名乗らぬ女性の訪問があったと主には伝えますゆえ、お帰り下さい。」

 リネーネは丁寧ながらもとげのある受け答えで追い返そうとしたが、おんなはひるまない。

 

 「し、失礼ね、私は中野絵留美、久志さんの前の会社の同僚よ。」

 「はぁ、そうで御座いますか、前の会社の御同僚様と。では、今は全く関係も縁も無い他人様が何の御用でしょうか?」

 リネーネは全くもって不機嫌になってきていた、別に留美自体に腹を立てた訳ではない、こんな小娘ごときとしか思っていなかった。

 ただ、見ていたアニメを中断された事、リラックスしていた時間を中断させられた事に対して腹を立てていた。

 (このばか女はさっさと帰ってくれないかしら、もう、終わっちゃうじゃないの・・・)

 

 「あなたに話す筋合いはないわ、久志さんが帰って来るまで待たせて貰うわ。」

 留美はそう言うとリネーネが止めるのも聞かずさっさと部屋に上がった。

 

 部屋を見た、留美は顔に不気味な笑みを浮かべる。

 そう、部屋の中には菓子の袋、リネーネの脱ぎ捨てた服が散乱していた・・・

 「へぇ・・部屋を散らかしてTVを見ながらお菓子を食べるのが、あなたの言うメイドなの?」

 「うぐっ・・・!!」

リネーネは強烈なダメージを受けたのだった。

 

 ここから女の戦いの火ぶたは切って落とされた。...

 

 □■□ アトリアの母親が入院中の病院 □■□

 

 病院の売店で缶コーヒーを買って飲みながら考えていた・・・

 今後どうするか?、流石に放置って言うのはアトリア的に納得いかないだろう。

 まあ、俺もこのままって訳には流石に堪える、擦れ違った縁もあるしなぁ・・・

 エリクサーは神との約束によりこの世界には出せない、上位回復薬なら問題はないか、それでも完治は難しいだろう。

 俺はナースセンターに向かった。

 

 

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