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東方狐著聞集  作者: 稜の幻想日記
幻想郷
72/152

四十九尾 その後

2021 1013 修正


 真っ暗な洞窟に極彩色の光が点滅する。その光の中に二人の人物が対峙していた。

片や暗闇の中で金色に輝き、片や暗闇の中をさらに漆黒に染め上げていた。二人の放つ光……基弾幕はあたりの壁に穴をあけながら次々と打ち消しあっていた。





 やぁ、地底に封印されてから五十年はたったよ。え? 誰かって? 私だよラグナだよ、なぜ口調がおかしいかって……それは



「ねえ! ラグナ(おりじなる)今度はこれだよ! 逆流『還相回向』」 



 あの黒い狐が私の目の前で弾幕を打ち込んできているからだ。

それにしても奴のスペルカードは仏教由来のモノが多いな……この弾幕に至っては二つの円を作り無限を描くかのように回転する弾幕とは……ものすっごく避けにくい  



「やるねぇ! さすがはラグナ(おりじなる)だ。でも、これなら避けれないでしょ。刹那『涅槃寂静』」



「はぁ⁉ なんだこの反則技は!」

 

 黒と白の弾幕が高速で目の前を埋め尽くす。避けようとするが脳から体に伝達するよりも速く飛来する弾幕に成すすべない。

しかし、弾幕は私を避けるように絶妙な距離感で放たれている。


「おい! 情けをかけてるつもりか! 勝負したいなら正々堂々とやらないか!」


「ふふ、そんなこと言っちゃていいのかしら、負けたときの言い訳になんないわよ。でも、そろそろ疲れちゃったからこれで終わりにしてあげる!」


 やらかした。挑発されたことにカチンときてつい乗ってしまった。しかも黒いあいつは私が挑発に乗ることを確信していたのかニヤニヤと笑みを浮かべている。私と同じ顔なんだからそんな悪逆非道な笑みを浮かべないでほしい。

しかし、刹那と自身でつけるだけある。本当に一瞬で私の横を通り抜けてしまう。もしこの速度で回転やらなんやらされた時には……。



「……考え事はやめだ。この状況を打開する方法は……霊砲『轟稲光』」


 耳をつんざくような轟音とともに空間を削りながら放たれた砲撃が黒い狐の弾幕を塗りつぶしていく。

しかし、黒い狐は焦りなどを全く見せずに余裕そうに立っていた。なんなんだあの薄ら寒い笑みは……いったい何を企んでいるんだ 


「本命はこっちよ! 無色『六道輪廻』」


 最後に私が見たものは勝ち誇った笑みを浮かべた黒い狐だった。クソ……同じ相手に二度も負けるとは。だが、次こそは私が勝つぞ。

そうして私の意識は遠のいていった。



 ◇


 

「それじゃあ、敗者のラグナは勝者である私のために昼食を作るのだ!」

 

 そういってお箸を両手に持ったまま机を叩いている黒い狐……もとい黒菜くろなはにやにやと笑みを浮かべながらこちらを見てくる。

なぜこうなったのか――あれは私が地下に来て数年たった頃、気づいたら居たからである。その時も今日と同じように勝負して私が勝った。

 その後、なぜか居候として我が家に住み着いている。普段は今日みたいに戦ってその日の昼食をどちらが作るかを決めたりなんかしているが今のところ勝ったり負けたりを繰り返している。



「仕方ない。なんでもいいんだろ?」


「うむ! ラグナの作る料理は何でもおいしいからな!」


 こいつ、初めにあった時と性格がかなり変わったな。まるで子供の様な……まさかな。


「なぁ、黒菜。もしかしてだけどお前さん生まれて間もない?」


「へ? 当たり前のことを聞くなんてラグナは馬鹿なのか? 私が産まれたのはお前がこの地上に来た日だ」


「……産まれたばかりであれだったのか。私はとんでもない妖怪を生み出したのかもしれないな。というか戦闘の時とも様子が違うじゃないか」


「それはお互い様だとおもうぞ。ラグナも戦っているときは怖いしな」


 失敬な。私はいつだって優しい妖獣だぞ。と口に出そうとしたが節々に思い当たることがあり口に出せなかった。それをそれ見たことかとしたり顔にでこちらを見ている黒菜に半ば八つ当たり君に拳骨を食らわせる。

涙目でいたいと頭を押さえていたがいい気味だ。


「そういえば上はどうなってるんだろうか……あれから五十年か」


「懐かしいなぁ……」


「黒菜。一応聞いておくがもう二度とあんなことはしないと誓えるか? もし、また何か企てようとしていたら次は……」


「わかっているのだ。私はもうあんなことは起こさないしやらない。だってこんなにおいしい料理が食べられなくなるのは辛いからな!」


 笑顔でそう言い切った黒菜に私は少し恥ずかしくなり空いていた茶碗に山のように米を盛った。黒菜はそんな状態の私に気づかず盛られたコメに夢中になっていた。


「ふふ――お前は、面白い奴だな。まぁ、隠居生活も悪くないな……かなりジメジメしていることを除けば」


「ところでその量は多くないか?」


「――そうか? 普通だと思うぞ」


 そんな会話を交わしながら昼食を終え、特に何もなく一日が過ぎていく。

そんな代わり映えのない日常を謳歌しながら私は明日のことを考え瞼を閉じた。




つづく



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