三十三尾 狐、酔っ払いに負ける
20190913 修正
追いかけっこを始めて早くも数時間が経っていた。桜鬼はいまだ全力疾走を続けている。どうやらあいつの体力を尽きることを知らないらしい。
「はぁ……はぁ……ったくなんで追いかけられなければならないんだ!」
さすがの私でも素の状態のまま全速で追いかけてくる化物から逃げ続けるのは厳しいものがある。
「まちな、ラグナ!」
しかし、化物には私の事情など知ったことではないらしい。いまだ速度を上げて追いかけてくる桜花から逃げ続けるのはそろそろ限界だ。
「これだから酔っぱらいは嫌いだ!」
そんな愚痴を叫びながらも走り続け遂に私は一つの考えにたどり着いた。
対桜花専用術を編み出すという考えに
「全速力で逃げながら術を作るなんぞこの先ないことを祈るよ……!」
咄嗟に後ろを振り返り地面に手をついた
「………すまんな。桜 創術【鬼縛泉】
桜鬼は地面から現れた鎖によって全身をぐるぐるに巻かれた。
それにより、桜鬼の動きを止めた。
「………やったか?」
ところが
「残念だったね。この程度の鎖じゃ止められないんだよっ」
桜鬼はいとも簡単に鎖を吹き飛ばした。それも少しの力で霊力で補強した鎖をだ。
あまりの出来事に硬直した隙を桜鬼は見逃さなかった。
「さて、お休みの時間だ」
いつの間にか目の目に現れた桜鬼から離れようとしたがそれを許すはずもなく妖力を纏った拳が私の腹を真っすぐ捉えていた。
「おやすみ。蜃気龍【鬼竜】」
一閃、妖力を纏った拳が私の腹を打ち抜いた。
「今回は……私の負けだ」
倒れる瞬間そう呟くと桜鬼は何も言わずに笑っていた。
その笑顔の意味を理解する前に私の意識は暗闇に落ちていった。
つづく




