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東方狐著聞集  作者: 稜の幻想日記
幻想郷 日常の始まり
122/152

九十七尾 狐と僧侶

ラグナは人間の里はずれにある寺にいた。今の時刻は正午を回ったくらいだろうか、なぜラグナが寺にいるかというと昨晩こんなことがあったからだ。







 ~昨晩~


「そういえば霊夢。宝船はどうなったんだ?」


 冥界から帰ってきたラグナは霊夢と夕食を食べながら先日から宝船を探して幻想郷を飛び回っている霊夢に聞いていた。


「どうもこうもないわよ! あの宝船、宝なんか詰んでなかったのよ!? それどころか舟幽霊が船を操縦していたわ。宝船じゃなくて幽霊船ね!」


「そうなのか。宝船は今どこにあるんだ? 私も見てみたいんだが」


 霊夢はお茶を一口飲むとやれやれといった感じでラグナの質問に答えた。


「残念だけど船は寺になっていたわ」


「は? すまないもう一度行ってくれないか?」


「だから、宝船は寺になったわ」


 霊夢はやれやれと口にだして空になった湯呑にお茶を注いで飲んだ。ラグナはまさかこんな返答されるとは思ってもいなかったようで目をぱちくりとさせ持っていた食器を台の上に置いた。



「すまない。私、疲れてるみたいだからもう寝させてもらうよ」

 

「残った料理はどうすんのよ! 残すなんて許さないわよ!」


「あぁ、明日食べるよ……おやすみ」


「あ、そうだ。現実逃避してるあんたに寺の場所教えてあげるから明日行ってみたら?」


 ふらふらと部屋を出ようとしていたラグナはその足を止め霊夢のほうに振り返える。

そして霊夢に向かって

「私はそんな摩訶不思議なこと信じないからな!」と言った後、部屋から去っていった。

霊夢はそんなラグナを見ながらお茶をずずっと飲み干した。



「ん~? 風見幽香の家に行ってから子供っぽくなったわね。まぁ、いいか」

 

 そして、一人になった霊夢はまたお茶を注ぐとお茶を飲み始めた。




 ~現在~


 ラグナは通された奥の部屋で一人お茶を啜っていると廊下を走る音が聞こえてきた。そして、湯呑を置いたと同時に襖が開かれた。

 

  

「遅れて申し訳ないです。私は、この寺の僧。聖白蓮です」


 襖を開けた主はこの寺の僧侶と名乗りラグナの正面に座った。ラグナは僧侶、聖白蓮をジッと見つめ咳ばらいをすると持ってきていたお土産のお菓子を差し出した。


「突然押し寄せてすまない。私は博麗神社の居候のラグナだ。 あと、これをどうぞ」


「まぁ、これはこれはご丁寧にどうも。ええとラグナさんでしたね。本日はどのようなご用件で参られたのでしょうか?」


 ラグナから差し出された菓子箱を受け取ると聖は深くおじぎをして受け取った。


「博麗霊夢から異変の話を聞いて、宝船を一目見ようと思ってきたんだ」


「そうですか、でも来るのがちょっと遅かったかもしれませんね」


 聖は申し訳なさそうに言った。聖は部屋の天井を見上げた後にラグナを見つめた。


「実は船なんですが、今はこの寺の一部となってしまいました。一部分でいいのならお見せできるのですが……」


「霊夢の言っていたことは本当だったのか……いや、船が見れないのは残念だが。昔、有名だった僧侶と出会えただけアリと言ったところか」


 ラグナの言葉に聖は首をかしげた。そんな聖を気にした様子もないラグナは残っていたお茶を飲みほした。


「聖さん。あなた妖怪駆け込み寺『命蓮寺』の僧侶だったでしょ?」


「『だった』ではありませんよ。現在も命蓮寺の僧侶ですから」


 クスクスと聖は顔を真っ赤にさせたラグナを見ていた。ラグナは咳ばらいをすると先ほどのことがなかったかのようにしゃべり始めた。


「ところで聖さん。あなた人間じゃないだろ? もし、違っていたら申し訳ないが……あなたから私たちと同じ匂いを感じてね」


「匂い……ですか。確かに私は寺の妖怪たちから妖力をもらい受けています」


「そうなのか。さて、そろそろお暇させていただくよ。突然押しかけてすまなかったね」


「いえ、またいらしてください」


 部屋から出ようとしたラグナに聖は優しい笑顔で見送る。その笑顔にラグナも自然と笑顔になっていた。


「あぁ、また来させてもらうよ」




 


 ~人間の里~



 命蓮寺を後にしたラグナは団子を食べながら人間の里をふらついていた。



「魔に魅入られた僧侶か……おや?」


 考え事をしながら歩いていたラグナの前に紅魔館のメイド長が荷物を抱えて歩いている姿があった。メイド長はラグナに気づくとラグナに向かって一礼してラグナの前を通り過ぎようとした。


「忙しそうだな。荷物もとうか?」


「いえ、大丈夫ですわ。それより早く帰らないと妹様が起きてしまうわ」


「なんだ、急いでるのか。よし、私が送ってやろう」


「え……? なんで」


 ラグナが咲夜の肩を掴むとそこは紅魔館の門の前だった。何が起きたのか理解できないでいる咲夜にラグナは何も言わずに立ち去ろうと歩き出した。


「ちょっと、何も言わずに帰ろうとしないでください!」

 

 止められてしまった。ラグナは足を止めて咲夜のほうに振り返ると何をしたのか説明を始めた。


「なに、簡単なことさ瞬間移動というのをしただけだ」


「瞬間移動ですか……あんな簡単にできるものなんですか?」


「私が一度言ったことのある場所なら簡単に行けるのさ」


「そうなんですか」


「おや、なんで簡単に行けるのか聞かないのか?」


「いえ、勘ですけど……妖力の残り香が漂っているからじゃないですか?」


 咲夜の返答にラグナは思わず目を丸くした。そして、「正解だ」と拍手をしながら頷いた。


「それじゃあ。私は帰るとするよ」


「あ! お礼ができてないので帰らないで下さい!」


「お礼なんていいよ」


「いえ、私が気にするのでぜひ紅魔館へ」


「そうか? なら少しだけお邪魔させてもらうよ」


 それを聞くと門の前で寝ていた門番にナイフを刺し門番をおこすと門を開けさせた。

そして咲夜と門番は



 「ようこそ紅魔館へ。お客様どうぞ中へ」



 と完璧なお辞儀をした。ただし門番の頭にはナイフが刺さっていたが。



つづく

 

聖は扱いにくいですなぁ

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