五十九尾 合流
なにやら、見覚えのある金髪がいるけどあれは……魔理沙かしら? あの飛び方、弾幕ごっこを途中で辞めて不完全燃焼って感じね。
「あら、魔理沙。こんなところで何油売っているの?」
「げ、霊夢。もう追いついたのかよ。てことはさっきの鬼に勝ったのか」
「人の顔を見るなりゲッってなかなかいい挨拶ね。どうせそこらへんの妖怪に喧嘩売って無惨にも負けたんでしょ。この霊夢様が仇を取ってあげるわ」
「寝言は寝ていえ」
「冗談はさておき、なんでこんな暑い場所にいるよ。暑さでおかしくなりそうだわ」
「異変の黒幕がこの先に居るって聞いたんだよ。確かな情報だぜ? なんせ黒幕の飼い主から聞いたんだからな」
飼い主? 今回の異変の首謀者は動物なのかしら、にわかには信じ難いわね。
ただ、こいつ(魔理沙)が素直に信じるってことはそこまで悪いやつではないのかしら。
「あっそ。その情報が本当ならこの異変も簡単に方がつきそうね。ところで魔理沙」
「なんだよ急に」
「妖怪の言うことなんてあんまり信じないほうがいいわよ」
『あら? 霊夢、私のことは信じてるくせに、うふふ』
今まで黙り込んでいた胡散臭い妖怪が起きたみたいね。黙り込んでいるな最後まで黙ってればいいものを。
「この声は………八雲紫か。珍しいな、お前が異変解決の手伝いをしてるなんて」
『本当なら手を貸すつもりはなかったのだけども、今回の異変は下手をしたら下と上の戦争になりかねないのよ。それに危険な妖怪が多すぎる』
「確かにな、覚にようわからん妖獣、はたまた鬼もいるときたもんだ」
「よくわからない妖獣……まさか魔理沙、あんたもあの真っ白に襲われたの!?」
まさか、あの真っ白狐。魔理沙の方にまで襲いかかっていたなんて。それにしてもよくあれから逃げ切れたわねこいつ。
「真っ白? 私が会ったのは金色だったぜ? 確か名前がーーラグナとか言ってたな」
「なんだ、狐違いだったのね。それにしてもあんたもあの金色の妖獣に会ってたのね」
「まあな、あいつ面白いことを言ってたぜ。何やらあの風見幽香の知り合いらしい」
風見幽香、あの凶悪凶暴の妖怪と知り合いってもしかしてラグナって奴もかなり危険な妖獣なのかしら。というか、こんな場所に封印されているもの危険に変わりはないわ。あの時祓っておくべきだったかしら。
「ところで霊夢。さっき言ってた白い狐って誰なんだ? 私がお前を越した時はいなかっただろ?」
「あー、そのラグナって奴の妹らしいわよ。詳しくは知らないけど鬼と一緒にいるみたい。どうも紫と因縁があるみたいなのよね。お陰で逃げる羽目になったから」
「ふーん。お前が逃げ出すなんてよっぽどヤバい奴だったんだな」
「ーーふん。別に勝てないから逃げたわけじゃないわよ。次あったら退治してやるわ」
『二人ともあの子には近づかないようにして頂戴。今回は偶々逃げ切れただけよ。次はないわ、それにあの子は技を一度見ると効かなくなるのだから、戦わないで逃げなさい』
興味を持った魔理沙と威勢よく言い放つ霊夢を嗜めるように八雲紫は念を押す。普段の彼女からは聞くことがない逃げなさいの言葉に魔理沙は更に興味深そうに笑みを浮かべ、霊夢は青筋を立てていた。
「益々気になってきたぜ。おっと、スキマ越しに殺気を飛ばすのはよしてくれ、冗談だよ。
ところで霊夢、この異変を先に解決した方が今日の晩飯を作るってのはどうだ?」
「乗ったわ。私が勝ったら海の幸をご馳走しなさいよね」
「どうせ私が勝つんだいいぜ。私が勝ったら今日はすき焼きだ」
『(肉と魚を用意しておかないといけなくなったわね……はぁ)二人共、くれぐれも無茶だけはしないようにしなさいよ。流石の私も死んでしまったら助けられないわ』
「心配しなさんな。私も霊夢もそんな簡単にくたばったりしないさ」
「当たり前よ。それじゃ先に行くわね」
「あ、ちょ……抜け駆けはずるいぞ!」
こうして図らずも合流した二人の主役は異変の黒幕の元へと進んでいくのであった。この先に何が待ち受けていようとも知らずに今はただ、今日の夕食を考えながら。
つづく
2023 0805




