四十六尾 神に上り詰めた狐
2021 0210 syuusei
術を施している時、私は幽々子との会話を思い出していた。
あの娘は平気そうないつもと変わらない笑顔を浮かべながら『もし、私も紫やラグナみたいに妖怪だったらよかったのに』
と言っていた。ただの冗談だと思い肯定的な意見を述べてたけど、あの娘は本気で悩んでいた。なぜあの時、幽々子の苦しみに気が付けなかったのか。後悔先に立たずとはよく言ったものね……。
「紫、本当に大丈夫なの? もし、無理なら休んでなさいよ。ただでさえ仮組みとはいえ、大掛りな作業を一人でしてるんだから」
「別に疲れてなんかないわよ。少し考えごとに更けていただけよ。さぁ、霊歌始めましょう」
「わかったわ――――」
霊歌の纏う気が変わった。そう感じ取った瞬間、幽々子への封印の儀はすでに終わっていた。
『流石』というべきか今代の巫女。この数十年いろいろな巫女がいたが封印術で彼女の右にでるものはいないだろう。
妖怪の賢者と呼ばれる私ですら編むことの不可能な術を能力ではなくただ才能だけましてや一人で扱ってしまうとは恐怖すら覚える。
「流石ね。ダメなところが一つもないわ。あとは任せて頂戴あなた達はラグナの所へ叩くなら今しかないわ」
「わかったわ。雪夢さん行きましょ」
「ん。おい、八雲。本当に後悔はないんだな」
雪夢の鋭い視線が私に突き刺さる。彼女はこのあと一人になった私が何をするか理解しているらしい。だからどうした。彼女を救うと決めたのは私だ。
たとえそれがこの世の摂理に反するとしても関係ない。私は妖怪の賢者だ。
「後悔なんてないわよ。もし、しているとしたら救えなかったことが後悔よ」
「そうか」
それ以上は何も言わずに霊歌の元へと向かう雪夢に一言だけ問いかけた。
「もし、あなたが姉であるラグナを失うことになったらどうする」
「……さぁ、姉さんが簡単に消えるとは思えないがもしそうなったら八雲紫。貴女と同じ道を進むだろうね」
少し考えた後、雪夢はそう答えた。両者にとっての茨の道を突き進むと。
◇
白玉楼から黒い狐の元へと戻った霊歌と雪夢は先ほどまで戦っていた場所に来ていた。
森は蹂躙され見る影もなく壊された神社。そして二人を逃がすために一人囮になった少女のいた場所には一輪のひまわりが落ちていた。
「……幽香。私たちを逃がすために」
「あら、博麗の巫女は随分と泣き虫なのね」
「っな⁈ 死んだはずじゃ!」
突然、ひまわりが大きくなりそのひまわりから霊歌を馬鹿にする幽香の声が聞こえた。
ひまわりは幽香と同じ大きさになると突如枯れ始める。
「ちょ、なんか枯れてるんだけど。これ大丈夫なの⁉︎」
「落ち着け。これは幽香さんの術だ。もうすぐ産まれる」
「咲くって……植物じゃないんだから」
ひまわりが完全に枯れるとそこには小さくなった風見幽香が立っていた。見慣れているのか雪夢は何も言わず。霊歌は驚きのあまり口を鯉のように開いたり閉じたりといった反応だ。
そんな姿を晒す霊歌に幽香はまるで馬鹿を見る目で見ていた。
「それにしても勝手に殺さないでくれる?」
「いや、だって完全に死ぬみたいな雰囲気で囮になってたわよね!?」
「あれはそういう含みじゃなくて反動を心配してのだ。幽香さんが死ぬはずないだろう普通に考えて」
「それはそれで失礼ね。元に戻ったら覚悟してなさいよ雪夢」
「……何はともあれ無事だったならいいわ。これからのことだけど今すぐにラグナさん……もとい黒い狐を叩きに行くわ」
そういって霊歌は先ほどまで八雲紫の元でやってきたことをすべて幽香へと話した。
「なるほどね。それなら猶更早く見つけ出して叩き潰さないといけないわね」
「ただ、現在黒い狐がいる場所がわからないんです。何か痕跡がないかと思ってこの場所に戻ってきたんですが幽香さん何か手掛かりになるものはないでしょうか」
「貴方達、私が居なかったらどうするつもりだったのよ……はぁ――手掛かりはあるわ」
「ないですよね。すいま……え? あるんですか!?」
「当り前じゃない。私を誰だと思ってるのよ四季のフラワーマスター風見幽香様よ」
「……なにふざけてんのよ。手がかりがあるなら早く追いましょ」
二人のやり取りを冷めた目で見つめる霊歌に幽香と雪夢の二人はノリが悪いと小言を言い合っていた。
「さて気を取り直して――手がかりならあるわ。黒い狐と戦っている最中に奴の体にある花を付着させておいたのよ」
「なら今いる場所がわかるのね! 早速追いかけましょ!」
「ほんとこの巫女は落ち着きがないわね。霊歌、よく聞きなさい今のあなたが付いてきてもろくに戦えないわ。隠しているつもりでしょうけど普通の人間ならもう死んでいてもおかしくない状態なのよ」
「――――気づいてたんだ。確かに今私は体を無理やり術で動かしているわ。だから何? 幻想郷の危機に何もしないで見てろっていうつもり? それは博麗の巫女……いいえ私、博麗霊歌に対する侮辱と取るわよ」
今までにないくらいの怒気を含みながら霊歌は幽香を睨みつける。あまりの姿に大妖怪である雪夢ですら息を呑んでいた。
しかし、それを浴びせられている本人は涼しい顔で受けていた。
「侮辱と取られてもかまわないわ。戦闘中に死なれたりでもしたら足手まといだから――二度目は言わないわ、この場に留まれ人間」
幽香の雰囲気が変わる。その姿は先ほどとは打って変わり霊歌を敵と認めたのか大量の妖気を霊歌へとぶつけていた。その妖気は地を揺らし幻想郷にいる動物たちが危機を感じるほどのモノだった。
「――――貴方達、まだこんなところで油を売っていたの? 全くしょうがないわね」
その瞬間その空気を打ち壊す胡散臭い妖怪が現れた。
何もない場所から現れたその少女は扇子を口元に運びクスクスと周囲を馬鹿にする態度で漂っている。
「紫……無事に終わったの?」
「えぇ、まあ少し予想外が起きたけど。それよりこんなところで何を争っているのか説明してもらえるかしら? 場合によっては……」
笑顔を浮かべているがその眼には笑みはない。先ほどまでの空気を破壊し、なお自分の色に染め上げたこの少女、八雲紫は静かに威圧感を放っていた。
「私がこの子をからかって遊んでただけよ。それよりあんたこそどうして直接黒い狐の場所じゃなくてここに来たのか教えなさい」
「ふぅん……まあいいわ。私がここに来た理由は貴方たち三人に正式に依頼をするためよ」
「……異変という扱いにするのね。わかったわ。雪夢さん残念だけどラグナさんを封印もしくは討伐させてもらうわ」
「――――っ……わかった。すまないが一人で行動させてもらえないか。頭を冷やしたいから」
「それは構わないわ。でも雪夢、姉を助けるために邪魔しようものならあなたも対象になることを忘れないようにね」
胡散臭い表情から真剣な顔つきになり八雲紫は言い放った。雪夢は無言で手をあげその場から消える。
その場には何とも言えない静寂が置き去りにされていた。
「それなら私も一人で動かせてもらおうかしら。妖力の回復もしたいし」
そういうと二人が口を開くより早くその場から離れて行ってしまった。
残った八雲紫と博麗霊歌は顔を見合わせ言葉を発するわけでもなく空へと飛びあがり神社へと向かっていた。
◇
「さてと弱体化しているとは言ったもののどうやって倒そうかしらね……」
博麗神社につくなり口を開いたのは紫だった。ほかの二人が居なくなったことによりどうやら少しだけ本心を晒していた。
紫は続けて霊歌を見つめながら言う。
「それに霊歌。あなたもこのままだと……」
そう心配する紫の姿はまるで実の娘に対する母親の愛情すらを感じさせていた。
そして霊歌は妖怪の賢者ですら心配するほどに彼女の体は限界を迎えていた。雪夢には気づかれていなかったが霊歌の巫女装束には先ほどできたであろう血の跡がついていた。
「やっぱりお見通しってわけね。だけど博麗の巫女としておちおち寝てたりなんかできなわ。例えこの命尽きようともね」
「――もし、もしもあなたの覚悟が本当なら万全の状態にして戦う方法があるわ。でも、私はこの方法を使いたくない。できれば私たち妖怪で終わらせたいと思ってるわ」
「覚悟はできてる。博麗の巫女として最後まで戦わせて……お願い紫」
◇
「……お姉さま」
妖怪の山のある秘境、霊歌たちと離れた雪夢は一人悩んでいた。昔誰かが言っていた私の心は雪のように冷たいと。しかし、大切なものに対しては太陽のように温いと
そんな言葉をかけたのは誰だっただろうか。そんな考えが巡り消えていく私に自分の姉を殺すことができるのかと。
「あら、あなたもここにいたのね。流石姉妹といったところかしら」
「ッ⁉︎ 誰だ!」
突然現れた者の顔を見る前に氷雪でできた長刀を振り払う。だがその一振りはその者に届くことはなかった。
振り払った長刀の刃の部分を植物の蔓によって遮られたのだ。
「こんな芸当ができるのは――幽香さんですか。なんであなたがここにいるんですか」
先ほどまでとは違いまるで氷のように冷たく鋭い視線を風見幽香へと向ける雪夢に幽香はなんとも言えないほど愉悦な笑みを浮かべていた。
その笑みを見て雪夢は我に返る。
「すみません。私の命を狙っている妖怪かと思いまして」
「あら、私はさっきの顔のあなたのほうが好みなんだけど。それがあなたの本性なのにもったいない」
「……茶化さないでください。ところでなんでこんな辺鄙な場所にいるんですか。この場所は私と姉様しか知らないはずですが」
「あら、この場所ならラグナが教えてくれたわよ。彼女も悩みがあったらこの場所でくよくよと悩んでいたもの」
そういいながら雪夢の隣に座った幽香の顔はどこか見覚えのある笑みを浮かべていた。
その顔は昔、母様が私を慰めてくれていた時と同じあの顔。
「私、お姉様……おねえちゃんを退治するって決まった時頭が真っ白になったんです」
顔を伏せ話す雪夢を幽香はただ静かに聞いていた。その姿はまるで母と娘と言っても過言ではないだろう。
「私の手でおねちゃんを殺すことができるのか? そんなことを考えるだけで体が震えて仕方ないんです。大神獣天狐の娘、大妖獣ラグナの妹なのに」
おかしいですよねと声を震わせながら笑う雪夢の頭を幽香は何も言わずに撫でた。始め驚いた表情を浮かべていた雪夢だったが次第に目から大粒の涙が零れ落ちていく。
そして、少しの間雪夢の泣き声が山に響いた。
◇
「お見苦しいところをすいませんでした」
暫くして泣き止んだ雪夢は頭を撫でていてくれた幽香に謝罪すると先ほどまでの重い表情から打って変わりすっきりとした表情へと変わっていた。
その顔を見て幽香は満足そうにうなずくと雪夢の髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でる。
「ほんとは私じゃなくてラグナかあんたの伴侶にやってもらったほうがいいんでしょうけどね……っ⁉︎」
突如、幽香の表情が変わった。その顔はまるで何か予想外のことが起きたかのように驚きに染まっていた。幽香の変化に気づいた雪夢は恐る恐る幽香へと問いかけた。
「どうなされたんですか?」
「まずいわね……雪夢、今すぐに黒い狐の場所に行くわよ。霊歌たちが危ないわ」
「ど、どういうことですか⁉︎」
しかし、幽香は答えずに行ってしまった。雪夢は後を追いかける。しかし、全力で走っているにも拘らず幽香との距離は縮まらない。
なかなか縮まらない距離に痺れを切らした雪夢は足に妖気を纏わせ先ほどと比べ物にならない速さで駆けだした。
だが、少しは縮まった距離もすぐに離されてしまう。
「は、速い……妖力を纏っている気配もないのに。一体幽香さんは何をあんなに急いでいるんだ」
「――――。もし、もしなにがあっても冷静さだけは失っちゃいけないわよ」
突然止まると幽香はそう言い残しまた進み始めた。一瞬のことに雪夢は首をかしげたがその言葉の意味をすぐに知ることになるとは今の雪夢には知る由もなかった。
ただ、その言葉を頭の中で反芻しながら後を追いかける。
――それは突然だった。今まで走っていたはずの山道は消えそこは博麗神社の境内だった。まるで魔法にかかったかのような感覚に襲われる雪夢をふさぐように幽香が立っていた。
「無理やり引っ張られたわね。それにこの結界まるで私たちを中に入れないようにしてるわね……雪夢、気を引き締めなさい敵の目の前よ」
「どういう……」
幽香さんの傘によってふさがれていた視界が広がる。そこには片手を失った巫女と地に伏せている紫の姿があった。
巫女は片手を失っても紫を守るために懸命に戦っていたがついには巫女も地に伏してしまった。
「くッ! なんて強力な結界なのよ!」
手の届く距離なのに助けることができない状況にイラつきを隠せないでいる幽香。そんな姿を雪夢は冷静に見つめていた。
その眼にはどこか確信めいたものが宿っている。
「幽香さん。結界の波打っている場所がわかりますか。もしわかるのでしたらその場所を攻撃してください」
「何を言って……そういことね。わかったわ」
すぐに雪夢の言っていることを理解した幽香はわずかに波打っている場所を見つけ出しその場所に高密度の弾幕を叩き込むと二人を囲っていた結界が音を立てて粉々に崩壊する。
「霊歌、大丈夫!? 雪夢、援護しなさい!」
「わかりました。雪符『雪後霰』」
雪夢達を包むように雪が降り始めついには霰へと変わる。雪は雪夢達を隠し、霰は黒い黒い狐の視界を妨げている。
一瞬のスキを突き幽香は霊歌と紫を回収していた。
「……貴女達、来てくれたのね」
意識を戻した紫は幽香と今だ黒い狐の動きを阻止している雪夢を見ていた。
しかし、彼女は体を動かすことができないのか視線以外はピクリともしない。
「ラグナは……黒い狐は私の予想のはるか上を行ったわ。それどころか……ッ」
「口を閉じなさい。あんた、体にそれも心の臓に穴が開いてるのよ」
「――ッ 私のことはいい! それより、あの子は、霊歌は!」
霊歌はと何度も口にする紫を幽香はただ何も言えずにいた。それを察したのか紫は顔を真っ青に染め上げた。
「嘘、うそよね? 幽香、何か言って頂戴。あの子が死ぬはずが――」
「死んではいないわ。ただ、生きているかとも言えない。今、霊歌は私の能力で安全な場所に移してはいるけど……助かる見込みはないわ。あの怪我と血の量じゃ」
包み隠さずにすべてを言い切った幽香に紫はただ一言呟いた。
「……そう」
「カカッ――面白いことになっとるのぅ」
突然聞こえてきた声に二人は顔を上げた。そこにいたのは地面にまで届く金と銀の入り混じった髪を靡かせ金銀妖瞳の少女だった。
しかし、二人はそんな奇抜な見た目よりもその少女の背後でうごめく九つの尻尾に目が動いていた。
「その尾の数……天狐ね。姿が変わっていてわからなかったわ」
「くふふっふ――元、この姿が本来の姿よ。それにしても八雲よ何とも面白可笑しい姿をしとるの」
「――ッ」
「誰が動いていいといった。そこの緑髪よ」
天狐と呼ばれた少女が指をさした途端殴りかかろうとしていた幽香の動きが完全に停止した。何をされたかすら理解できないでいる幽香に天狐は顔を撫で額を軽く弾く。
次の瞬間、立っていた幽香の体は力が抜けたかのように地面へと座り込んでいた。
「カハハ――そんなに怯えずともよいわ。別に喰ったりはせんお主が狐の友人じゃろ? 娘からはよく話を聞いていたわい」
「狐……ラグナのこと?」
「そうじゃった。今はラグナと名乗って居ったな。クカカ――まさかあやつが力に飲まれるとはのう」
「天狐、もしよければ私たちに力を貸してくれないかしら」
金銀妖瞳の吊り上がった瞳がさらに鋭く大きく見開かれた。その眼はまるで品定めをするかの如く紫に突き刺さっていた。
「クフ、クハハ――この天狐に手を貸せと申したか? 八雲よお主は何を差し出せる? 富か? 力か? それとも命か」
命を差し出すかと天狐が発した瞬間凄まじい神力がその場を支配した。紫と幽香はいまだかつて経験したことのない重圧に指の一つすら動かすことができなくなっていた。
「わか……ったわ。貴女が欲しいものをあげます」
しかし、紫はその重圧さえも退け精一杯ながらも口から吐き出した。
その返答に天狐は一瞬目を輝かせたがすぐに威厳に満ちた顔へと戻っていた。
「くふふ――冗談じゃよ。藍がお主のことを愛してるのは知っておる。娘の大切にしとるものから奪うものなどないわい。それに妾は申したはずじゃ喰ったりはせんとな。ほれ、お主たちは少し下がっとれ」
そういうと天狐は紫の体を尻尾で払いのけた。九つの尻尾によってかなり離れた場所まで吹き飛ばされた二人はなぜか傷を一つもおうことなく倒木の下に落ちた。
「いったい何者なのよ。あの神力と異常なまでの妖力は……天狐って言ってたけど。そういえあんた傷は大丈夫なの」
「――? 治ってる。いったいこれは」
瀕死寸前まで負っていた傷が綺麗に消え、さらに体中に満ちた妖力に驚いている紫と同じく全身に傷を負っていた幽香も自身の体から傷跡がなくなっていることに気が付いた。
そして紫と同じように体中から湧き上がる妖力を感じ取っていた。
「本当になんのなのよ……」
◇
一人、黒い狐と対峙していた雪夢は己の限界を感じていた。
いくら妖力の満ちた氷雪を降らそうが固めて飛ばしたところで姉であった黒い狐に対して微塵も傷になっていなかったからだ。
そしてついに雪夢は片膝を地面についてしまった。
「ここまでか……後は頼みました幽香さん」
目を閉じ黒い狐から放たれた破壊に身をゆだねた雪夢だったがいつまでたっても来ない衝撃に疑問を浮かべ目を開けるとそこには倒れ伏す黒い狐と見覚えのある姿が立っていた。
「クッカカ――よく一人耐えたのぅ見事じゃったぞ雪夢」
「貴女は……」
「お主はもう休んでおれ。あとは妾がやるゆえに」
その言葉を最後に雪夢の意識は尽いた。彼女が最後に見たのは敬愛する母の優しい笑みだった。
気を失った雪夢の顔をは安心に満ちた顔だった。
「それ、ラグナよ。少し妾と遊ぶか」
そういっていまだ倒れ伏す黒い狐に向かって優雅に歩き出した天狐に対して咆哮を上げながら起き上がった黒い狐が衝突した。
つづく




