stage4 星条旗で笑うピエロと恋色魔法使い
サグメ殿に教えてもらった場所は月の表側に位置する静かの海と呼ばれる場所だった。
「随分と荒涼としてる場所ね。ところでなんで私たちが月を救わなきゃならないのかしら」
それに変な妖精がうっとしいわ。と次々と襲ってくる妖精達に容赦なく弾幕を撃ち込む霊夢とは別に魔理沙は現状を分析していた。
「ちょっと情報を整理してるから静かにしてくれ。えー月の都は凍結状態だったが、それはさっきの奴か別の奴が防衛のためにやったと。そして月の都を侵略している奴がいると言う話だ。だから、私たちを使って月を救うと言うわけだろう」
「それより、さっきから私たちの前を飛び回ってる妖精は何なのかしら。目障りだわ」
「なぁ、霊夢。今何って言った?」
「はぁ? 妖精って言ったのよ? ――確かにおかしいわね。なんで月に妖精なんかがいるのかしら」
「二人とも気をつけるんだぞ。いつの間にか私たちは敵の領域に入ってしまったようだ」
「きゃはははは! 面白いことが起きてるわ! 妖精達よ、もっとスピードを上げていこ! イッツ、ルナティックタイム! 狂気の世界へようこそ!」
私たちの前に現れたのは目に痛い色の服を着た、禍々しい松明を持った妖精だった。
「誰だお前」
ミニ八卦炉を構えながら魔理沙が聞くと妖精はふふんと笑った。
「あたいは地獄の妖精クラウンピース! この土地を友人様に頂いてから貴方達が初めての来客だわ!」
「松明を持った妖精とはまた不可思議な奴がいたもんね」
「ふふん。松明を浴びた妖精達を抜けてくるなんてなかなかやるじゃん。でも所詮月の民、あたいに敵うわけがないのさ!」
「なるほどな月の民の敵がお前だというのはよくわかった。ならさくっと倒して報告するか月の都を救えば幻想郷も救われるだろうしな」
「それじゃあ、私達は見てるから魔理沙頼んだわよ」
「たく、お前もなかなか薄情な奴だよな。まぁいいや所詮妖精、魔理沙さんの相手にならないぜ! かかってこい!」
「あ、あたいを目の前に怯えないどころか馬鹿にされてる気がするんだけどっ!? 月の民の癖に生意気な態度を取りやがって、もうどうなっても良いよね。 穢れて地獄に落ちてしまえ!」
クラウンピースと名乗った妖精は持っていた松明を溶媒に弾幕を展開した。
しかし、弾幕ごっこにおいては幻想郷でもトップレベルの実力を持つ魔理沙からするとただ真っ直ぐ飛んでくる弾幕は相手にならないようだ。
「不自然だな」
そう私が呟くと隣にいた霊夢も相槌を打った。
どうやら霊夢も違和感を覚えていたようだ。
「あの妖精、妖精のくせにありえない力を持ってるわ。まるで神力に近い感じね」
「やはり、霊夢も感じ取ってはいたようだな」
私たちが会話をしている間に魔理沙とクラウンピースの戦いは終局に近づいていた。
クラウンピースは三つの月を操り魔理沙を攻撃している。どうやら、月を弾幕に見立て操っているようだ
対する魔理沙は魔力を貯めていた。
「魔力装填完了。 この一撃で終わりにするぜ! 魔砲『ファイナルマスタースパーク』!!!」
どうやら、一撃で終わらせるために魔力を貯めていたようだ。言葉通り魔理沙の放った一撃は月もろともクラウンピースを飲み込んだ。
「お前の敗因は私の前に立ってしまったこどぜ。まぁ、妖精だから死なんだろう」
「はあはあはあ。な、なんで……生命の象徴である我々妖精族がここを支配している限り、月の民は手も足も出せないって聞いたのに」
ボロボロの姿で地面にできた窪みから這い出てきたクラウンピース。どうやら彼女は勘違いをしているらしい。
「それはだなぁ。私が月の民じゃないからだろうな。ちなみに他の二人も月の民じゃないぞ」
「あ、あんた……いや、貴女様はもしかしてて地上人⁉︎」
「そうだ、日々地面に這い蹲って生きてるぜ」
「何で地上人がこんなところに……? 話が違うわ」
「顔を赤くしたり青くしたり忙しいなお前。ところで、何でお前ら妖精の所為で月の民が手が出せないんだ。判らんから教えてもらおうか」
「いや、それは私が説明しよう。月の連中は生死を拒絶して生きてきている。だから、生まれる事、死ぬことは穢れていると思っているんだ。そして、妖精とは生命エネルギーの塊。あとはわかるはずだ」
「あぁ、そういうことか。穢れの塊みたいなもんだから手も足も出せないのか」
「ところで私も聞きたいことがあるんだが。君のその纏っている力は何なんだ?」
「ふふん! この力は友人様の力さ! その名も純化だ!」
私の問いかけにクラウンピースは待ってましたと言わんばかりの笑顔で答えた。
「そう。なら、その友人様とやらのところに案内してもらおうかしら。もし嫌と言ってみなさい次の瞬間一回休みになるわよ」
そう言って笑顔でクラウンピースに近づく霊夢の顔は巫女がしてよい表情ではなかった。
クラウンピースもあまりの恐ろしさに敬礼の姿勢を取っていた。
「い、イエッサー!」
こうして、クラウンピースの案内の元先に進むことになった私たちだが、まさかあんなことが起きるとは誰も予想すらしていなかった。
つづく




