両の腕を背中に回して
「んー…」
「お悩みですか。髭のおじじ様に何か言われましたか」
「いや、ちが…オイ」
「はい?」
「橘宗家先代当主を…あー」
「なかなか、あそこまで見事なお髭は珍しいかと」
「…なんで目が煌めいてんだ?」
「上の立場で髭を生やし、かつお手入れする男性って今では珍しいんですよ」
「そうなのか?…あー、そういえば」
「で、ですね」
「あ?」
「お話なら聞きますよ?聞くだけですけど」
「聞くだけかよ」
「聞くだけです。聞くだけで人は自分で問題を解決できる力を出すそうです。
ほら、ですからどーんと吐き出してください」
「お前なぁ…」
「致し方ありません。私はこちらの事情に疎い上にさして役に立つような…わわっ」
「こっちがいい」
「……タッチングですか?ですが、話を聞いていないのにあなたにとって効果的とは思えません」
「……せめてスキンシップと言ってくれ」
「日本でしか通じない英語は好きません」
「そーかよ」
「それにしてもあったかいですね」
「うお」
「いい匂いです。お香ですか。私は香道に通じはいませんが…よくあるお線香とは違いますねぇ」
「か、ぐ、な!」
(顔が真っ赤ですよ)
(この体制で…いや、もういい)