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 港に着くとあたりは騒然としていた。

 ここは、六条島の近くにある島の港なのだが、普段は静かな漁港にたくさんの報道陣と島の住人の親族と思われる人々、普段ならこの島にいるような人数じゃない警察官…おそらく、現在この島にいる人数は、島の人口の何倍にもなるのだろう…そう思わせるような人の数だった。


 海に目をやると多数の漁船が航行しており、海上保安庁の船も見受けられた。

 空を見れば、たくさんのヘリコプターが飛んでいる。


「ってのんきにみてる場合じゃない」


 柏は、この光景に驚いていたが、すぐに仕事を始める。

 しかし、いくら話しかけたところで皆、自分のことに精いっぱいなのか、答えてくれる人が現れなかった。


「あの…」

「記者さんか? 悪いが帰ってくれ!」


 先ほどからこの調子だ。

 私が悪いのかというとそうでもないらしい。他の報道関係者も同様の扱いを受けていた。


 そんな人ごみの中に、見覚えのある人物を見つけた。


「細山!」


 私が話しかけると、柏と同じようにメモ帳とペン、カメラを持った男性が振り返った。


「柏会長!?」


 細山も相当驚いたらしく、目を丸くしていた。


「会長はやめてよ…高校は卒業したんだし、会長職だって半年しかやってなかったんだから」

「いえ。それでも、あなたが初代会長だったという事実は消えませんから。風のうわさだとあの同好会はまだ活動中だとか…」


 やっぱり、超科学研究同好会は有名なのだろうか…

 私だけが近況を知らないのだけかもしれないが…


「それはともかく…みんな気が立ってるみたいだな…」

「えぇ」

「まぁ島が一個消えたんだからな…当然と言えば当然か」


 細山はそう言っているが、柏は少し違う印象を受けていた。


 あの時と同じだ…


 青空村事件の時と状況が類似していた。

 あの時も、二日後ぐらいに青空村の隣にある町にいたのだが、その時と状況があまりにも似ていた。


「柏会長?」

「細山君。青空村事件について調べなおしたいんだけど、協力してくれる?」


 柏がそういうと、細山は迷わずこう答えた。


「はい。喜んで!」

「それじゃ、青空村に向かうわよ」

「はい!」


 柏と細山は、港のほうへ向けて歩き出した。




 *




 超常現象研究会の活動場所となっている教室。

 会長職を引退すると決意した柏は、自分の荷物を整理していたのだが…


「ない…ここにもない。確かにここに置いといたはずなのに…」


 大量の資料が収められている棚の上…アルミ製の箱に柏の私物が入っていたのだが、その箱にいっしょに入れていた笛がなくなっていたのだ。


「あれ…遠木君にもらったものなのに…どうしてないの…」


 あの時は、貸してもらうということだったのだが、そのまま持っていていいと言われたのだ。

 当初は、自宅に置いておくつもりだったのだが、もしかしたら、神隠しと関係のあるものかもしれないから、ここに置いておいたら? という希望の提案により、この箱に入れてあったのだ。


「まさか…盗まれた?」


 それはないはずだ。

 あの笛の存在を知っているのは、柏と希望だけのはずだし、希望には笛を持ち出す動機がない。


「どうして…」

「柏さん。どうしたんですか?」


 希望が帰ってきたようだ。


「それがさ…あの笛がどっかに行っちゃったみたいで…一緒に探してくれる?」

「えっと…すいません。用事があってすぐに帰らなくてはならないので…失礼します!」


 希望は、そう言い残して脱兎のごとくかけて行った。


「なんなの?」


 柏は、希望の態度に疑問を持ったが、追いかけるということはせずに笛探しを続行した。




 *




 ここはどこだろうか?


 ――お前自身の心の中だ


 どうしてそんなところにいるのだろうか?


 ――それは、自分が一番わかっているはずだ


 どうして、あんなことになったのだろうか?


 ――それは、お前自身のせいだ


 私は、自問自答を繰り返す…ただ、後悔し続けるしかないのだ…


 Kibougaoka Kibou




 希望は、見知らぬところで目覚めた。


 そこは、どこまでも真っ暗な世界。すべてを飲み込むような真っ暗な世界である。


「どうなってるの…」


 周りの様子を確認するために体を起こそうとするが、それはかなわなかった。

 体を何かで固定されているようで、身動きが取れなかったのだ。


「えっ!? どうなってるのよ! 誰か助けてよ!」


 希望は、必死に叫ぶが音は反響するのみで、誰かが答える気配はなかった。


「ねぇ! 誰か助けて!」


 その時、部屋の電気をつけたように世界が明るくなってきた。

 明るくなったといってもその場所は薄暗かったのだが、自分の状態を確認するのには十分な明るさだった。


「なにこれ…」


 明るくなってもなお、何かがあるようには見えなかった。

 徐々に白くなって行き、今度は、ただ真っ白な世界へと変わっていく。


「なんなの…」


 頭が変になりそうだ。

 なぜこうなったのか、というのも思いつかない。


 蒼竹高校を卒業し、兄の反対を押し切って地元企業に就職して仕事を覚え始めていた。その矢先にこれだ。


《目覚めたか》


 突然、そんな声が聞こえた。

 それは、聞き覚えのある声だった。いつも、希望の身を案じてくれていた声だった。


《そこは、お前の心の中の世界とでも思えばいい。事実、お前の精神状態をある程度反映している。まぁ今は違うがな…今から、お前の精神状態に合わせてその世界は性格を変えるだろう。それと、しばらくはそのままいてもらう》


 こだまの声が途絶えた途端、世界が再び暗転する。


 あぁ…これは、落胆とか絶望の色なんだな…


 そう思いながらも希望は、兄に呼びかける


「ここにいてもらうってどういうことよ! ちゃんと説明してよ!」


 希望の声に答える者はいなかった。



 読んでいただきありがとうございます。


 これからもよろしくお願いします。

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