三十六尾 不思議な妖精と狐
2019/1102 修正
妖怪の山から降りたラグナはふらふらと空を飛んでいた。
「どこに行こうか」
しばらく飛んでいると山の麓のほうに霧のかかった場所があることに気づいた。
私はそこにいる何者かの気配を感じ面白そうだったので向かうことにした。
~霧のかかった場所~
「うわ、何も見えない」
どうやらその場所は湖のようで妖怪の山から繋がっているようだ。辺りは何もなく夏なんかは涼しくていいだろう。
「少し歩いてみるか」
地面に着地し、湖の周りを歩いてみることにした。木々の後ろからかすかに気配を感じるが先ほど感じた強い気配の持ち主ではなくこのあたりに住む妖精のようだ。
しかし、確かに先ほど感じた気配の持ち主は近くにいるようだ。
しばらく歩いていると訥々にそれは現れた。
「あんた何者? さっきからあんたの殺気がぴりついててほかの子たちが怖がってるんだけど!」
私は現れた人物をみて息をのんだ。感じた気配の主はまさか妖精だったのだから。
妖精から発せられる妖気は鋭く純粋なものだった。
「名を聞くならまずは自分からだろ?」
「あたいはチルノ。最強の妖精よ!」
チルノと名乗った妖精は元気よく胸を張った。さすが妖精だ警戒の毛の字もない。
呆れながら私も自己紹介する。
「私はラグナだ。よろしくチルノ」
そういって、握手しようと手を差し出したが
「あ、あたいに触れるのはよしたほうが良いよ」
と、少し悲しげな顔で断られた。何か理由でもあるのだろうか。
そんな疑問をチルノに向けるとチルノは静かに答えた。
「あたいに触ると怪我をするからだよ」
なるほど、彼女は自分の持つ力の強さに振り回されているのか。だから、傷つけないようにするために……そうだ、妖精といえば
「なあ、チルノ」
「なによ。握手ならしないよ」
「この問題が解けたら握手はしなくてもいい。だが、解けなかったら握手だ」
「いいよ、最強のあたいが何でもといてあげる!」
「千から五百を引いた後に十を加えると」
「ふふん! 簡単だね答えは五百十!」
「正解だ。これは簡単だな、次の問題だ」
「いいよ!」
「五百あるうち二百減ったさらに百九十減った答えは?」
チルノ「百十」
お、おかしい。普通に考えて妖精は三桁の計算をこなせるなんて。本当に妖精なのか?
「せ、正解だ。約束通り握手はなしだ」
「よかった」
安心したようにチルノは微笑んだ。しばらく二人で談笑していると
木々の間だから一人の妖精が現れた。
「チルノちゃんー! 大丈夫!?」
「あ、大ちゃん」
大ちゃんと呼ばれた妖精の少女はラグナを見ると怯えるようにチルノの後ろに回った。
「怯えなくてもいいよ。私はラグナっていうんだ君は?」
「わ、私は大妖精って言います!」
大妖精と名乗った少女からはチルノほどの妖力を感じなかったが神力に似た力を感じた。どうやらこの二人には何かがあるようだ。
「よろしく。大妖精」
「ひゃ、ひゃい」
どうやら、大妖精は人見知りの激しい子のようだ。いまだチルノの後ろにいる自分の友人をみてチルノは苦笑いを浮かべていた。
「んじゃあそろそろいこうか大ちゃん」
「う、うん。チルノちゃん」
「そうか、それじゃあ二人ともまた会おう」
「今度も負けないからね! またね、ラグナ!」
こうして、不思議な二人の妖精と別れ私はまたあてもなく空をふらふらと幻想郷散策へと戻っていった
つづく




