表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

01-途切れた平穏ループ。

テスト中に考えた、「ちょっとこれは異世界deバイトに合わないなぁ」と思ったので一度没になったものを別のシリーズとして始めました。



俺は、任那みまな 慶尚よしなお。37歳、妻子有。

妻である茜里あかりと共に、とある私立の中高一貫校の教員だった。

一人娘の香弥かやも、中学2年生で、同校に通っている。

朝、いつも早くに起きる茜里と共に弁当と朝食を作り、そのころになってやっと香弥が起きてくる。

そして天気予報やニュースをチェックして、毎朝学校へ車で通勤。もちろん、茜里も香弥も一緒だ。


期末テストも終わり、訪れた解放感に身を躍らせて軽く浮かれている教室と、その生徒の出来の悪いテストのマル付けをせねばならず、軽くどんよりとした職員室。もちろん部活の監督もしつつ、THE・青春が繰り返されるのを見届ける日々。人によっては変わり映えのしない、と嫌がる生活かもしれない。

でも、生徒一人一人、学年一つ一つが似通っているようでどこかが違うと、小さな発見のし通しな生活が俺は好きだった。


しかし、そんなぬるま湯のような、気持ちの良くて心地の良い生活はある日を境に一変した。


忘れもしない12月22日。

まだ学生とはいえもう思春期の男女だ、すぐそこまで迫っているクリスマスを待ち遠しく思う者、もう受験も間近だから、と塾の自習室へ向かう者、少し先の大会に向けて部活に励む者。

いろいろな思いや目標、違いはあるけれど心の内ををごちゃまぜにして、結局「さっさと終われ」に帰結する終業式を行っている最中だった。


いきなり体育館に2トントラックが突っ込んできたのは。

悲鳴と怒号が飛び交い、惨憺たる景色がそこに広がっていた。

俺はといえば、茜里と香弥が無事かどうか、気がかりでなかった。

しかしそれをぐっとこらえて、今パニックになっている生徒の誘導を他の先生と協力して始める。

もちろん、救急車と警察を呼ぶのも手分けした。


ある程度誘導の体制ができてから、養護の先生と共にけが人の確認を急ぐ。

しかし、予想よりもひどい結末が待っていた。

トラックが突っ込んできた直線上にいたものは轢き殺されていて、扉のそばに居たものも重症だ。

初めて嗅ぐこととなった血臭にむせ返りそうになりつつも、まずはトラックだ。


突っ込んできてから何もアクションが見られないが、ここからさらに被害が拡大するのは防ぎたい。

さっさと取り押さえるに越したことはないだろう。付近にいた体育科他ガタイのいい先生と共に件のトラックへと近づく。そして、中を見ると・・・そこには頭から血を流し、死んでいる男がいた。

どうやら扉から突っ込んだ時にコンクリの塊か何かで頭をぶつけたんだろう。


被害拡大の可能性が去ったところに、俺の名前を呼ぶ人がいた。



「任那先生!任那先生ってば!」



否。俺ではなく、妻に対する呼びかけだったようだ。

声のするほうを見ると、床に横たわる妻と、そのそばに座り込む女学生の姿。

バカっ、意識がない人に対してゆさぶりは厳禁だ!保体で習わなかったのか!



「茜里っ!」



居てもたってもいられず、妻のもとへ駆け寄る。そばにいた女学生はおろおろしている。

一応呼吸はあるが、意識がない。・・・肩の付近を叩き、名前を呼ぶ。



「茜里っ!聞こえるか、茜里っ!」



と、妻は顔をしかめ、意識を取り戻した。しかしすぐに苦痛に顔をゆがめたかと思うと、



「香弥がっ!香弥があのあたりに!」



といいつつ、一番人が集まっていた、トラックの止まっている少し後ろを指さす。


無事でいてくれ、とおもいつつそばにいた女生徒に「もし意識を失ったら、養護の先生を呼んでくれ」と言い含め、香弥がいたであろう付近に走り寄る。





・・・はたしてそこには。同じクラスや学年であろう数人の生徒と共に、息をしていない娘がいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ