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違う視線

男性視点で前の続きです。

逃げようとする女子生徒の腕を掴む。

衝撃で小さな悲鳴が上がった無視した。

問答無用、とはこのことなんだろう、と思いながら教室に引き込む。

ここで逃げられたらたまらない。せっかく今まで隠し通せてきたことだったのに。

全く、放課後だからと油断した。


女子生徒、名前は覚えていないがクラスメイト(だろう、多分)は諦めたのか、逃げもせずに教室を見回していた。喧しくなくて何よりだ。

しかし、そんなことをしても、俺の後ろに立っていつでも女子生徒を捕まえられるよう身構える存在に気付くことはできないだろう。


「私には何も見えない」

「そうだろうな」

「生まれつき?」

「あぁ」

「ちなみに右利き?」

「は?」

「だから、右利き?」

「そうだ、が」

「じゃあ、先天的。…DNAが原因なのかな」

「は?」


相手の思惑が読めない。

逃げられると思った、または頭の心配をされると思っていた。

どうやって相手を口止めしようかと、考えていたのに。

相手は恐れるでも怒るでも笑うでもなく、淡々と、特に表情を浮かべることなく首をかしげた。


「それとも、トロンプ・ルイユのように目の前にあっても気付かなければわからない、て言う感じ?」

「なんだ、それは」

「ルビンの壺、が有名。トリックアートとも言う」


こいつは、つまり、


「錯覚だって言いたいのか!?」

「違う」


違わない。お前が言いたいのはそういうことだろう。

そう、俺が声を荒げたのに、相手は一歩近づいてきた。


「意識すれば見える。見え方を学べば見える類?」

「だから、俺は生まれつきだ!」


何が言いたい。何を知りたい。

俺が化け物の証か。狂ってると言いたいのか。


「じゃあやっぱDNAかな。でも、ヒトゲノムの塩基配列の解析はもう終了したはずだけど。塩基配列関係ないのかな」

「…」


頭が痛くなってきたと、初めて相手が表情を変えた。

眉間に皺を寄せてこめかみを揉み解す相手に、俺はただ何も言えなかった。


こいつは…違う。


「何で」

「ん?」

「何で、疑わない。何で、信じた。何で、“見える”前提で話す」


あぁ、と相手は何でもないようにうなずいた。


「目の動き」

「…は?」


は?と、俺は何回こいつに言わされるのだろう。


「嘘をついていない。少なくとも、体験はしている」

「だから、それがどうして」

「嘘をついている、想像した物事を話していたら、一般的に目は左に動く。だけどあなたの目は右に動いた」

「なに」

「ちなみに左利きだと逆になる。だから、確認した」


ぽかん、と、そのときの俺の顔はひどく間抜けだったろう。

女子生徒はそんな俺に、顎外れるよ、なんて注意する。


後ろにいた奴が噴き出す音がした。あとで締めるぞお前。


「…くっ」


しかし、俺も、奴のことを言えない。わからない、なぜだか、ひどく可笑しい。


「お腹抱えて、腹痛?どうしたの?」

「ちが…っく」

「呼吸困難?」

「ちょ、とりあえず口閉じろ!」

「ん」


そういえば本当に、口を一文字に結んで。

ますます笑いが止まらなくなった。







「あの時は狭霧サギリも爆笑してたな」

「狭霧?」

「俺の式神」

「あぁ、小柄なイケメンさんですか。ぜひ見てみたいですね」

「っ!?誰が会わせるか誰が。あいつは仕事で忙しい。当分帰ってこない」

「小さいのに頑張っておられるのですね。ますます将来有望です」

「…」

『ちょ、若、さりげに僕を踏まないでよ!僕此処にいるから!そしてお前らも助けろっ!!』








(誰だそんなこと教えた奴)

(お義母様です)

(『ふぎゃ、八つ当たり反対―!』)



「「「「「「「「(合唱)」」」」」」」(不器用な若様見守りたい一族の皆様再び)




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