三十九尾 始まりの大異変
2020 0301 修正
一方そのころ、霊歌と通信していた藍は妖怪の山へと向かっていた。
我が主である紫へ連絡をしたが紫からの返答はなく独自の判断でもう一人の姉、雪夢の元へ。
◇
「止まれ!……なんだ八雲の使いか。何用でここに来た!」
藍を止めたのは使い走りの白狼天狗だった。警戒しながら現れた白狼天狗は藍を見るなり警戒を緩めた。
「雪夢お姉さまを呼んでください! 急用なんです!」
「雪夢様か。大天狗様に報告したあとでならいいだろう」
「それじゃ時間がないんです!」
「おいおい、そんなに声を荒げるな。わかった雪夢様を呼んでくるからここを動くなよ」
「分かりました」
白狼天狗はすごい速さで飛んでいった。藍は通信用の御札を使い紫に連絡をしていたが一向に繋がる気配がない。
「紫様……繋がってください!」
しかし札は反応しなかった
「うぅ……紫しゃま……」
泣きかけているとき頭に誰かの手が触れた。その手は藍の頭をやさしく撫でていた。
「紫しゃま?」
藍が上を見上げるとそこには姉の二番目の姉である雪夢が立っていた。
雪夢はやさしく微笑んでいた。
「何で泣いているの? 悲しいことでもあったの?」
「雪夢姉さま! 霊歌さんとラグナ姉さまが!」
「お姉さまと博麗の巫女がどうしたの?」
霊歌の名前を聞いたた途端に恐ろしい形相になったことに藍は少し怯えつつも雪夢へと詳しく事情を説明した。
「ラグナ姉さまがいきなり黒い狐に変わって霊歌さんを」
「黒い狐? ――まさか」
藍が黒い狐という単語を口にすると、雪夢は少し考えるそぶりを見せたがそのまま続けるように促した。
「霊歌さんを助けて、ラグナ姉さまを元に戻してください!」
「正直巫女はどうでもいいけどお姉さまが気になるわね。それより八雲紫は?」
「紫様は出かけるといてどこかに行ったきりです……」
「なら、巫女とお姉さまの場所はわかる?」
「それならわかります! 紫様に霊歌さんの霊力を覚えておきなさいって言われてましたから。――今は人里の近くです!」
「ふむ……困ったな。里の近くだと私は能力を使うことができない」
悩んでいる雪夢を見ながら巫女の霊力を追っていた藍の手から持っていた札が落ちた。それに気づいた雪夢が藍の顔を覗き込むと藍の顔は真っ青になっていた。
「どうした、藍。なにかあったのか」
「霊歌さんの――」
震える声で絞り出した藍の言葉は絶望的状況を伝えるものだった。
「霊歌さんの霊力が途切れました……八雲の名においてお姉さまに依頼します。どうか……私たちの姉、ラグナお姉さまを封印、討伐して――」
「大丈夫、私に任せなさい。お姉さまも巫女もどうにかするから」
藍の口から放たれた言葉を遮り雪夢は人里へと跳んだ。
こうして、幻想郷を揺るがす大異変が起きてしまった。
つづく




