五十六尾 鬼と巫女と覚と魔女
20230420 修正
普通の魔法使いこと私、霧雨魔理沙は怪しい妖怪のあとをつけていた。
地底に来て普通に会話をした妖怪だったが風見幽香と知り合いだと法螺を吹いていた奴だが。纏っている雰囲気はそこら辺の弱小妖怪とは異なり風見幽香や八雲紫といった大妖怪と同じモノだった。
「しっかし、あの狐の妖力、滅茶苦茶薄いな」
意識して探さないと途切れそうになるくらい薄く、本当に存在しているのかと思ってしまう。以前、あの八雲紫の式である八雲藍を追った時も今と同じように薄い妖力で巻かれてしまったっけな。
狐妖怪達にとっては妖力を薄くすることは容易なのかもしれんな。
「そういや、あの狐尻尾がさ一尾だったな。多分だがここで生まれ育ったんだろう。なんせ地下だ上より凶暴な連中しかいないからな。そうでもないとこんなところにいるわけがないからな。幽香の事を知っている件は嘘をついたんだろうな、妖力が少ないから私に勝たないと察して」
自問自答も終わったことだ。早く追いかけるか。異変解決のついでにあの狐にはもう一度マスパを打ち込んでやろう。
そうして加速しようと箒を握る手に力を込めた瞬間、地底の空気が震えた。そして何かが爆ぜる音が響き渡る。
「な、なんだ?!」
あの狐が飛んで行った方向だような? 今の音はいったい……急いで向かうか!
◇
全速力で向かった先には霊夢と鬼?が戦っていた。どうやら霊夢が珍しく押され気味だったが、どうせ霊夢のことだ勝つだろう。
だから私は。
「霊夢、先に行ってるぜ!」
手を振りその場を去っていく。去り際になにか聞こえた気がするけど気のせいだな。それよりもあの狐はまだ先にいるのか。
霊夢たちを超え。妖力を頼りに進んでいく。どうもさっきから視線を感じるが気のせいだろうか。
「おい。誰かいるなら姿を現せ! さもないと周囲一帯を吹き飛ばすぞ?」
……返事はない。どうやら気のせいだったようだ。まぁ、こんな何もない場所に隠れれるようなやつはいないだろうしな。誰もいなくてよかったぜ。恥ずかしい思いをしなくてすんだからな。
「『しかし、なにもないな』ですか、なら早く地上に帰ってくれませんか?」
なんなんだこの「『薄気味悪いのは』ですか、酷いですね」
「ま、まさかおまえは」
「「覚妖怪」」
◇
顔なじみの魔法使いが去っていた方を見つめる私と鬼、星熊勇儀の間に微妙な空気が流れていた。
ホント、魔理沙の奴なんなのよ! 『先に行ってるぜ』じゃないわよ!
「あれは……あんたの仲間かい?」
「仲間? んなわけ」
まさか敵である勇儀から同情されるなんてホントにあの魔法使いは……
今度会ったらただじゃ置かないわ。
「そうかい、まぁ……おまえさんは人間だからな。よし、ハンデをあげよう」
いたたまれない空気を先に破壊したのはまさかの勇儀だった。
しかし、鬼という奴らはどいつもこいつもハンデを付けたがる生き物なのだろうか。
「ハンデ? 人を嘗めんじゃないわよ。そんなものなくても退治してあげるわ」
「この盃の中身がこぼれたら私の負けでどうだい?」
はぁ……なんで鬼は話も聞かないのかしら。
盃を片手にこちらに指を振っている勇儀に舌打ちをして戦闘態勢に入る。
「一瞬で終わらせるわよ。【――――】」
――七色に輝く弾幕と隙間を縫うように針、札が止め処なく降り注ぎ鬼を飲み込んで消えた。
「やった……かしら?」
「甘いね」
無傷――か。あまりにも簡単だと思ったが全力の攻撃で傷一つ付けれないのはくるものがある。
「じゃあ次は私の番だ」
「なんてね?」
巫女の不適な笑み鬼が止まる。その一瞬を見逃すわけがなく巫女の二つ目の術が鬼を襲った。
「うおおぉぉ!! 四天王奥義【三歩必殺】」
しかし、鬼は雄叫びを上げながら向かってくる。一歩、一歩と近づいてくる。
そして三歩目を繰り出す。
「これで終いよ」
だが、その歩みは地面から飛びでた物体が鬼の盃尾を地面に落としたことで止まってしまう。
地面から飛び出た物体は巫女の持っていたお祓い棒だった。
「参った、私の敗けだよ。約束は約束だ」
次はハンデなしでやろうと言っている鬼の戯言を無視し
「じゃあ、ラグナとか言うやつの話を聞かせてもらうわ」
「いいだろう、そうだね……ラグナを一言でいうなら変わった妖獣だねぇ。昔、鬼子母神である私らの母に真正面から殴り勝ったり。花の大妖怪と縁を持っていたりと幅広い交友関係を結んでいたりね」
とんでもない名前が出てきたがもしかすると昔は地上で活動していたのだろうか。だけどなんで地底になんているのかしら。
「あいつが地底に来た理由を知りたそうだね。それは本人から聞いてくれ。あんまり詳しくは知らないんだ」
「勇儀。そのような人間に教えてあげることなど何もないわ」
突如後ろから声が聞こえてきた。その声は冷淡でどこか見下している気さえする。
声の主に一言文句を言ってやろうと後ろを振り向くとそこは一面銀世界になっていた。
「は? どういう状況よ……これ」
「口を慎め、博麗の巫女」
振り返った先にいた声の主は全身真っ白でどこか先ほどであった狐に似ている気がした。
「いきなり出てきて黙れって何様よ?あんた」
「私は、口を慎めと言ったんだか? おまえこそ何様だ?」
なによこいつ、苛つくわね。人としゃべるときは目を見て喋れって教わらなかったのかしら。
「何様かって? 私は博麗霊夢様よ!」
つづく




