表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私はまだ、何もしてなかったのに?  作者: みこと。@ゆるゆる活動中*´꒳`ฅ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/7

2.リスの正体

 リスとの同居は……。お互い干渉しあわないというスタイルで落ち着いていた。

 私が食べる時、リスもテーブルに来て木の実をかじるから、食事は一緒にとってると言えるけど、基本、彼はフリーである。


 ただ、生き物が(そば)にいるということは、何かしらの反応やアクションがあるというわけで、それだけでも抜群の癒し効果があった。


 私が本を読んでいる時、そっと無言(当たり前)で近くに座ってくるなんて、もうもう私のこと信頼してる証じゃない?!


 危害を加えない人間と判断されたのが嬉しくて、そんな些細な積み重ねが楽しくて、私はリスにもっと懐いて貰うため、美味しい果物や木の実を集めるのも日課になった。


 日々の家事を私がこなす(かたわ)ら、リスのルーティンはといえば、タネと指輪を埋めた場所を毎日確認してる。


(小動物は埋めたものや場所を忘れると聞いたけど、そういうわけでもないみたい?)


 さらに不思議なこともあった。

 私が外で洗濯のため水を用意すると、周辺で飛び跳ねて、しきりとタネの場所に連れて行こうとするのである。


 リスに(したが)(おもむ)けば、今度はタネを埋めた地面を、テシ、テシと叩く。

「もしかして……、水をやれというの?」

 試しに水をかけてやったら、満足していた。

 これを毎日繰り返し、リスにも"植物を育てる"概念があると気付いた。驚きである。


(新種のリスかも知れないわ。なんか大きめだし。学会で発表すれば、賞を貰えちゃうかも)


 でも、前世でも今世でも学会には縁がないので、妄想だけで終わらせて、一緒に小屋に帰る。


 そんな日々が何日か続いて、リスの傷もキレイに消えた頃、ある日、リスと小屋に入った途端、ベッドに向かってリスが威嚇の声を出した。


 台所もリビングも寝室も、ほぼすべてひと間で賄えるワンルームである。見通し良く、リスが唸る空間に何かある様子はない。


「どうしたの?」


 声をかけても、リスは小さな全身に緊張をみなぎらせたまま、部屋隅に対して限りなく構えている。


「何もないみたいよ……?」


 用心しながらも様子を探りに、ベッドに歩み寄った。


 ドサリ! シャッ!


 ベッド上に落ちてきた何かが、飛び掛かってくる。

「きゃっ!」


 私の横を素早く駆け抜け、リスがソレ(・・)を攻撃した。


(蛇だわ!)


 リスが仕掛けた相手は、蛇!

 毒の有無はわからないけど、蛇というだけで忌避したい。


 蛇からのアタックを巧みに避け、距離を取りつつ、尾に噛みつこうとリスが果敢に挑む。そのうちに気づいた。

(私から蛇を引き離そうと、奮闘してくれてる?)

 なんて良いリス。胸が熱くなった。


 でもリスと蛇では、どう考えても蛇が有利。

 リーチが違うし、蛇の歯は釣り針同様、一度食い込んだら抜けはしない。そのまま巻き付かれたら、ジ・エンドだ。リスが丸呑みにされちゃう!!


「きゃあああっっ! イヤッ、ダメぇぇぇ!!」

 慌てて(ホウキ)を手に、蛇を追い払おうと必死で振り回した。


 人間(ヒト)とリスの共闘で消耗した蛇が、そそくさと小屋の外へ逃げていく。


「ふぅぅ……」


 力が抜けて座り込んだ私に、リスが駆け寄って来た。

「ありがとう、守ってくれたのね」


 お礼を言いながらリスを見て、ギョッとする。

 リスに血が! ついている!


「ええっ、ケ、ケガしてるじゃない!」

 いつ攻撃を食らったのか。

 無我夢中だったから気づかなかった。


 考えられるとしたら、蛇が私に飛びかかってきた時。軌道を逸らすため、リスが蛇に飛びついた、あの瞬間。


(もしかして、私を庇って? あああ、どこをケガしたのかしら。薬の在庫あったっけ)

 ようやく以前の傷が治ったところだったのに。また痛いなんて可哀そう。


(すぐに治してあげなきゃ──)


 オロオロと、リスに手を向けていると、ポワ……と手のひらがあたたかく……感じた次の瞬間には、両手から目が(くら)むほどの光がほとばしった。

「……!!?」


 まぶしくて目を閉じ、次に目を開けると。

「うぇぇぇぇぇぇぇっ?! だ、誰ですか!!」


 私は一気に壁際まで逃げた。(ブキ)は手にあるけど、怖くて殴る勇気がない。

 初めて見る青年が、私のベッドにいる!! しかも全裸で!!


「ちょっ、待て、怪しい者じゃない。俺だ、リスだ」


(リ? ス?)


 目が点になるとはこういうことを言うのだろう。

 うちのリスは人だった? えっ、何それ、ファンタジー???


 混乱する私を前に「シーツを借りるぞ」と言いながら、青年が急いで身体を隠す。


「まずは礼を言わせてくれ。行き倒れの治療と、呪いの解呪に感謝する」

「呪い……?」

「それについては、事の経緯(いきさつ)を説明させて欲しい」


 "欲しい"と言うが、決定事項のような話しぶりは、命令することに慣れた声だ。


(変態さんではない……のかな? だって顔がすごく良い……)


 顔で判断してはいけないとわかってる。がっ。

 品のある顔立ちに、整った各パーツ。目も鼻も口も、"神様がよほど気合を入れた"と思えるほど美しく、またそれぞれが完璧な配置で収まっている。

 シーツさえも神話の衣装に見えて、つい拝みたくなるほど神々しい。

(黄金の髪に、最上級ルビーのような煌めく瞳。絶対ご利益(りやく)ありそう)


 不審者なのに立ち居振る舞いにもオーラがあって、(なんとなく偉い人だ)という直感の元、私は恐る恐る尋ねた。


「あの……、お名前を伺っても良いでしょうか?」

「……リフ」


 呟くような名乗りは、聞き取りにくかった。


「リフ? っ、ああ、リスのしっぽ部分がのいたから、"ス"じゃなくて"フ"ということですか?」


「そんなわけあるかっ。"クリフ"だ! リスから一旦離れろ。クリフ・ラングリム。この国の、第一王子だ」




 蛇の歯って釣り針みたいな構造なんですって。確かにJみたいに曲がってる。

 あれで噛みつくと抜けないらしいです。ひぃえええ。

 毒のある蛇ばかり怖がってましたが、普通の蛇もやっぱり怖いですよね。リス頑張りました。

(今日は夜にももう一話、投稿予定です)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ