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東方狐著聞集  作者: 稜の幻想日記
幻想郷
79/152

五十五尾 追うものと戦うもの

2022/0316 修正

 普通の魔法使いを自称する人間の少女、霧雨魔理沙と別れて帰路につく。謎の神力が気になって出かけてみたがまさか面白い出会いと巡り逢えるとは。しかし、彼女らと会うことはないだろうな。


「――――。よし」


せっかくの出会いを無にするのも勿体無い。本当は関わる気はなかったが気が変わった。巫女が『異変』解決の邪魔をするなと言っていたが私はもうすでに巻き込まれているのだ。今更無関係を貫くのは無理だろう。それに私は『妖怪』だ。欲しいものは力を持って手に入れてきた。


「手っ取り早いのはお空か」


異変の発端であるだろうさとりのペットの一匹。霊烏路空が黒幕とみて間違いない。それを考え裏付けるのは灼熱地獄跡地で不意打ちされた時にあの子が身に纏っていた神力が物語っている。そうと決まれば行動は早いことに越したことはない。

 そして、私は新たな出会いの予感を受けながら最高速度で駆け出した。


 

 ◇


 とある巫女




 それにしても、不思議な妖怪だったわね。先程見逃した狐を思い浮かべながら私、博麗霊夢は当てもなく飛んでいた。狐の妖怪など別段珍しくはないが先程のあれは違った。あの胡散臭い奴の式神よりも格段に強い妖力を感じていた。だから初め存在を知覚した時異変の主かと思ったがどうやら当てが外れたようだった。話しかけてみると困惑の表情はあったが敵意などはなく寧ろ、懐かしい感覚さえ覚えている自分に困惑していた。何処かで会ったことあっただろうか――。


「夢……霊……霊夢!」

 突如声をかけられ意識がそちらへと向く。

声のした方を見ると隣に浮かべいた陰陽玉から声がしている。


「あら、紫。慌てちゃってどうしたの?」


「今まで繋がらなかったから心配してたのよ!」


 今まで繋がらなかった? あの妖怪と会う前までは異常なく繋がっていたはずだ。しかし、よく思い出してみるとあの妖怪と話している最中、他の妖怪と会った時は煩わしく喋っていた声がなかった気がする。


「私は大丈夫よ、それよりさっき、変な妖怪と出会ったんだけどなにか知ってる?」


「変な妖怪? いったいどんな妖怪なのかしら? 」


「狐の妖獣ってとこかしら。変や感じだったわ」


「狐――。あぁ、彼女ね、いまは知らなくてもいいことよ。知りたいなら後で彼女から直接聞いたら?」


 秘密じゃないのね。紫にしては珍しい返答に少しだけ違和感を感じたがこの妖怪はいつもこんな感じだった。


「興味ないから別にいいわ。それよりも異変の主を退治して早く上に戻りたいのよ」


「おっと、お前さんかい? 地上からの侵略者

は」


はぁ、なんでこう急いでる時に敵が沸くのかしらね。突然現れた者に牽制を込めてお札を突きつける。


「そうよ、あんたは?」


「おっと、失礼したね。私は元山の四天王の一人。星熊勇義っていう者さ」


 

山の四天王――。うちの神社に度々顔を出すあれもそう名乗っていたわね。唯一真っ向から勝てなかった記憶が蘇り苦虫を噛み潰したような気分になる。あれと同格なんて本当、厄介な奴が出てきたものね。


「立ち塞がるっていうのなら容赦はしないわよ!」


 お札を投げつけようとしたその瞬間、私達の間を通り過ぎた影が一つあった。物凄い速度で通り過ぎていくものだからお札が吹き飛ばされてしまう。



「あ! さっきの狐! ってお札が!?」


「ん? ありゃラグナか、どうしたんだろうねぇ?」


 ラグナ? あの狐の名前かしら。それにしてもこの鬼、勇義も先程の狐を知ってたのね。もしかして地底では有名なのかしら。


「やる前に一つ聞いてもいいかしら?」


「なんだい、安心しな殺しはしないさ」


「私の安否についてじゃないわよ。あの狐の事を知ってるのなら教えなさいよ」


――巫女の質問に鬼はにやりと笑った。いや、ニヤリどころか腹を抱えて笑い始める。


「く、くく――。可笑しな妖怪(やつ)さ。昔は上で色々やってるくらいにはね。それじゃあ始めるとするかね!」


「ちょっと! 答えになってないっ!? はぁ……面倒くさいわね!」


 そして挨拶代わりの拳を持って私と鬼の戦いが始まってしまった。



 ◇魔法使いshift


「たく、妖怪(あいつ)のせいで霊夢を見失っちまった」

 

 しかし、まぁ、地下は暗いな。そんなことを考えながら普通の魔法使いであり、博麗の巫女である友人より強いと自負する少女は箒で空を飛んでいた。

先ほどであった妖怪が少しだけ気になっていたが巫女である友人、博麗霊夢より先に異変の黒幕へと近づきたかったのだ。



「取り敢えず先を目指すか」


 そういって飛ぶ速度を上げた次の瞬間、魔法使いの頭上を一つの影が通っていった。


「なんだ?! あの狐か!」

 

 一瞬だけみえた先ほどの顔。普通を自称する魔法使いはあの狐の先が異変の終幕だと考え狐のあとを追うことを決めた。

こうして、地底で繰り広げられる戦いと追跡などを知る由もない狐は唯、己の目的を成すべく地底の形を変えながら進む。




つづく



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