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序章
眠り姫は踊らない
序章
陽炎のように揺らめいていた物質は、ぶつかり合いながら徐々に成長していく。
静止していたものもその一群に引き寄せられ、斑が発生してくる。すなわち、密なところはますます密に、疎なところはますます疎に。
それは一つの宇宙だった。
今まさに育ちゆく、いびつな入れ物に入れられた、それ。
それは、一人の研究者によって創られた小さな庭だったが、成長するそれにとっては誰がどうやって創ったなどということは関係なく、ともかく、物質の法則に従って、純然と規則正しく、荒々しく粛々と、律動した。
騒がしく揺れ動くそれらの物質は、やがてぴたりと動きを止め――。
大爆発を起こした。