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隷属の姫と緋色の少年  作者: ここなっと
5/5

謁見での会話

序章はこの章までです。次回から第一章です。

「お父さん!」


フィリスは特に断りもなく、謁見の間の扉を開く。


「入ってくるな!」


するとすぐに顔を真っ赤にした宰相が吠える。フィリスは当然のごとくそれを無視し、父へと詰め寄る。


「さっき、謁見している人と話をしたんだけど」


そう切り出すと、宰相は急激に顔を青くする。どうやら税に関しては一枚噛んでいるらしい。


「ああ、増税の件か。今こやつを問い詰めていたところだ。クロのようだからな」


王は鼻でそんな宰相を笑う。


「すぐに対策を練ろう。そんな阿呆なことをやらかしたやつは全員はね除けてくれようぞ」


どうやらフィリスが何か言う前にすでに動き出していたらしい。その情報の信憑性を確かめる必要もあるだろうが、宰相も絡んでいるとなると事実なのだろう。


「へ、陛下!そんなことをしては国が傾きますぞ!何卒もう一度御考慮を………!」


自分が今の地位の甘い蜜を吸えなくなるからだろう、宰相が頭を下げる。


「いらん」


一言、王は切り捨てる。


「お主も覚悟しておけ」


冷たくそれだけを告げる。宰相はそのままその場で項垂れた。


「それとお父さん、あの人私のこと知ってるみたいだったけど………?」


ふと立ち去る時に言われたことを思い出す。それを指摘された王は苦笑した。


「そやつが漏らしたのだ。あやつの力を知り、国に留めようとするばかりにフィリスと婚約を結ばせようとした」


それを聞いたフィリスを目を丸くする。


「一蹴してやったがな。あやつも今世界中の国を巡っているらしく、その度婚約なり結婚なりを迫られてうんざりしておったわ」


ふう、と王が玉座にもたれ掛かる。


「そ、そんなにすごい人なんだ………」


国を訪れる度に婚約を迫られる。それはこの国に繋ぎ止めたい、関わりを持たせたい、ということに他ならない。ギルドランクCというのはそれだけの実力があるのだろうか。フィリスからしたら少なくともまだ上があると思うのだけれども。


「史上最年少でギルドランクCに昇格、単純な実力だけなら現在でAランクに迫るとまで言われておる。その実力からこれまた最年少の二つ名『空雷』とまで呼ばれていおる。この国より大きい国の誘いも断っておるからな、こちらがどんな条件を提示したところで首を縦に振ることはなかっただろう。権力などにも興味ないみたいだからな」


フィリスの呟きに王は客観的な評価と自身の評価を述べる。


「それもまるで厄介者を押し付けるかのごとく………!」


バキッ、と青筋を浮かべた王が座る椅子から音が聞こえた。それからすごい形相で宰相を睨む。フィリスは何が始まるのかを明確に読み取り、そそくさと謁見の間を出る。


謁見の間を出たらちょうどよくユーリスが目の前にいた。どうやら飛び出していったフィリスを追いかけてきたらしい。苦笑いを浮かべてユーリスが口を開く。


「フィリス、あんまりでしゃばったことをしないでくれ………。今回はなんともなかったが、相手が相手だとややこしいことになる」


「ん」


ユーリスの忠告に素直にフィリスは頷く。


「ユーリス兄さんは件の人と会った?さっき方向間違えてたけど」


「………探しに行こう」


ユーリスはフィリスの言葉に踵を返す。そのまま足早に姿を消す。それを見送ったフィリスはふらふらと歩き出す。


「………冗談じゃなかった」


それからポツリと呟く。干魃が続き、作物が例年以下にしか育っていないことは知っていた。けれど、その上で増税を課すなんてフィリスは信じたくなかった。そんなの、上に立つ人が行うことではない。民を第一に考え、より良い暮らしを提供するのか貴族の在り方ではないのか。私腹を肥やす、それだけの人間が上に立っていいものか。


「………」


王宮の中庭を見る。誰もいない中庭。それを見ながら思い更ける。


このままじゃダメだ。父とユーリスはきっと民を第一に考えてくれる。自分の私腹を肥やすことを第一としない。けれど、他の兄二人はダメだ。周囲の人間に感化され過ぎている。このままでは、この国はダメになる。何とかしなければ。


誰よりも強く、優しかった少女は考える。きっと自分一人の言葉では国は動かせない。それが現状が証明している。父やユーリスがいても結果は同じ。なら、別の一石を投じる必要がある。


その考えに至ったフィリスは早速動き始める。誰よりも強く、誰にも頼れなかった少女は、己の力のみを信じ、誰にも相談することなく、動き始めた。生まれた国を正すために。大好きで、大嫌いな国を変えるために、一人奮闘を始める。


それが正しい道だと信じて。

また年代が飛びます。次からフィリスが17歳になり、本編が始まります。

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