二十七尾 宴会と桜の木
私たちは紫の提案でで小さな宴会を開いていた。三人だけの静かな宴会だ。
「幽々子、だいぶ飲んでいるが大丈夫か?」
「えぇ~大丈夫よ」
酔っているのか酔っていないのかわかりにくい幽々子の言動を見た紫が
「ダメだよ。もう出来上がってるわ」
と顔を酒で真っ赤にさせて呟いた。どうやら紫はかなり酔っているようだ。
紫が酔うのも無理はないだろう。なぜなら私たちは昼から飲み始めたのだから。今は丁度日付が変わったくらいの時間だろう。私でさえかなり飲んでいるのだ。だが、幽々子は始まった時からずっとこの調子で酒樽を一人で空にしていた。
「幽々子、だいぶ強いんだな」
「そう~? あ、ラグナ。酒がなくなっているわよ。注いであげる」
「あぁ、すまない」
そう言って幽々子から注いでもらった酒を一口で飲み干す。辛い。だがこの辛さが染み渡る感覚が心地よいのだ。
「しかしまぁ、綺麗な桜だな」
怪しげな雰囲気でたたずむ桜を見ながら飲む酒はなかなか乙なものだ。
「そうね。とても綺麗ね。でも、あの桜の木、西行妖のせいで幽々子は――」
「なるほど。あれが元凶か」
西行寺幽々子には死を操る程度の能力を持っている。死を操る。それは神の力と一緒だと言ってもおかしくないものだ。そして幽々子はごく普通の人間だ。それもか弱い少女なのだ。
精神崩壊を引き起こしていてもおかしくない。
「封印なんてどうかな?」
「無理ね。あれに近づくだけで死ぬわよ。大妖怪でも関係ないわ。あれはそういう呪いに近いものなの」
「呪いか……打つ手なしとは恐れ入った」
ため息をついて酒を飲みほした。あぁ、苦い。
何ともいえない感覚が私を満たす。虚しさが残ったまま、その日は解散になった。
つづく
2018/11/29 修正




