04-37歳。異世界で初めての戦闘。
最後辺りで戦闘描写ありです。
いきなり周りの景色が変わった。
「・・・え?なんで、こんなに武器がたくさん・・・?」
「この中から相棒となる武器を選んで。ただし、一回のみとするわ。」
そんなこと言われたら慎重にならざるを得ない。
結局、刀にした。なんでかと言われても、「何となく」としか言えないが。
「それでいいの?」
「あぁ、特に武器なんて持ったことないからな。」
「ならきついと思うんだけど。一般的な西洋剣のように叩ききるわけでも、レイピアのように刺突するわけでもない、『引いて斬る』事に特化した、扱いづらい代物よ?」
「マジかよ」
「でも残念。もう、あなたは『これでいい』と言ってしまったわ。変更は受け付けないよ。」
「え」
「じゃあ、あなたの大事な大事な奥さんと娘さんを生き返らせるために、頑張って殺してきて。」
「お、おい」
「じゃーねー。」
何も言えないまま、しかも詳しい説明もないまま目の前がホワイトアウトした。
気が付けば洞窟。俺以外に誰もいない。
「どこだ、ここ・・・。」
さて。生き返らせるには殺すしかないわけだが。どうしよう?
いきなり手詰まり。まずは所持品の確認だ。
刀。家にいたときと同じ服。財布(3500円くらい)。時計。
刀以外は家にいたとき身に着けてたものだ。
確認おしまい。
・・・外に出るか。
洞窟もそんなに深くなく、森とそこから続く獣道のようなものが見えてきた。
特に当てもないので道なりに歩き続ける。
「おい、そこのお前!」
「んっ!?」
いきなり低く押し殺した声が俺を呼び止める。すごく驚いた。
「へへっ。こんなところにそんな格好してどうしたんだ?服は許してやる。有り金全部おいてきな。」
「ほい。」
どうせこの世界では日本円など使えないだろう。そんなことで済むならいいだろう。
「は?・・・まて。バカにしてんのか?こんな変な紙っ切れと見たこともない塊で許すと思うか?」
ですよね。たぶん無理だと思いました。
「しかし、あり金はそれがすべてだ。」
「ッ。くそ、てめぇをうっぱらって金にしてやる。おとなしくしやがれ。」
「うっぱらうってどこに?」
「は?んなの奴隷商に決まってんだろ。やつれてっけど荷物持ちくらいにはなるだろ。銀貨30~50ってところか?」
それどこのイエスキリストですか。あんたユダか。
それよりも、この場を切り抜けることを考えよう。
「抵抗すんならこの場で殺してやる。まずはその刀、捨ててもらおうか。」
走って逃げればよいだろうか。しかし、相手の武器はナイフっぽい。もし投げてきたらどうする?
「どうした?さっさとしろよ!その刀を捨てろ!」
・・・逃げたほうがいいか、戦うか。
確かに死ぬのは怖い。だが、これくらい切り抜けられないと茜里と香弥を生き返らせた後、守り切れるか?
正直、また二人を殺されるのを見るくらいなら、死んだほうがましだ。
そう思っていると、なんだか死ぬのが怖いとは思えなくなってきた。
「嫌だ。」
口をついて出た。そして、急に怒りがわいてきた。
俺を売りとばす?ふざけんな。
「ッ。なら仕方ねぇ。ここで死にやがれ!」
男は正面切って襲いかかってきた。刀を振るうも、
「あたらねぇよ!」
すぐによけられる。側面にまわりこまれそうになり、あわてて刀を横に薙ぐ。
「へっ、たいしたことねぇな。俺は優しいからもう一度聞いてやる。おとなしく刀を捨てろ。そうすれば命だけは保証しよう。・・・もっとも、うっぱらった後は知らんがな。」
なんか言ってくるが無視だ、無視。
「きかねぇか・・・。なら、これで終わりだ!」
男がナイフを順手で構え、突進してくるっ!
それに合わせ、近づかせないようもう一度横に薙ぐ。しかし、
「フンッ。見え見えなんだよ!」
一歩後ろに下がり、横なぎをよけると、先ほどとは段違いの速さで踏み込んでくる。
俺は横なぎを繰り出そうとするが、相手のほうが早いっ!
脇腹に刺さる! と、そこで俺は木の根に躓き、しりもちをついた。
「なっ!?」
いきなり体勢を崩し、刺さるはずだったナイフが俺の躓いた木に刺さる。
「喰らえ!」
「くそっ!」
転んだ体勢のまま、刀で突きを繰り出す。反撃に対して武器を失った敵は、いったん下がる。
「くそっ。おめぇ、運がよかったな。ここら辺で許してやる。」
そう言い残して逃げ出そうとする敵。・・・しかし俺の気が収まらない。
「許すと思うか?」
敵は武器を持っていない。刀を取られること、後ろに刺さっているナイフを取られないことに気を付ければ、勝てるだろう。
それに、コイツはたぶん他に犯罪も犯しているだろう。殺せば2人の生き返る糧になる。
「くそっ!」
敵は悪態をつく。・・・仕掛けてきたのはそっちだろう。
俺は刀を正眼に構え、少しずつ敵との距離を詰める。確か刀は引いて斬るんだったよな・・・。
「やぁ!」
逃げ出す敵の背中に、刀を叩きつけ、引き切る!
「うぎゃぁ!こ、この野郎!」
そこへもう一度、下から切り上げる!
「ぐぅぅぅ、わ、悪かった!俺が悪かった、許してくれ!」
「仕掛けてきたのはそっちだ。殺されても文句は言えないだろう?」
「わ、悪かった!たのむ、命だけは!」
「おとなしく刀を捨てなければ、俺はどうなる予定だったんだっけ?」
「そ、それは・・・!」
自分が窮地に立てばすぐさま命乞いか・・・。
しかし、これはチャンスかもしれない。いろいろ聞きたかったことを聞ける。
しかし、聞いてる途中で逃げられたり、反撃されると面倒だ。
そう思い、敵に近づく。
「た、頼む!命だけは許してくれ!」
そういって頭を下げる男のかかとの少し上、腱の部分に刀傷をつける。
「うぎゃぁぁぁぁぁ!いてぇ!いてぇよ!くっそ、くっそ!」
刀を取られないように、手にも切り傷を付ける。
「ぎぃぃぃ!はぁ、はぁっ!悪かった、悪かったよぉ!」
泣き叫んで懇願する男に声をかける。
「てめぇ、名前は?それと、有り金、持ち物をすべてだしな。」