キラーズギフト
「ハァ・・・ハァ・・・」
少女は息を切らしながら出店の並ぶ大通りを走っていた。目的地は街の中心にある噴水広場。今日彼女の街では祭りが催され、今走っている彼女もこの日は彼氏と一緒に祭りに行く予定だった。
二人とも学生だったこともあって彼氏と待ち合わせした時間は午後の6時。学校から帰った彼女は出掛けれる時間まで仮眠することにした。しかし、彼女はそのまま約束の時間を寝過ごしてしまった。慌てて家を飛び出したころには既に時刻は夜の7時過ぎ。
彼は待っててくれているだろうか。怒っていないだろうか。いや、優しい彼だ一時間も待たせた私を笑って許してくれるだろう。だから走る大好きな彼に会う為に
だが、その気持ちは大通りに出た瞬間に消え失せた。
大通りには誰もいなかった。出店もある、イルミネーションの明かりも灯っている。
なのに人が誰もいない。
背筋を伝う冷たい汗。明かりだけが照らす大通りを彼女は震える足で歩き出す。
彼との待ち合わせの場所は街の噴水広場。距離的にはさほどの距離ではないが今の彼女には恐ろしく遠くに感じられた。次第に速くなっていく足並み。ゆっくりとした歩調が次第に速くなり、早足となり、駆け足となって、今ではいつ転んでもおかしくないと云わんばかりに全力で駆けていた。
今、彼女を占めているのは恐怖と安心感を求める思考。
何故誰もいない、何故私だけ、何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故ーーーー
そしていつの間にかたどり着いた街の噴水広場。
視線の先には見覚えのある顔。噴水のそばに立つその人物は紛れもなく彼だった。
良かった、自分以外にも人がいた。
安心感という名の希望の光が彼女に灯る。
まるで誘蛾灯に誘われるかのように歩み出す。
そしてーーー
「・・・・・・え?」
彼女は歩みを止めた。
目の前にいるのは確かに彼だ。見間違える筈がない。では何故彼女は歩みを止めたのか。
それは彼の首があらぬ方向へ螺曲がっていたから。
悲鳴をあげて後退る。直後彼女は何かにぶつかった。
驚き振り返って見ればそこには小さな女の子がいた。いや、女の子だったモノがいた。可愛らしいピンクのワンピースに、可愛らしいポーチを下げたコレハは確かに女の子だった。ただあるべきモノである頭部がなかった。
再び悲鳴をあげて後退り周囲を見渡すといなかった街の住人達がいた。皆、首や四肢が存在しておらず中には上半身すら存分していないモノもいた。
なんだこれは、自分は夢でも見ているのか。
「あははははははは!?」
壊れてしまった彼女は街の住人だったモノ達の中心で笑う。そうだコレは夢だ。まだ自分は夢を見ているんだ。ほら、夢なら覚めないといけない、速くゆめから覚めて彼と一緒にお祭りにいくんだ。
笑い狂う彼女。そんな彼女に向けて歩き出す住人達。もう彼女には今目の前の光景を受け入れる思考は存在しない。
そしてーーーー