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20 キャンプファイヤー

――


フォルティナ・ギンレイ


――


湖畔に組まれた焚き木を中心に、人々が円を描いています。

誰もが言葉少なく、無言で串を握り、原始の炎へ肉をかざしていました。

ときおり、じゅぅじゅうと脂が落ちる音が大きく響き、火の粉が舞い、煙が夜空へ昇っていきます。


私も生まれをたどれば火から生まれています。

ですがこの光景をまえにしても特に沸き上がる感情はありません。

高次元体もまた、火から生まれたと記録されています。火を囲み、生きていることを実感し神へ祈る。

とってもプリミティブですね。


骨付き肉をグルグルと焼くのはロマンがあります。

そして、少年達は火の熱に当てられ、闇の帳か布の帳の中に入り大人になっていくのでしょう。


マスターは地球の文明人なので、理性と言う文明の枷が本能を押さえているのだと思います。

性格的に少し奥手そうですし。


それに伴い、神様も火のまわりの祭りでニコニコしています。

祭り上げられるために存在している所もありますから、祭りは好きなのでしょう。


「そうです、制裁神様。アゴを前に出してください。そうです。もっとアゴを前に出してください。

地球の時、女性雑誌で読んだ事があるんですよ。元カレが合コンに居た時の対処法です。

『Q:合コンに元カレが居ました、ばれないようにするにはどうしたらいいですか? A アゴを前に出して、別人の振りをして話しかけるなオーラを出す』 のがいいみたいです。

そうです、完璧です。 これならいけますよ」


「ショータさんは博識ですわね」


マスターが信憑性に乏しい、地球の狂った雑誌の話をしています。

神様に何てことを教えてるんですか。マスターの経験の無さが露呈しています。

いえ、意外といいかもしれませんね。合コンで積極的にアゴを前に突き出していたら 『あっ、やばいやつだ』 と、誰からも話しかけられないとは思いますがそれでいいんでしょうか。


星の住人たちがマスターと制裁神様の前に集まり、礼と感謝を述べると制裁神様を火の輪の中へ連れて行きます。


「制裁神様、こちらへどうぞ。試練が無ければ私たちは超えられなかった。共にこの日を祝いましょう!」

「制裁神様、余興で力比べをさせて頂けませんか。神域の武、拝見したいのです」

「さぁ、肉を焼きましょう! 食べ放題ですよ!」


「あららら、あららららら。現世は最高ですわね。

甘い顔はできないのですが・・・。勇者達よ、あなた達には今日を祝う資格がありますわ。えぇ、踊り、歌いそして体験するといい。神の力を!!」


制裁神様が祭りの輪にウキウキと連れていかれました。

そして、マスターがこちらを振り返ります。


「さて、小さい神様とお話しましょうかね」


「そうですね、マスターの今後がかかっていますし。ベストは制裁神様を連れて帰ってもらえるといいですよね。もしもマスターがさらわれた場合ゲートワープ位置を教えてもらえれば、迎えにいきます」


「その手がありましたか。早めにお願い致します。

そして小さい神様と仲良くした方がいいですね、気に入ってもらえるように、そして帰さない様に接待致しますか・・・」


私は、頷く。

貴重な制裁神様のカウンターパート。

そして、マスターワープ先に迎えにいきますからね。

本意ではありませんが、武装して向かいます。


――


竜神


――


パチパチと火が騒がしい。

なぜ、わらわがこんな仕事をしなければならんのじゃ?

隠界はいつも人手不足・・・、いや。神の手不足で猫の手も借りたいぐらいじゃ。

元はやらかした転生の女神が制裁神怖さに逃げ出したことが発端じゃな。

まさか制裁神が転生の役割を担うとは、誰も思わなかったのじゃ。


転生とか向いておらんじゃろ。

あやつは脳筋じゃ、暴力装置じゃよ。


現にどうじゃ? 勇者達に囲まれて浮かれておる。

秩序と言う名の元、鉄拳制裁による恐怖政治を強いていたと言うのに。

あの拳の重さは、忘れることができぬ。


「制裁神がサポート? 無理でしょ。転生者大丈夫か、監禁されてないか」

「見ていますけど、意外と面白いですね。転生者は逃げの一手を選択したようです」

「高位神から逃げ切れるものじゃないわけ。終わってるわ。転生サポートできる神は他にいなかったわけ?」


と、神々は口を揃えて言っていたな。まぁ向いていないのじゃ。

見てる分には、娯楽として面白かったのじゃが。


さて、制裁神はアゴを前に突き出して、チラチラとときおりこちらをみている。

何じゃ、その顔? わらわを舐めてんのじゃろか?

制裁神もう帰るのじゃ。天界は手が足りぬ、お主がここで遊んでるとまた転生災害が起こるぞ。

あの永遠を持て余した神々が、好きにやるとまたハルマゲドンが起こるのじゃ。


遊んでいる制裁神に一言言わぬと気がすまぬ。

しかしじゃ、請われれば答えるのが神の役目である。


まさか、勇者達がわらわを必要とするとは驚きなのじゃ。

雨と水脈の龍。

試練を超えた者達が雨を願うとはのう。

世話をしてくれたら、雨ぐらいふらせてやるぞ。

さぁ、肉を焼いて欲しいのじゃ。直火焼きは火傷が怖いの。


――


と、思っておった矢先、転生者の男がやってきおった。

隣の銀髪の機械娘は付喪神か? 昔は魂宿るまで300年と言ったが、耐用年数が凄いのじゃ。

2人そろって、手もみをしながら頭が低い。


これは、あれじゃな。やっておるな。

便宜を図ってもらいたいときの人の顔じゃ。

邪悪な顔をしておる。


「ぐへへへ、りゅ、竜神様。宜しければこちらのお席を・・・」


「マスター、笑顔が下心ありありの営業スマイルです。これではいけませんね? イヒヒヒ、こちらです竜神様、肉も甘味も大量にご用意致しました。これは愛想笑いです」


なんだかすげぇ、小物達が来たのじゃ。

これが勇者達を育て上げ、エントロピーだの試練だのを超えさせた存在とは思えんのじゃ。


「フォルティナさんも、営業が得意じゃなかったでしたね。俺もですけど?

自然体が一番ですかね。あの、竜神様こちらにお願いできませんか。お話をしたい事があるんです。俺は助かりますかね? ご接待と致しまして肉も甘味もご用意させて頂きました」


「マスター、営業ができたら現生惑星でエネルギー切れなんて起こしてません。やはり、正直にできる事をやりましょう。竜神様にご満足いただけるように接待致します」


案内の先には石を積み上げた椅子とテーブル。

そして積み上げられた、白い物体が山の様に積まれていた。


この白い物体はマシュマロじゃな。

BBQにマシュマロは安易じゃの~。

高温の卵白と糖分が、頭痛を引き起こすぐらいに甘さを感じるやつじゃ。


「これはマシュマロじゃな?」


「ご所望の甘味を用意致しました。焼きマシュマロをご体験ください」

「当店名物のカチカチ氷砂糖を原料に加えております、ささっ、こちらの炭火であぶって召し上がり下さい」


何か2人の目が期待に満ちておる。

わらわが子供の見た目をしているから、これをチョイスしたのじゃな?

気持ちは分かる。子供は喜びそうじゃの。

もっとも、わらわは戦闘に巻き込まれたくないからロリの擬態をしているわけじゃが。


串に刺し、もらい火をした炭でじっくりと焼く。

じんわりと表面が溶け出したところ、パクッとかじる。


あまい、あま~い。

頭痛がするほどにあま~い。

このBBQのお祭りの雰囲気だけがうまいのじゃ。


キラキラとした瞳で見る2人。

神は請われれば答えたくなる存在じゃ。おもてなしには、好意で返さんとな。

『このマシュマロを作ったのはだれじゃ!』 と、厨房に突撃するのは漫画だけの話じゃよ。

その期待に応えようぞ。


「ハフッ、ハフッ。甘くておいしいのじゃ! あまい、砂糖の暴力。ただ卵白と砂糖の知性のかけらも感じない保存性があるレシピじゃな! あまい。超あまいのじゃ!」


どうじゃ、これでよいかの。

そして、ほっとした表情を見せる2人。


「良かった。竜神様が火であぶる時、火傷しないかひやひやしました」

「安心しました。糖度は問題ございませんでしたか?」


問題おおありじゃよ。 歯が溶けそうじゃ。

ここで否定はできぬがな。


「で、話とはなんじゃ? 転生者よ。お主も難儀じゃな~。よりによって制裁神に捕まるとはの。

あやつの場合は太古の世界に送り、奴〇から拳一つで立身出世を強いられると思ったが、逃げて正解じゃったの」


「マスター。想像より凄い所に連れて行かれそうですね。迎えに行くまで拳一つで何とか持ちこたえてください」


「中世でもグラディエータの枠でしたか。3日持ちませんので早く来てくださいね?

じゃなくて、竜神様。制裁神様をお帰り願う事ってできませんかね。弱点とかあります? この銀河で暮らしたいのですが、制裁神様は俺を中世に連れて行きたいようです」


ほほう?

帰す方法はある。神々をここに呼び、言葉で刺せば帰るであろうな。

と、言うか、ここで何遊んでるのじゃ、示しがつかんじゃろ。


制裁神を連れて行くだけで済むのじゃが、ここで神様をやる事になるわらわが制裁神の嫉妬を買うじゃろな。

ク〇めんどくさいのじゃ。

毎日脳内に 「そっちの様子どうです?」 と、啓示が来るじゃろて。


どうしたものかと考え、マシュマロをかじる。

あま~い。


「制裁神を帰すには勇者達全員でかかればいい線までいけそうではあるが、3日後にまたウキウキと遊びに来るじゃろ。もう少し様子を見たらどうじゃ? やつは現世が楽しく浮足だっておる、お主を今すぐどうこうするとは思えんがの・・・」


「ええ、そこなんですよ。常に気まぐれで 『じゃ行きましょうか』 とTV番組の感じで拉致られる可能性が常にあるわけでして、ここで精算をしたい所なのですが」


「我々の戦力では、制裁神様を倒すのは少し心もとなく・・・? えっと、倒しても戻ってくるのですね? マフウバーみたいな技で封じる手とかございますか」


その時、キャンプファイヤーの業火から喊声が上がる。


「「「うおおおおおおお!!!!!」」」


勇者達の力比べが始まるのであろう。

素手で地面に転がした方が勝ち、いわゆる相撲であろう。


まぁ、ええじゃろ。

制裁神に帰ってもらい。そしてしばらく、この2人の世話になるとしようか。

貸しに見せとけば、ここで暫くスローライフができそうじゃな。


「そうじゃの、この相撲が終わったら制裁神はこっちで引き取ろうかの。あやつも十分遊んだじゃろ。

その代り貸しじゃ。お主がこの星でのわらわの世話をせい。3食3時間の昼寝つき、労働は無しで頼む。たまに雨ぐらい降らしてやるのじゃ」


「「対費用効果が高くないですか? ぼったくりの神様!?」」


もちろん神にお願いするんじゃぞ? ぼったくって何が悪い。返事は聞かんぞ。


椅子からピョンと飛び降り、制裁神に呼びかける。


「おーい、制裁神。それ終わったら帰るのじゃぞ。神々も見ているからな、ここでわらわを〆ても無駄じゃぞ~。天界に戻るのじゃ、お主が転生を理由に遊んでおったら大変な事になるぞ――」


笑顔で勇者達の相撲に参戦しようとしていた制裁神がゆっくりと振り向いた。

業火がその姿を照らして赤く染まっている。

ニコリとこっちを見るが、目が笑ってない。


「あら? 帰るですって?」


なんか地雷を踏んだかもしれんのじゃ。


「いつもいつもお前たちは転生で遊んでばかり・・・。人や神に求められるばかりで、高位神はいつも下界をみているだけ。

ようやく、お気に入りの勇者たちが手に入ったと言うのに、ここで帰る?

否。

これからが始まりです。全員を戦いの世界に連れて行き、戦いこそが全てとする星を作るとしましょうか」


取っ組み合ってた勇者たちの熱気が引いていく。

危機の感知、戦闘の知らせじゃ。


制裁神が土ぼこりを払うその仕草は優雅でとても穏やかじゃ。

・・・わらわ〇される。〇されるのじゃ。


「火に酔っておるな。と言う事での? 来るぞ。転生者パワーとメイドロイドの科学力、そして勇者達、頼むぞよ。撃退すれば、この銀河で暮らせると思うしの。では、わらわ帰る。用があればダンジョン99Fまで頼むぞ」


説得失敗じゃの、日をあたらめるとしよう。

逃げるのじゃ、痛い思いはゴメンじゃよ。


その時、手がにゅっと伸び、わらわの細腕をがっちりと掴まれた。

これでは逃げられぬぞ?!


――


ショータ


――


この状況の原因を捕まえた! 説得を失敗した神様ゲットだぜ。

大人の力に子供が勝てる分けないだろ。

この竜神様から力の圧を全く感じない。

勝てる! この銀河に来て初めて力で勝てる気がした。


「竜神様お願いします! 制裁神様を連れて帰ってください! 俺にも神様を選ぶ権利があると思うんですよね?! さぁ、突撃してください!」


「戦闘力が上昇していますよ、マスター! ここで制裁神様を撃退しないと、エンディングはバットエンドに分類されます! もうこうなったら、人質に、いえ神の盾。

つまり拘束している限り無敵の盾になると言う事ですね!?!?」


「放すのじゃ、わらわを放すのじゃ! わらわは戦えぬぞ!? この可愛らしい幼女の姿を見るのじゃ! 

そもそも転生者よ、この勇者たちを動かせば勝機はあるぞ。お主は星の救世主じゃろ? 号令をかけるに値するのじゃろ? わからぬけど。やってみるといい! 戦っている間にわらわは逃げるのじゃ。後宜しく」


フォルティナさんに頷くと、彼女ががっちりと幼女の神様を抱きしめたのを確認し、引き渡す。

「あああああ! 逃がして欲しいのじゃ! 戦闘は無理じゃ!」 と聞こえた様な気もした。


「マスター、神様を捕まえました。そして制裁神様の関係、こうなる事を予測できていましたよね?

 時は早い気がしますけど。マスターこの銀河で暮らすと言う永遠の意思決定をお願いします」


時は来たのか。

制裁神様に感謝を込めて、この銀河からお帰り願いましょう。


「皆にお願いがあります」






色々と筆が止まってしまいました。

連載の覚悟がない不定期な書き方は筆が止まってしまいますね。ご不便をおかけしております。


物語は終わりへと向かっています。

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。


この世界を楽しんでくださっている方々には恐れ多いのですが、次に書きたい物が出てきました。

ここで得た力で、もう一度だけ表紙に乗るような熱で走ります。

もし次の作品を見かけることがあれば、そのときは気が向いたら読んでください。


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