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隷属の姫と緋色の少年  作者: ここなっと
2/5

紋章

今回は説明回。紋章と呼ばれる、魔法っぽいものの説明をします。


そしてまだ登場しない主人公(笑)

「もんしょうとは、ヒトがもつしんぴの力である」


7歳になったフィリスは自分の部屋で本の朗読を行う。誰かが聞いているわけでもない、ただ自分のために読み上げた。


「10人にひとり、もんしょうをもつ人がいる」


それはこの世界の常識。勇者が現れる前、人が強大なる魔族と戦うために得たのであろう力を紋章と呼んだ。


「もんしょうはひとの手のこうにきざまれる」


そこでフィリスは自分の右手を見下ろす。そこには確かにひとつの幾何学的な絵ーー紋章が描かれていた。震える大地に、崩れる箱。その絵が紋章の持つ力を示していた。


「まれに二つのもんしょうをもつひとがいる。それよりおおくなることは、えがくばしょがないのでありえない」


と、少女は自信の左手を見下ろす。そこには右手とは異なる紋章が描かれている。歪んだ時計にが半ばから割れている紋章。それは少女が稀な存在である二つの紋章を持つ者であることを示していた。


「もんしょうの力をつかうには、もんしょうにこめられたいみをりかいするひつようがある。たとえば、火のもんしょうなら火のイメージをうかべるひつよがある」


少女は右手を見る。揺れる大地に崩れる箱。それは揺れを意味している。少女はそれを理解し、地面が揺れる現象ーー地震を思い浮かべた。


するとどうだろうか、フィリスの周辺が小規模ながら揺れ動く。震度も力も強くはないが、確かに揺れていた。その揺れを実際に体験したフィリスはできた、と嬉しそうに笑う。


ちなみに紋章の力ーー紋章術は紋章があれば簡単にできるものではない。それなりに鍛練し、イメージを固めることでようやく使えるようになるのだ。そのイメージの手助けに、最初は詠唱や術名を唱えるのが一般的である。フィリスはその過程をすっ飛ばしてあっさりと紋章術を行使した。それだけでどれだけこの少女が才能に溢れているのかが伺える。もっとも、そのことをフィリスに教えてくれる人はいないのだが。


それから少女は左手を見下ろす。歪んだ、途中で割れている時計。フィリスはこの紋章を眉を潜めて見つめる。その紋章の意味ーーそれをまるで読み解けないのだ。時計は時間を表す。それが歪んでいるということは時間を歪めている、ということだろう。なのに。それが割られる。歪められた時間を割る、それはただもとに戻すだけではないのか、というのが少女の見解だ。そこで思い浮かべるのは他の紋章術の無力化。実際にまた自分の周囲を揺らし、それを時計の紋章で中和する。が、なにも起こらない。自分自身の紋章はには効かないのか、それとも意味が間違っているのか。少女はそれを理解することはできない。


仕方ないのでその紋章は保留にし、再び本に目を落とす。その本は紋章術の基礎が書かれている本であり、一般的な紋章の使い方や意味ならまとめられているものでもある。だから読み進めればこの紋章についての知見を得られる。そう考えて。


「もんしょうは生まれたときからもっている。それが変化することはない。ただし、何かしらのがいてきよういんで失うことはある」


そこでフィリスは首をかしげる。何かしらの外的要因ーーそれがなんなのかが一切かかれていないのだ。ならどうして失うのか、それがまるでわからない。


ちなみに本にその内容が書かれていないのは、そこに問題があるからである。外的要因ーーそれこそ単純に手が切られる、腕を失う、ひどい火傷を負い紋章が消えるーーなど、とても倫理的ではないないようばかりなのだ。そのため基本の書物ではそのことは書かないことが通例になっている。


そのことを理解したわけではないが、少女はとりあえず手を進める。ちなみにこの世界において、紙は比較的貴重なものであり、紙で書かれた本はかなり高価である。そのためフィリスが読んでいる本もかなりくたびれていて決して状態のよいものではなかった。


「つぎはじっさいに知られているもんしょうについてのべる」


と、本の3/4ほど残して紋章図鑑のような状態になった。実際、紋章は個々の使い方によって異なるため一概に共通して言えることは少ないのだ。そのため詳細を述べようとしたら図鑑形式にならざるをえないのだ。しかもその内容にもかなり差が生じる。火、水、風、土など基本四属性と呼ばれる紋章はそれこそ複数ページにわたり、様々なことが書かれている。それだけ使用者が多く、研究が進んでいる証拠だ。それに対し、希少な紋章ーー勇者の紋章等に関してはそれがある、程度しか書かれていない。それこそ、どのような模様が描かれているのかすら書かれていない。その上、本書には描かれていない紋章があります、と最後は締め括られているのだ。もっとも、そんな希少すぎる紋章なんてまず見ることはない。


「しんどうのもんしょう。だいちのゆれやくうきのゆれをあやつれる。数は少なく、きしょうなもんしょうな一つにぶんるいされる」


と、図鑑を適度にめくっていたフィリスは自身の右手に描かれている紋章を見つける。半ページほどで簡潔にかかれている。その文章量に希少さが現れていた。そのことを理解した少女は嬉しくなり、ぴょんぴょんとその場で跳ねる。それから左手の紋章を調べる。ここまで見つかっていないのだ。なら、それ以上に希少であることがわかる。図鑑の順列は単純で、多いものほど先に来ているからだ。


と、少女の手が再び止まる。自分の紋章を見つけたわけではない。ただ単に、振動の紋章より後に書かれている紋章の一つに、複数ページにわたり書かれている紋章が存在したのだ。いぶかしげにその紋章に目を通す。


「くうかんのもんしょう。きわめてきしょうなもんしょうだが、そのゆうようせいは全てのもんしょうを上回る」


そんな書き出しから始まる紋章の説明。そこに書かれている内容は、あらゆる質量、大きさを無視して自由自在に物品を運べ、経年劣化を起こさない紋章だと書かれている。能力としたらそれだけなのだが、その有用性は確かに計り知れない。いくらでも物資を運べるのなら商人からしたら喉から手が出るほどにほしい紋章であるのは間違いないし、戦時中となればこの紋章持ち一人いれば大量の物資を運べるのだ。単体としての能力は低いが、総合的にはとてつもなく強力な紋章である。そのことが延々と書かれている。


ただし、問題もある。この紋章はあくまでも運ぶだけ。それも生きているものは一切運べない。紋章持ち本人の戦闘能力はよほどのことがない限りたかが知れているのだ。そのため奴隷狩りなどに狙われやすく、なんのバックアップもなければ所有者が危険に晒される。


そんな記載に嫌そうな表情をしながらフィリスは先へと進む。やがて、紋章とその名前だけの紹介になる。その中にフィリスの持つ紋章は、存在しない。やがて紋章がわからず、名前だけの紹介となってしまった。その一番最初に来ていた勇者の紋章をちらりと見てからさらりとページを流してしまった。ここら辺の紋章を見たところで何がわかるでもなし。そのため読む必要がないと判断したのだ。そして本が終わる。


フィリスはそっと本を閉じ、その場でじっとする。今読んだ本の内容を吟味しているのだ。が、やがてそれを終えて持っていた本をもとあった場所に戻し、別の本を手に取る。


ここは王宮内部の図書館。幼く、まわりに構ってもらえないフィリスはほとんどの時間をここで過ごしていた。本の虫である。

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