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東方狐著聞集  作者: 稜の幻想日記
古代幻想入り編 神と狐
17/152

九尾 宴会としばしの別れと

2016 0703 修正

夜、守矢神社にて神と人間が肩を組みあい笑っていた。

その光景は普通ではありえない奇跡のような光景だった。


「無血終幕の提案をくれたラグナに乾杯!」


「「「かんぱーい!」」」

洩矢の神の音頭で神と人間は盃を酌み交わす姿を見ながら一人の神が頰をかいていた。


「……諏訪子、こんなことをするなんて聞いてないぞ? 恥ずかしいじゃないか」

その神はここにはいない神の名前を呟きながら一人で酒を呑んでいた。

するとそこに酒を持った八坂の神が現れた。

「まぁ、私らも感謝してるんだよ。本当にありがとう」

「神奈子か、驚かさないでくれ。しっかし面白い光景だな」

「ありゃ。私の感謝の言葉を流すのかい。 この光景はお前が作ったんだぞ?」

「私が……ね。 そんな気はさらさらなかったんだがな」

そんな会話をしている二神に近づく者がいた。


「お~い~ヒック。ラグナ、あんた飲んでるぅ?」

近づいてきたのは先程音頭をとっていた洩矢の神だった。 そして、神奈子の持っていた酒を奪い来た道を戻っていった。


「ふふ。諏訪子ったらもう酔っている」

「そうだな。あいつはあまり強くないくせに酒を飲みたがるからな。私達も飲もうか」

「ええ、乾杯」

「乾杯」

  

盃がカコン触れあう音が境内に響いた。


それから人間も神も楽しく騒いで寝静まった頃。一つの影が神社から出て行こうとしていた。


楽しい思い出ができたな。まさか、神と人間が一緒に酒を飲み合うなんて光景が見れるとは思わなかったな。いいものが見れた。さてさて。


「そろそろ行くか」

巫女さんにはそのまま旅に出ると言っているから神社に戻らなくていいとして、どこに向かうか……


「もう帰るのかい?」

おっと、気づかなかった。まさか神奈子が起きているとは。

「おはよう。神奈子」

「まだ、夜だけどね。それでラグナはもう帰るのかい?」

「いや、私はそろそろ旅に出ようと思ってね。元々私は色んなところを旅して回ってたわけだから」

旅をやめてもう数千年も経っているんだよな。新しいものとの出会いに胸が躍るな。


「え……旅にでる?」

おや? 神奈子の様子が変わったぞ?

「あぁ、旅にね」

目つきが更に鋭くなった? 若干殺気と神力が溢れているな。


「でもあんたのとこの村の達はどうするだ?」

「そうだねぇ。守矢神社の方をお勧めしたよ。あはは」


「あんたそれでも神さまかい!」


「なんで怒ってんのよ?」

さくがに今の冗談はダメだったのか?

「あんたには失望したよ。お前の行為は村の人間を裏切る行為よ」

「神奈子、私は前に行ったよね。神の掟なんか守る気はないってね。私は誇り高き妖怪だ」

「そうかい、なら妖怪退治でもしようかねぇ?」

「いいけど。巻き込むことになっても知らないぞ?」

「ふん。ぬかせ妖怪が!」


突如現れた御柱が神奈子のしめ縄の周りをふわふわと漂う。

「久しぶりに戦うから手加減はできないぞ? 」

「ふん。手加減? そんなものいらん! 神祭【エクスパンデット・オンバシラ】」

御柱が左右に分かれ発射された。


「そんな遅い攻撃当たらないぞ! 霊装【霊剣】」

霊力でできた剣で斬りつけようと御柱を避けながら接近する。


「フッハハー!かかった! 左右は囮だよ! 」

まるで悪者のような笑い方で右手を振り下ろした。


「げぇ!? 嘘でしょ」

「これで終わりだよ。妖怪!」

左右真ん中から次々と御柱が発射されラグナは御柱に呑まれてしまった。

「さすがに危なかった。この戦いもこれにて終幕とさせてもらうぞ」

御柱の山の中から這いずり出てきたラグナは口に札のようなものを咥えていた。

その札を吹き出すと同時に煙のように消えてしまった。


「全妖力を霊力に変換。 終幕【狂宴結界】」

ラグナの体から煙のように現れた結界は一瞬で神奈子を呑み込み囲んだ。


「神奈子、楽しい戦いだったよ。だけど、それもここまでだ【終幕】」

その掛け声と共に結界の内部が爆ぜた。

「お見……事……」

「はぁ……はぁー」


◇ 狐、治療中……


「ん……私は」

目を覚ました神奈子に気づいたラグナは読みかけの本を置きそばに近寄った。


「おはよう。調子はどうだ?」

「最悪だよ。まさかこんなに力の差があるなんてね」

「私もギリだよ。さて、神奈子が起きたことだし私はそろそろ行くよ」

「なぁ、本当に村を捨てるのか?」

捨てる? 神奈子は何を勘違いしてるんだ?


捨てるも何も旅にでるだけでちゃんと巫女が居るし結界もちゃんと持続してる。それに三年に一度は帰る約束をしてるよ」

「そうだったのかい。怒鳴ったりしてごめん」

「別にいいさ。いい思い出ができしな」

「それは良かった。ところで諏訪子には言っているのか?」

「いや言ってないが……何盗み聞きしてるんだ? 諏訪子」


二人の影から幼い少女が現れた。


「あららら。気づかれてた?」

舌を出しながらあーうと言っている。少女、諏訪子にたいして神奈子は呆れた感じで

「あんたいつから聞いてたのさ」と聞いた。

「最初から最後まで全部さ。ねぇねぇ、ラグナ。私ともやろうよ」

「いや、そろそろ出ないと予定が狂う」

「あーう。それは残念だよ。なら今度会った時に闘おうね!」

「あ、あぁ。じゃあもう行くよ」

「気をつけるんだよ。ラグナ」

「私と闘うまで変なところでくたばっちゃダメだよ?」


二神に見送られながら狐の妖怪北の方へ飛び立つ。


つづく

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