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東方狐著聞集  作者: 稜の幻想日記
幻想郷 日常の始まり
127/152

閑話 妖夢と湯けむり神社



この話はラグナが命連寺に行く前の話。








「お願いします!」


元気な声で構えた魂魄妖夢を見て私は霊剣を構えた。 なぜ、妖夢と対峙しているかは以前、というより昨日、妖夢と約束した稽古をつけているからだ。

なに? 気が早いのだはないかだって? 私から誘ったのではない、妖夢がわざわざ博麗神社まで来てくれたのだ。


「いつでもかかってこい!」


妖夢は『はい!』とだけ言うと腰に携えていた短い刀、白楼剣を抜いた。


「いざ、参る!」


妖夢の振るう刀を避けようとしゃがんだラグナを逃がさまいと妖夢は白楼剣を逆手に持ち直し振りかざした。


「甘い!」


振られた白楼剣を躱し距離をとったラグナは、自らその手に持っていた霊剣を消した。


「なんのつもりですか? なにもしてこないのなら参ります!」


「妖夢、貴様に足りないものを教えてやろう……それは観察眼だ! 霊符『呪縛天網恢々』」


「えっ!? な、なんで体が……!?」


「動かないだろ? 足元をよく見てごらん」


そう言われ妖夢は自分の足元に目を向けた。そして、なにが起きたのかを理解し、未だ構えていた刀を降ろした。


「参りました。私の負けです」


「うん。降参するのも大切なことだ。それで、妖夢、何か聞きたいことはないか?」


 満足そうに頷くとラグナは妖夢にそう問いかけた。すると妖夢は少し悩んだ後


「あの一瞬で陣を書けるのでしょうか?」


 妖夢はもう一度地面を見た。そこには大きく先ほどの術を使うための陣が描かれていた。


「戦う前はこんな陣はなかったですし。動き回ることもなかったですから」


「観察眼足りないと言ったんだけどね。地面、陣の線をよく見るんだ」


「はぁ……こ、これは、糸!?」


「陣のカラクリに気がついたかね?」


「まさか、戦う前から糸を張っていたんですか?」


「いや、まさか。白楼剣を躱した時にだよ。あの距離をとる瞬間に画いたんだ」


「全然気がつきませんでした。私はまだまだ未熟のようです」


項垂れてしまった妖夢の頭をラグナはぐしゃぐしゃと撫でた。


「せっかく来たんだ。風呂に入っていかないか?」


「あの、できたらでいいんですが」


「どうした?」


「本気を見せてもらえませんか?」


「……ふむ。いいだろう。構えて」


「はい!」


ラグナが何かを呟くと刀のようなものが現れた。


「なんですか。その刀は」


妖夢が驚くのも無理がない。その刀の形状は狐の尻尾のような形をしており。異様なほど長かったからだ。


「――――狐『天の九尾』」


そして、完成したその刀を二度振り構えた。


「……っ!?」


ラグナが動くよりも速く妖夢が後ろに跳ねた。妖夢自身も無意識に動いたのだろう。そして、もし、動いていなかったら妖夢は貫かれていただろう。なぜなら先ほどまで立っていた場所に『天の九尾』の刀身が伸びていたからだ。


「まだ離れなくてもいいのか? 」


「どういう――――?」


刹那、刀に異変が起きた。 異様に長かった刀がさらに伸びたのだ。


「私の天の九尾はのびるぞ?」


――――刀が妖夢の首元に当てられる。

ただし、五米ほど離れている。


「参りました……ふっう……」


大きく息を吐くと妖夢は座り込んでしまった。どうやら腰が抜けてしまったようだ。


「よし、そのままでいいから風呂に直行だ。私も妖力が減りすぎてきついからな」


「え、ちょっと、引きずらないでください!」


妖夢はジタバタと手足を動かしてやめさせようとしたが体力の無駄と思い抵抗をやめた。


〜天然露天風呂〜


湯けむり漂う露天風呂に私ことラグナはいる。というより風呂に浸かっている。

隣には霊夢……霊夢?


「いつの間に入ったんだ? 霊夢」


「あら? あんたたちが来る前から入ってたわよ」


なるほど、だから今朝は霊夢の姿を見なかったのか。 しかし……


「なによ、私の胸を見て」


「いや、すまない。なんでもないよ」


おっと危ない危ない。ふぅ〜しかしいい湯だ。

ところで妖夢の姿が見えないが……どこに行ったんだ?


「ふぅーいい湯ですね! 幽々子様も連れて来たいなぁ」


いた。なるほど、髪の毛を洗っていたのか。

おや? 半霊の色が少し赤いぞ。のぼせてるんじゃ……


「あれ、霊夢さんも入ってたんですね」


「あら、あんたの半霊のぼせてるわよ」


妖夢は自分の隣で漂っている半霊を見ると慌てて脱衣所に飛び込んだ。

あぁー。やっぱりのぼせてたんだな。お、帰ってきた。


「はぁー。危なかった」


「う、浮いてる……だと?!」


霊夢は隣に浸かった妖夢の胸を凝視して悔しそうにうな垂れた。そして、凝視された本人は。


「……? どうしたんですか?」


気づくわけもなく無意識にとどめを刺していた。


「くっ! これが強者(もつもの)の余裕ってやつなのね!」


キッと睨む霊夢に対し妖夢は首をかしげていた。

しかし、霊夢はなぜあんなにも悔しがるのだろうか? 大きいのがいいのだろうか? 肩がこるだけだが……


「あんた、私のことバカにしたでしょ?」


「いや、してないぞ?」


なんで霊夢はいきなり睨みつけてきた? 妖怪退治の時の目をして睨まれると変な汗が浮かんでしまう。

あ、またうな垂れた。


「もう二度とこいつらとは入んない……」


そういうと霊夢は顔を湯に突っ込んでしまった。なるほど不貞寝ならぬ不貞湯か。


閑話 終了

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