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私はまだ、何もしてなかったのに?  作者: みこと。@ゆるゆる活動中*´꒳`ฅ


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1.断罪された

「シェリル・メリード男爵令嬢! 将来の禍根を断つため、あなたを王都から追放します! 逆らう場合は、男爵家ごと潰しますわ」


 そう宣言したのは、我が国の筆頭公爵家のご令嬢アグネス様。


 突然の出来事。

 アグネス様は私に向かって「ニセ聖女の分際で"聖女"を(かた)り、国を乱す懸念がある」とおっしゃった。

 んんん? 自分を聖女だと思ったことも、名乗る予定もないのですが?


 まったくもって意味不明。

 驚いた両親も、取りなそうとした親戚も、アグネス様に面会すら出来ずサクッと負けて、私はいま、ひとり森の小屋にいる。


 "何があったかわからないが、公爵令嬢の(カン)(さわ)ることがあったのだろう"。


 というのが、周囲の見解。

 (カン)(さわ)るも何も、私とアグネス様とは会ったことすらなかったのだけど。

 極めて理不尽。

 

 でも、こうなった理由は、薄々察しがついている。


(たぶんアグネス様は、転生者だったんだろうなぁ)


 流れ落ちる自身のピンク髪を後ろに結い上げながら、私は掃除をすべく(ホウキ)を持った。


 そう。お馴染みの方にはもうわかると思う。

 私はピンク髪の男爵令嬢に転生した、元日本人。

 "こういう小説が流行ってる"と友達からラノベを紹介され、読み(ふけ)っていたある日、気がつくとお話の中に生まれていた。

 転生のきっかけは思い出せないけど、きっと前世で何か起こったんだと思う。思い出さない方がいいかもしんない。スプラッタとかだと辛いし。


(アグネス様は、第一王子クリフ殿下の婚約者だっけ)


 よくある設定だ。クリフ殿下と男爵令嬢が仲良くなって、元々の婚約者である公爵令嬢を追い出しちゃう。

 つまりアグネス様はその展開を知っていて、私がクリフ殿下と出会う前に、災いの元を排除したと、そういうことだろう。まだ何もしてないのに。


(納得できないけど、追放で済んで良かったのかもしれない)


 この世から排除、とか言われてたら"第二の人生"終了してた。

 とりあえず、自分のことは自分で出来る年齢まで育ってたし、男爵家の両親に迷惑をかけたくないから、さっさと人目のつかない森に移り住んだ。


 ずっとここで一人暮らしを考えるとキツイけど、アグネス様が無事成婚したら、手頃な場所に移動したいと思ってる。

 そこまで厳しくは言われないだろう。たぶん。



 チッ、チチチ、チチッ。

 小屋のすぐそばまで小鳥が来て、枝の間を飛び跳ねる。


 さわさわと風に揺れる木々の葉。

 陽光を弾いて煌めく緑と、こぼれる陽射しが、見るたびに違う色彩を描く。豊かな自然に空気が美味しい。


(清々しいといえば、清々しいんだけどね)


 よっ、と、掛け声とともに運んだ水を(かめ)に移し、ぐっと腰を伸ばした。


(日常の労力と、虫がね~~。ああ、水出る魔道具欲しい。お高いけど)


 前世の水道の有難さを思い出しながら、ハーブで作った自家製虫よけを塗布し、薪を取りに裏に回る。

 と、汚れたボロ(キレ)が落ちてた。


「?」

(違う。布じゃなくて、リスだわ!) 


 小屋の裏に傷ついたリスが一匹、横たわっていた。

 すぐ横に、見慣れない(タネ)と、宝石のついた指輪が転がっている。


(???)


 状況がよくわからない。種はともかく、指輪?

 とりあえず頬袋にいろいろ詰め込んだけど、こぼれたってとこ? どこのリス?


「死んで……るの? 埋めたほうがいい……?」


 ひとり落としたつぶやきに、ピクリとリスの身体が反応した。

 

(生きてる! 助けなきゃ)


 反射的にそう思って、小屋から清潔な布を持ち出すと、そっとリスを拾い上げ、家の中に運び込んだ。

 それからは無我夢中。

 リスの外傷を探り、清拭のあと薬を塗り、なんのかんの看病して、数日も経つとリスは何だか元気になった。


(あ──、どうして助けちゃったんだろうなぁ)


 見捨てるのも自然の摂理だったのに。

 独り暮らしが寂しかったから?

 こんな面倒なリスだと知ってたら……、でもやっぱ助けてたかなぁ。


「だぁかぁら──っ、取らないっていってるの! いい加減、警戒しないでよ!」


 リス相手に怒鳴ったのは、指輪と(タネ)を持った彼が(・・)聞き分けなく、威嚇してくるから。リスはオスだった。


「グゥルルルル」


(くっ、知らなかったわ。リスってキュイキュイうるさいし、いっちょ前にグルグル威嚇してくるし)


 意識が戻ったリスは、看病した私に感謝するわけでもなく、枕元に運んであげてた(タネ)と指輪の所有権を主張して譲らないのだ。


「取るなら、さっさと取ってたわよ。看病なんてせずに!」

「!」


 当たり前のことを言うと、リスの目が丸くなった。

 あ、可愛い。


「ね。取らないから。えっ、ちょっとどうしたの?」


 あっという間に頬袋に自分の宝物をしまったリスが、窓枠に飛び移る。


「出てくの? まだ傷は治ってないわ」


 外に飛び出したリスを慌てて追いかけると、小屋の近くで穴を掘り、それらをせっせと埋めている。


「ああああ。隠したいのね。でも指輪をそのまま埋めたら劣化するわよ」


 キレイな赤い石のついた指輪。うん。木の実か何かと間違えてるのかしら。

 頭の残念なリスね。


「ほら、油紙に包んであげるから、この状態で埋めときなさいな」


 指輪は木の根元に、(タネ)は比較的開けた場所に埋めるリス。

「埋めたとこ、忘れないようにね」

「キュッッ!」


 振り返りもせず、リスの背からはタイミング良く返事が返る。


(あ゛、やば。私、リスに話しかけてる)


 孤独に(さいな)まれた末、痛い自分に目覚めるなんて。

 でもでも、ペットに話しかけるのはよくあることよね?


(ペット? ペットかぁ)


 動物を飼うのは、小さい頃からの憧れだった。

 前世は借り部屋暮らしで無理だったけど、ここではリスと住めるんじゃ?


 リスに向かって話しかける。


「ね。あなた、傷が癒えるまでウチで暮らす?」


 リスがくるりとこちらを向いた。

 本当にタイミングの良いリスで、まるで言葉がわかってるみたい。


「あなたを(なん)て呼ぼう。ん──、んんん──。名前、"リス"でいっか。私はシェリルよ、よろしくね!」


 とっとておきの笑顔で挨拶したのに、リスはプリプリ怒ってしまった。扱いの難しいリスだこと。


 そういうわけで、ひとりと一匹の生活が始まった。




 連載はじめましたヾ(*´∀`*)ノ

 全25,000文字(調整あり)なので、2500文字ずつで10話くらいの予定です。

 短編で出すか、連載で出すかとても迷いました…!

 連載は不慣れなので、投稿ミスがないよう気を付けたい…。


 お付き合いいただけますと嬉しいです♪ どうぞよろしくお願いしますm(__)m

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