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私はまだ、何もしてなかったのに?  作者: みこと。@ゆるゆる活動中*´꒳`ฅ


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10/11

10.フィクションじゃない

「俺をお前の"新しい家族"にして欲しいと言ったら、困らせてしまうだろうか」


「え?」

(なんて?)


 自分の耳が信じられず、私は殿下に視線で問う。

 正面に向き直った殿下は、迷いのないまっすぐな声で私に告げてきた。


「シェリルに惚れている。リスに優しいお前も、聖水に震えるお前も、アグネスに毅然と対したお前も。そのすべてに惹きつけられて、愛しくてたまらないんだ」


 真剣な表情の殿下に至近距離で見つめられて、私の心音は外に漏れ聞こえそうなほど高鳴り始めた。

 いやもうさっきのスキンシップで(すで)にドキドキしてたから、ドラムロールに変化した、とでも表現すべきか。

 連打よ、連打。破裂しちゃう。


 同時に思い出した。


 王子がピンク髪の男爵令嬢に惚れるのは……。


「物語の強制力かも……」

 ぽそりと落ちた不安は、殿下の強い声に打ち消された。


「シェリル、物語なんかに囚われるな。アグネスで学んだだろう? 目の前の、生きてる俺を見てくれ。俺の気持ちは虚構(フィクション)じゃない」


 その言葉には、切々とした気持ちが込められていて。


「……っ」


 どうしよう、私も。

 私もクリフ殿下が好き!!


 強引に(フタ)をしてた。気づかないフリをしていた。

 その自制がパッカンと。見えない力で跳ね飛んだ。


 両想いの歓喜が、高潮のように()り上がってくる。

 激流待ったなし、この気持ちに押し流されてしまいたい。


 でも。でも。


「身分の差が──」

「それを越えるのが、聖女の地位だ」

「……!」

(クリア出来てしまう? 私が聖女認定を受け入れれば)


「むろん、父上は賛成してくれている。それどころかメリード男爵家を昇爵(しょうしゃく)させることが出来るとお喜びだった。優秀な神官や治癒術師、医師を多く輩出した功績を評価し、長年打診していたが、いつも断られていたそうだ」


(最大の外堀が、いつの間に──っ?)


「今度一緒に、男爵家に挨拶に行こう。待望の里帰りだ。家に帰れるぞ、シェリル」

「その帰り方は、私の求めてる帰宅と違いますっ、です」


 いろいろ許容オーバーで頭が真っ白になりかけてたら、殿下が目を細めて言った。


「それに王宮は"王都にあって、王都に(あら)ず"。王族になれば、戸籍も住民票から外れるしな」

「っつ、追放刑は不問になったはずじゃ……!」


 楽しそうな殿下の様子に、揶揄(からか)われてると気づく。


「もうっ……」

 彼につられて、笑みがこぼれた。


「シェリルは、笑ってるのが可愛いな」


「はうぁっ?!」

(不意打ちで直撃! ナチュラルに何を言ってくるのよ!)


 ただでさえ破壊力抜群のイケメンなのに。"好きだ"と認めた途端、私の中で至上最高、好みど真ん中に据えおかれたクリフ殿下のこれはズルい。


「考えて欲しい。俺との未来を」


 ひゃぁぃ、と言いそうになるのを理性で止め、かろうじて。


「じ、時間をください」


 とだけ、口にできた。

 殿下の奥さんということは、(すえ)は王妃だ。気軽にYESが言えない重責。きっと国中からも、反発される。

 

「どのくらい?」

「えっ、えええ、えーと」


(やめて。もうやめて。突然告白されて、(とろ)けた脳が使用不能なのです、クリフ殿下)


「まあ、あまり追い詰めて逃げられても困るから、今日はこれぐらいで良いか」


(今日は? "今日は"と言いましたか? まさか後日もあるの? えっっ。ああ、時間稼ぎしただけだから?)


 じゃあいずれは殿下の難問に、返事しなきゃないけないの?


 そうか、そうなのか?

 嘘でしょおぉぉぉ。

 もし「私も好き」だと告げようものなら、(そく)教会の鐘が鳴りそうな予感!


 混乱していたら、両手を(すく)い上げられ、そっと口づけを落とされた。


「~×〇△◇!!!」


 悲鳴がっ、声にならないっっ!


「ははは、シェリルといると、人生ずっと楽しそうだ」


「人生ずっと? まだ何もお受けしていませんが???」


「まあまあ。必ず口説き落としてやるから、覚悟しろ」


 圧が強くて押しが強いクリフ殿下が、どうしてオオカミじゃなくリスになったのか、私は本気で呪いの魔道具に問いたくなった。



 その後。

 クリフ殿下のあの手この手で王宮暮らしが続く中、物語で起こる災害を想起して殿下と力を合わせ、国の危機を乗り切るうちに、"今代の聖女様は素晴らしい方だ"と国民からも称賛されて。


 自分で逃げ道をふさいでしまったと気づいたのは、「妃」と呼ばれるようになってからだった。


 結果。

 かつてなく国は栄え、賢王と聖女の黄金時代と呼ばれることになる。

『あな永遠(とわ)』とは全く別の、私たちが生きた軌跡が、民に語られる物語となったのだ。


 フィクションじゃない私たちの物語が、永遠に刻まれていく──。



 ここまでおつきあいいただき有り難うございました!

 これにて本編は終了となります\(*^▽^*)/


 なおシェリルは「好き」と伝えたら大変なことになるので、言いたいのになかなか伝えることが出来ません。クリフは両想いなのを知らないので、手ごたえありと感じながらもいろいろ我慢しています。シェリルの気持ちを知った時が楽しみですね( *´艸`)フフフ


 この後7時に《ロドニー》回を予約投稿しているのですが、《アグネス》回が人気なかったので、ロドニーはどうだろう(;´∀`);

 公開を迷ったのですが、書いたので出しますね♪

 よろしくお願いします!!


 あっ、お話楽しんでいただけましたら、下の☆をなにとぞ★に塗って伝えてやってください!

 応援いただけますと今後の励みになります!!m(__)m

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『婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?』

『この結婚には、意味がある?』

『義妹を虐めた私の行く末』
― 新着の感想 ―
完結おめでとうございます! シェリルとクリフのやり取り、可愛らしくて頬が緩みました! ハッピーエンドで本当によかったです!
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