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9 タイトルは『光の神剣伝説2』です。ボスを倒すとバグって進めなくなるソフトが平気で売られた時代があるそうですよ。そしてバグる事が当たり前のように、4でサボテンが戻ってこない。

――


フォルティナ・ギンレイ


――


砂塵が渦巻く星、人は生きていけない環境なのによく生きていけたと賞賛します。

マスターの文明圏で言う所の人類はまだ滅びてはいなかった! って案件ですかね?

湖のほとりをサーチしてみますが、モヒカン肩パットのメタルマッスルの荒廃スタイルはいませんでした。

マスターの反応を観察したかったのですが、残念ですね。


観測者のいる惑星で資源の違法強奪はマズイのです。魔石の換金商売の時に航海ログを求められる事がありますから。

少しこの星で様子を見てみましょうか、なによりも融和的に解決が一番です。


青く澄んだ湖のほとり。

皆様が寸胴鍋(大きいおなべ)を囲み、おかゆをかき込んでいる。

人々のマスターへの感謝感激の声が聞こえて――


「米か、お腹にたまりそう。味は後だ、まずは腹を満たす」 「おかゆの湯けむりが顔にやさしい」

「塩が尖ってない、噛まなくてもいいな」 「肉の味がするのに、肉が入ってない」

「肉が入ってないけど、胃が動く音がする。これで夜番に立てる」 「味はともかく、今はお腹いっぱい食べたい」 「・・・味薄い」


???? スレたレビューが聞こえてきます。 塩を薄くして出汁を利かしているはずですけど!

ここは、私たちに無償で与えられた糧に感謝する場面ではありませんか。

でも、データーでは星4つ評価にしましょう。

口コミは 『味は最高、でも回りの難民がうるさくて落ち着けなかった』 で評価しました。


続いてビタミン系のリンゴ類を食べている、集団に周波数を合わせる。


「歯が仕事を思い出した。シャクシャクって感触がいいな」

「皮から空の匂いがする。澄んだ風の匂いも混じっている!」


そうでしょう。マスターのチョイスに感謝して頂ければと。

さあ、マスターを崇め讃えてください!


「もう少し甘すぎない方が好みだな」 「酸っぱさで目が覚める」 「・・・味薄い」

「知っているか? 太古の時代、これを握りつぶすのが戦士の強さの証明だった」


まさに蛮族、データベースに登録にない文明のセリフって感じです。

まったく! でも、今は気力を養ってください! ちゃんと、お代は頂きますからね。


マスターの方を見ると、部族の方々を回りながら 「大丈夫でしたか? 痛む所はありませんか?」 と、声をかけています。とても尊い行動だと思います。


直後、食事にスレた感想を言い合ってた女性達が一斉にひざまずき服を脱ぎだし、感謝に打ち震え、泣きながら服と装備を献上しようとする。


スレた感想に加えて、すっぽんぽん達の食事風景でとても文化的です。


――


そして炊き出しが終わり、人々が心からの笑顔を浮かべたその時。


『ラクランジュ』 が強力な生体エネルギー反応を検知しました。


【警告:巨大生物接近/ 反応:殺意 /サイズ:古代フリゲート艦】


まずは、マスターを私のそばへ。


「マスター、こちらへ! 強力な生体反応を感知、制裁神様の反応ではありませんが、危険です!」


これが 『制裁神様』 だったら即逃げででいいと思いますが。この反応は異界のモンスターです。

そして、この人たちを見捨ててマスターは逃げる選択肢は取りません。


マスターが一目散に私の隣に走って来た。


「はぁはぁ、モンスターのいない星って無いんですか? 運命が戦いを要請している様な感覚を受けます」


「マスターのせいではありません。星の終わりが近づくと観測者を抹消するため、空間の揺らぎから 『終焉』 がやってくるものです。マスターのせいではありませんよ? おそらくですけど」


首を傾げるマスター。

でも当たっています。観測者の始末のついでに異分子を排除するため、襲いに来ている感じもありますね。


浄化した大気と水の外をサーチ。毒の砂塵の方から何かがくる。

毒の砂塵が盛り上がり、影を映す。

触手がのたうつ黒い霧の巨人。顔が無いのに、その咆哮は確かに生き物だった。


「はぁ~、女神様の言う事が少しわかりました。

鍛えてれば悩まず戦いを選んでいたと思うのですが、戦闘経験が無い素人ではちょっとどうにもならない気がします。

あれどう見ても、悲鳴を糧にする悪魔のクリエイター達の集合体、ふろーむ式の顔が空洞の巨人じゃないですか。 フォルティナさん、勝率ってあります? 俺も戦います」


非戦闘員のマスターではおそらく邪魔になるででしょう。

ラクランジュの 『豆鉄砲レーザー』 の射線に立ち、大変な事になる確率が99%を超えています。

これをオブラートに包んで、プライドを傷つけないように伝えるにはどうしたらいいのでしょうか。


「思考中―― 勝率は高いです。ですが、マスターが素人なので邪魔だと思います。『魂の覚醒スキル』 を与えられたとしても戦闘経験がないのでは、厳しいと判断します!

マスターの戦闘参加で部族の戦士の邪魔になるので大幅に勝率が低下します。これをオブラートに包んで、マスターのプライドを傷つけないように伝えるにはどうしたらいいのでしょう?」


「伝えてる! おぉい! 十分、伝わってるって! ハイハイ! やっぱり少しスキルを使えるようにしないとダメですかね~!」


その時、戦闘能力が一番高いミラシャさんが喊声をあげました。

さすが、統率者リーダーです。精神性の高さを先ほどのレストランで感じていました。


「みなの者! 病に侵されず万全で戦える日が来たのだ!

この奇跡の地を守る! 未来は約束された、この手で勝利を掴むのだ!」


喊声を上げ炎髪を振りながら立ち上がると、女戦士達が魔石駆動の回転のこぎりを一斉に起動する。

ギャリリリリと刃が鳴り、黒い巨人の方に一斉に構えた。


防毒マスクの魔石エネルギーの消費システムを見る限りでは、文明は進んいたように見えたのですが、武器がひどく原始的です。


現地惑星に武器や、文明以上のオーパーツの譲渡は禁止されていますし、商売専用のラクランジュにそんな兵器は存在しませんし、おみやげ程度のなら渡していいと判断します。


「マスター! 一緒に来てください! あの装備よりマシなのが宿泊エリアに眠っています! マスターが渡せば十分に戦果としてカウントになりますから!」


「複雑な心境ですが、承知しました。運搬頑張ります」


タラップを上りラクランジュの扉をくぐる。


レストラン奥の扉、隔壁がシュウッ! と開き宿泊区画へ滑りこむ。

宿泊区画の小さなおみやげ売店所。

その中から、一つラクランジュの名前入りのシリンダーケースを掴む。


木刀ビームソード。

おみやげとの王道として仕入れたビームソードです。

太古の昔からおみやげとしてそこの地名の木刀を買う文化があり 「ラクランジュ」 の銘が入ったビームソードです。


売れずに300年眠っている、みっちり詰まった在庫があります。

マスター、助けてください。


「宿泊施設に眠っていたおみやげ屋さんがあったんですね。 えっと、不良在庫隠してました? あ、ごめんなさい。疑っている訳では・・・? いやいやいや、在庫台帳に乗ってないですよね? えっ、なにこのおみやげの在庫」


「マスター、乙女には隠し事が多いのです。消えない在庫って見るのも嫌じゃないですか? 永遠と処理されない、一番下に永遠に残る在庫一覧です。観測まで確定しないネコ理論もビックリですよ。アンドロイドの私でも頭がおかしくなりそうです」


「フォルティナさん、確かに気持ちは分かります。でもあのおみやげ提灯なんですか? 『じゅぴたぁ』 『まぁず』 『びぃなす』 って、コレ。全く違う銀河の星の名前ですよね? これ売れると思って仕入れました? あ、でも 『あーす』 が無い! バカな! 売れてるだと!」


マスターが機械の私にロジックハラスメントをしてきます。世も末ですね!


ビームソードに魔石エネルギーを入れ状態を確認する。


そして空気が震え――

ブォン! 緑の刃が伸び、誰もが喜ぶおみやげ 『木刀ビームソード』 が形作られた。

同時にマスターのテンションが爆上がりしています。


「うおおおおおお! コレコレコレコレ。これだよ! これ! これを振って見たかったんだ! フォース最高! フォース最高! よくわからないけどビームが最強ってのがいい!」


いや~、マッハで機嫌よくなって助かります! ですが今時、剣とか流行らないのですよね。

ロボです。巨大ロボがこの銀河のトレンドです。


「あ、マスターは振らないで下さいね! 技量が必要ですので、普通に怪我しますから。

さ、ミラシャさんにもっていってあげてください。 彼女なら100%使いこなすことが出来ると思いますよ!」


そして一瞬、スンと静かになり 「了解しました~」 とシリンダーを手に外に走り出しました。


外ではすでに戦闘が始まっていた。


黒い触手を持つ巨人に部族の方々が湖に近寄らせないと決死の包囲しかけ、非戦闘員はラクランジュの外殻で息をひそめています。


「うわ~でっけぇなぁ。理不尽の塊、ソウルシリーズそのまんまじゃないか」 マスターが走り出すと同時に私も駆ける。


前線では戦士たちが回転のこぎりを唸らせていますが、表皮に傷をつけるだけで手一杯。

巨人の薙ぎ払いを一撃でも食らえば戦闘不能となるでしょう。


宙を飛ぶように跳ね、切りつける炎髪のミラシャさん。

マスターがビームソードを投げ渡す。


「ミラシャさん! 使ってください、神の送り物って事で!」


受け取った瞬間、彼女の体温がさらに上昇、瞳孔が開きます。

感情ログは決意ですね。


刃の緑光が、周囲を照らす。

戦いの中にありながら、美しさを感じる。


ビームソードに照らされたミラシャさんが激を飛ばします。


「見よ! 授与された神剣の光を! 私達は神に認められたのだ! 勝利を捧げ我らの誇りを取り戻すぞ!」


見事な口上です。

士気が戻り、勇気のパラメータが大幅に上昇。

戦士たちは再び立ち上がり、猛攻をしかけます。


「フォルティナさん、皆さん凄い士気ですね。ハッハッハ、これは勝ちましたね」


「マスター? フラグってご存じです? この宇宙世紀でもフラグは健在ですよ、神妙に見守りましょう」


フラグに屈することなく、巨人が振るう黒い触手。

光剣が黒い塊を裂き、戦士たちが突撃し機動性を奪っていく。

そして、ミラシャさんがとどめと言わんばかりに跳躍。


「終わりだァアアアアアアアアアア!」


巨人を胸を真っ二つにし、黒霧は爆ぜ、粒子となり散っていく。

残ったのは、触手の部分と心臓部の魔石マテリア。


ミラシャさんが、両手で抱える程のマテリアを抱き上げた。


「これは、神より授かりし勝利の証」


魔石マテリアを持ちながらマスターの前に進み出ると、部族の全員が一斉にひざまずき地に頭を伏せた。


「シェフ様、銀神様。私達はあなたに救われた。

この勝利の証を捧げます。どうかお受け取り下さい」


異界の魔石マテリア、ラクランジュでエネルギー変換するより、売った方が利率が良い代物だ。


「ありがたく頂きます」


マスターが、両手でそれを受け取る。

これはありがたく頂きましょう。


「マスター、これで神のシェフですね。シェフのおかゆ料理の評判はソコソコでしたけど」


「フォルティナさん、それでいいんですよ。消化が大事ですからね。さて、魔石エネルギーも手に入りましたし。怪我人の治療と風呂場の解放をしたいのですが。フォルティナ支配人、打ち合わせをお願いします」


――


ミラシャ・リンバ


――


巨人は散り、再び青い空をとり戻したのだ。

託された光の剣の刃が消え、神聖な言葉が記された柄だけ残った。

胸が熱くなる。


ニコニコと笑い、慈愛を体現したかのようなシェフ様。

その手で証を喜んで受け取って頂いた。


だが奇跡は続いた。


「皆さま、浴場区画を解放します。ごゆっくり疲れを癒して下さい。怪我人はスパの酵素カプセルへ入ってくださいね! 簡単な怪我とお肌の治療になります」


銀の女神フォルティナ様がそう告げた。


「フォルティナさん、未来は酵素カプセルは信頼性が高くて安心しました。あと、怪我治るの凄いですね!? あ、魔石の事で後で皆さまとご相談があります。 まずはゆっくり治療と、汗を流してください」


浴場? 水浴びが精いっぱいの我々だ。

水は飲むためのもの。湯に体を沈めるなど、贅沢の極みだ。


――


「とは言え、折角のご厚意。我々には断ると言う選択肢は無い。そうだろう?」


すでに浴場ですっぽんぽんである。


「リーダー、その通りです。シェフ様のご意向に従うのみ。湯はただの贅沢ではありません、清潔を保つことは士気に直結します! 贅沢では無い、はずです」


「はぁい、お湯に飛び込めるとか最高すぎる! ひゃああああ! 飛び込めぇええええ! 昇天確定! 生きてて良かったと思える日が来た!」


「お湯の中にご飯をつけて保存食をふやかし食べよう。ほら、もってきたよ。お風呂も入れて、炊き込みご飯になるね。湯船で具材も煮込もう。 えっ、ダメ? なんで?」


民度が良くない。蛮族丸出しだ。

リーダーの私のせいだ。戦って狩って、マテリアと食料集めて売っての生活だから儀礼を全くやってこなかったなぁ。


広い浴場を白い光が照らし、湯気が白く立ち上がる。

澄み切った水、たっぷりと張られた湯船に足を踏み入れた。


「「「あたたか~い」」」


思わず声が漏れる。


その瞬間、壁の向こう側から声が響いてきた。

どうやら上部の空間は浴槽繋がっているのか。

隣の浴場は部族一人の少年、カリヤンの声が聞こえる。


「わわっ、シェフ様近いです! わぁ・・・、泡がヌルヌルして・・・」

「ほら、流すからこっちにおいで。男同士恥ずかしがるんじゃない」


・・・ごしょごしょ、パシャパシャ。



?!?! シェフ様の声も聞こえる。

普段は女装させ、肌を隠してきたカリヤンが、シェフ様と2人ですっぽんぽん!?

急に湯気が 『もんもん』 としてきた。 もはや風呂どころではないな。


先ほどまで蛮族のように騒いでいた浴槽が、静寂に包まれる。

全員が聞き耳を立て顔が赤くメスの顔をしている、まさか私もそんな邪悪な顔をしているのだろうか。


「そうなんだ、女装する文化なんだね。髪が濡れるとちゃんと男の子じゃないか。大丈夫だよ」

「シェ、シェフ様、そんなに・・・!」


そう、邪悪な顔をしてるな、間違いない。

私は邪悪。目の前にいる壁を乗り越えて覗こうとする蛮族どもを酵素ポット送りにしなければならないからな。


――


湯上り。

食堂で出されたのはカリッと焼かれた肉だ。

先ほどの巨人の触手を調理したものではなかった。


やがてシェフ様と銀の女神様が食堂に姿を現すと、我々は胸に手を当て礼をとった。


「皆さま、食べながらでいいので聞いて下さい。俺たちは星を渡り歩き魔石とマテリアを集める存在です。 この空間もマテリアを変換して動力となっています。

良かったら、このサービスを利用する契約をして頂けませんか?」


断る理由なんてない。

我らは救われた、ならば答えは一つだ。


「契約して使徒となりましょう」



いつもありがとうございます。


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