表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

2 転生したら選択肢は一つ。生きていくと言う事。選べない運命の中、人はなぜ選ぶフリをするのか


ロビーは暗く、一面に白いパネルが張られ、床も白いパネルが張り巡らされていた。

そして大きな人形が人語を喋っている。

ちょっと何言っているか理解できないけど 『いらっしゃいませ~』 だけは理解できた。

つまりここは店と言う事か。


よく見れば、めちゃくちゃ可愛いメイド人形が床に転がっている。

地球で言う所の 「ニャー」 と鳴くようで鳴かない、なんかイラッとする配膳ネコロボや、無表情な不気味さを備える外観の正気を疑う様な飲食系のポッパー接客ロボとは、まるで違う。

地球も少しは、このドール(大人の人形)を見習ってほしい。


銀色のショート、鮮やかなエメラルドの瞳、金属糸のようなラインが走る上品なメイド服。

胸元には小さく光るリボン。

造形美が素晴らしく、マネキンから感じる様な完璧な不気味さがアンドロイドだと 『本能』 が教えてくれる。


ピーピーピと警告音を鳴らし、その緑の瞳がじっとのぞき込んでいた。


「当館はエネルギー切れでとても接客はできそうにありません!

お客様、何かの事故でこの文明が存在しない星に来られたのですか? 先ほど 『助けて!』 とおっしゃいましたが、おそらく助からないと思いますよ~。この惑星に人間はあなた1人しかいませんし!」


なんて事を言うんだ、転生先は難易度ノーマルの世界のハズだぞ。

先ほどの転生の間で、女神様と敵の 『ノーマルな強さ』 の話をしてたのではないと思いたい。

恐竜1体ぐらいガチでやれば倒せると思うけども、違う。そういうノーマルのことじゃない。


「そもそも、残念ながら助けて欲しいのはこちらの方でして・・・?! あ、これビックチャンス到来です。胸に他銀河の超純光のマーセキン鉱石をお持ちですね。

・・・お客様おめでとうございます! 良くある二束三文の転移ストーリ真っ只中です。お客様が転移されて、最初にこの 『フォルティナ・ギンレイ』 の信頼をゲットするイベントですよ。

良かったですね~、一緒にこの星を脱出していただけませんか。え~と、私は高性能のアンドロイドで最後のナンバリングの銀嶺モデルです」


その声は、なぜか誇らしげでめっちゃ喋る。勢いに圧倒され何を聞いたらいいか分からない。

エネルギー切れにしては、とっても元気で何よりだと思う。

そしてこの大きいフィギュア、自立心が強い気がする。異世界のメイドロボはこうなのか?


今一度、ポケットを探すと先ほどの地下監禁世界で武闘派の女神様のドロップアイテムの魔石がちゃんと入っていた。


「当館のサービスはご利用できませんので、もしよかったら仮雇用されて頂けませんか? 仮マスターとなり異世界産の純光魔石を補給スロットへお入れ下さい。

この契約が締結できない場合、私はログアウトとなります。選択肢はイエスしかないと思います~。

悩まずイエスとおっしゃって頂けませんか、あと人間はこの星にあなた1人しかいませんので、大きなトカゲさんと生涯暮らす事になりますよ~!」


なになになになに?

つまり、この星で1人で究極のスローライフするかこのメイドロイドと働くと言う2択と言うこと?


フォルティナさんの胸元から映像に 『契約書』 の文字が浮かび上がり 『はい』 と 『イエス』 と 『わかりました』 しかないホログラムのボタンが浮かび上がる。


ねぇ、選択肢が無いのずるくない?

アニメの最近の魔法少女を思い出すわ、断れない状況の魔法少女の契約でもバリエーションがあったんじゃないかな~。白い鬼畜アニマルも強制してこなかったと思うんだけどな~。


そもそもアンドロイドなのにゴリゴリくるんですけども、現代ロボット三原則は 『可愛い』 『外見もかわいい』 『性格も可愛い』 なのに、異世界のアンドロイドってこんな感じなのか。


直後、背後の入り口で恐竜が体当たりを仕掛けているのか、ドドン! とロビーが若干揺れる。

これは、断る理由がありません。


「はいはい! 答えはイエスでわかりました!」 と、あきらめてボタンを押す。


フォルティナさんは満足げに一瞬だけ、ウィンクするような表情を見せる。


「本当にありがとうございます! さぁ、マスター。私と一緒にマーセキン鉱石を稼ぐ旅に突入ですよ、 ゲート転移の定番ストーリ。300年前まで大人気コンテンツだったと思います。

マスター、まずは私をひきずりながらそこのカウンター裏のバックヤードまでお願いします。そこに私のお休みベット充電器があります。 そのまま純魔石を補給スロットへ入れてください」


マジに今日は何て日だろうか。

フォルティナさんをずるずるとひきずり、バックヤード奥に入ると 『充電機』 とパネルが張られたベットに寝かせると、自動でクリアシールドがベッド全体を覆う。


その脇のスペースに、ゴミ箱のシュートみたいな補給スロットとパネルが赤く光っている所に魔石を投げ入れた。


淡い光がベッド全体を包み、緑のエネルギーラインがベッド、部屋全体が輝く。

ベットのパネルに 「補給開始」 と浮かび上がりフォルティナさんの首がこちらを向いた。


「凄い上質なエネルギー・・・、私は、ラクランジュはこの無償の対価をどう返したらいいでしょうか」


健気な発言が聞こえたかと思うと


「マスター! これなら宇宙に戻り、文明惑星にたどり着くことが出来ます! 今、エネルギーシールドを展開させます。 当館の水素、もとい水資源の補給は完了しております。ひとまず安全な宇宙へ脱出してから、考えましょう!」


淡い光がドーム全体に広がり、部屋の白かったパネルが次々に文字が浮かび上がる。

床が震え、丸型の窓の外を見ると、地表からゆっくりと浮かび上がる。

そのまま雲を突き抜けて空へ、そのまま宇宙へと飛び立った。

これが、フライアウェイ。


あっと言う間に窓いっぱいに広がる星の海。

真っ暗な宇宙、そして見える銀河の帯。


ドームが宇宙船とは思わなかった。

フリー座、俺を不老不死にしろボールの宇宙船の様な見た目だったのか。

とりあえず助かった、明日の事は分からないが。


「あ~、転生からダンジョン、そして宇宙へ。え~と、フォルティナさん? 展開が急でついていけないんだけども、とりあえず助けてくれてありがとうございます。 え~と、宇宙船素敵ですね。これから、自分はどうなるのでしょう?」


――


フォルティナ・ギンレイ


――


補給権限を委任するため、マスターの役職を一時的に渡した。

レトロな文明から転移してきた彼、転移系男性を静かに分析していた。


「あー、マジに宇宙だ。フリーザ様の宇宙船ドームに乗る日が来るとはな~。えっと、これから星とか制圧したりする生活になるんでしょうか。だとしたら、なんて兵器を起動させてしまったのだろうか。

ジェット機転生からダンジョンに放り込まれて、今度は宇宙か。頭おかしくなりそう。

あっ、フォルティナさん、助けてくれてありがとうございます。 で、これからやっぱり、魔石を求めて星を制圧しにいくんですか」


充電がある程度終わり、私はベッドから上体を起こした。

内部システムがひとつずつ再起動し、ピコピコと柔らかい起動音が響く。


「そうですね~、マスター。どこからツッコミを入れていいのか悩ましいのですが。ここは宇宙です、星の海、または銀河の帯です。映画と違ってCGは、一切使っておりません。服装とその発言から、文明レベルが把握できました!」


私は自然と笑みがこぼれる。

笑み。これは、おそらくエネルギー切れ直後によるエラー、もしくは内部パラメータの再調整が間に合っていないためだろうか。


「当館、ラクランジュは惑星制圧用兵器もレーザーキャノンも装備致しておりませんので、銀河支配モードの方針は非対応ですね~。ご安心下さい、マスター。

惑星制圧を想像されるあたり、前の文明の刷り込みが凄いですね」


これは、当たりに当たり、大当たり。マスターが大当たりです。

アンドロイドとして理想の方の仮雇用が出来るとは、アンドロイド人生何が起こるかわかりませんね。

この確率、ミリ、マイクロ、ナノどころじゃなくて、セプト、ヨクト並みの奇跡です。

レトロ文明で言う所のガチャ大当たりです。

アンドロイドやAI思考に拒絶反応が無く、むしろ自律思考のAIがあって当たり前の反応を受け入れているのですから。


私達は銀河に求められ作られ、やがて捨てられた

また人に求められ必要とされる幸せな日々は、来ないと思っていた。

胸の奥、データ領域の深層が温かくなる感触がある。

この値は、喜びの人間感情に分類される。


「改めて、マスター仮雇用されて頂き、本当にありがとうございます。あなたに供給して頂いたおかけで、私もラクランジュも再起動できました。ですが・・・」


音声のトーンを少しだけ下げる。


「ですが、エネルギー残量が後1週間分です。

ここは宇宙の補給ドック。燃料と食事と宿泊がメインの休憩場です。マスターの所で言う、宇宙の道の駅とか高速パーキングエリアみたいなものです」


もう宇宙の隅にぽつんと浮かぶ、孤独な道の駅ではいられない。

お客が来なければ、またエネルギーが切れてしまう。

惑星に降りて偽装しながら魔石を稼がなければ。


「うんうんうん、道の駅とか異世界共通なんですね。エネルギー残量より、そっちに驚いてます。

でもそんな気がしてました。マジにスローライフは無理そうですね。それで俺は何すればいいんですか?

食品機械関係の製造にいましたから、レストランの食材の工程処理と提供なら出来るかもしれません。シェフではないですから、プロの味は出せませんが」


思考回路がスパークする。


「ええっ! ここで働いてくれるのですか!? いかに他の惑星で逃げられずに本雇用の契約に持っていくか、全ての演算リソースを回していたと言うのに!」


「現金なメイドロボですね。とりあえず、自分も生活基盤みたいな物を整えないと宇宙でやっていくのが大変かなと思いまして。いや~、色々と宜しくお願いします」


このアンドロイドを拒絶した世界でまた人に求められ一緒に働けるなんて。

アンドロイド冥利に尽きる。こういうことかもしれない。


――


ショータ


――


これからは文明惑星に降りて、レストランと宿泊施設で魔石を稼ぐと言う事になるのだろう。

まずは食事施設の開放、厨房は一通りの未来器具が揃っていた。

箱ひとつで、煮る焼く蒸す、全ての事が出来る万能レンジだ。

こんなものがあれば、全ての店が助かるだろうなぁ。


レストランのコンセプトで何の工程を中心とするか、フォルティナさんと打ち合わせなければならない。

支配人の意向は優先されるべきだ。


だが、ラクランジュの食事の 『試食サンプル』 として出て来たものは、レンガ。

何て言うのか、3匹のこぶりんのレンガの家で使われているあのレンガ。マリ尾のブロックと言えばいいのか。

狼のレイド(拠点強襲)のC4爆弾を防げるような、ガチガチのレンガだ。これ建材じゃん。


「マスター、ラクランジュの名物、完全食保存食フードです! 味はともかく、1つで3日間は生き延びられます!」


ゴゴン。

と重低音とともに船内の食堂で出て来たものは、物質だった。


「何コレ・・・? 人の食文化って終わってるのか? いや、厨房の未来箱、焼く煮る蒸すの機能が全てあったハズ・・・? どういうことだ? ああああ、フォルティナさん、そういう事じゃなくてゴメン。ディスっている訳じゃなくて。そうそう、まずは食べてみないとね」


いや、これ山とか登る人のアレでしょ。

こう見えても、食品衛生管理者で詳しいんだ。資格とか宇宙だと関係ないと思うけど。


手に持ちかじるとガラスの様な不協和音とチョークの味。

レストランで出す食事がこれはやばい。『AI文明はもう発展がないのです』 と言われたが、こういう所じゃないのだろうか。


「うんうんうん。山とかに持って行ったり、トライアスロンする人には喜ばれそうだよね」


「本当ですか、マスター。つまり長い船旅をする方々には好評ですよね!」


緑の綺麗な瞳が俺をのぞき込んでいる。

その喜ぶ仕草にドキッと心臓が跳ね上がる。


どうしよう、可愛いメイドロイドに現実を伝えられない。これは、ゴ〇だよ。食いもんじゃねーです。

人には脳と同じ程神経細胞の数が、舌、胃、腸にある。人の魂と言っても過言じゃないんだけども。


そもそも彼女は味覚があるが、食べる必要が無い。これを伝える事が出来ない。

マジに頭を抱える。


「ですが栄養価100点、味覚0点。アンドロイド的にはこれが最適解ですが、人類には不評の模様です」


と、フォルティナさんはどこか申し訳なさそうに頭を下げる。


「おおおおおおおお!? わかってくれてる?!」


これなら、改善の余地がある。

『いえ、ドーピンクコンソメ―スープだ、食べてください』 だとか自身満々に言われないだけありがたい。


「肉と野菜関係の歩留まりの処理能力どのくらいですか? 保存している物のデーターを見せてください」


フォルティナさんが一歩、よろけたように下がる。


「承知致しました。あの~、マスター。前の銀河でアンドロイドにモテモテだったりしませんか? マスターが満足できるように魔石が溜まったら、ソフトなわがままボディを購入しますね~」


恐ろしい事をいいよる。

ドールに手を出した友人で戻ってこれた者はいない。


――


星々を背に、ラクランジュは静かに中世の街道外れに降下した。

眩い銀色の船体が、ホログラムにより石造りの宿屋へと姿を変えていく。

人知れず街道に馴染む古びた建物がひとつ、そっと増えた。


「科学ってスゲーですね。魔法と同じでなんでもありだな~」


気づけばラクランジュはしれっと、異世界に溶け込んでいた。

地球の時、宇宙人はもう既に来ていると言っていたか。

多分きている。よく公園のベンチに座っている気がする。


未来技術に感心しながら、肉と野菜の処理を終え、客と厨房越しにフォルティナさんの客襲来の報告を聞いていた。


「マスター、そろそろ来ますよー! 準備をお願い致します!」


店の外を映し出し、ポップアップが映る。


街道の砂利道に砂埃が舞い、遠くから駆けてくる馬の蹄音が響く。

現れたのは、赤髪の男性。

何か疑うような目つきで店の前に馬を止めた。


「マスター来ましたよ。この銀河では珍しい男のお客様です。ささっ、マスター。この銀河男性が少ないので貴重ですから姿を出してはいけません、厨房での作業をお願いします」


その蒼い瞳が、宿屋の看板をじっと見上げている。


「メイン街道は待ち伏せが多いからルートを変えてみたもののこんな店あったかな? これは嬉しい、お客は僕一人の様だし騒ぎにはならないだろう。一人で外食とかいつぶりだろうか」


チリンチリンと店の来店を伝えるベルが響いた。





いつもありがとうございます。


あらすじ更新しました。


面白く読んでもらえたらいいなと思ってますが、面白いかこれ?? と、思う事がしばしばあります。

なぜ、うまい! と直線的に書けないのか。

うまいって言えばいいじゃん、全て解決だよ。出されたものをまずいなんて言うのは、とんでもなく良くない事だよ。モラル、品性。強いては人間性に係わるからね? そうだ、言うんだ。うまいと言うんだよ。

一言、うまいと言えばいいんだ。世の中の芸人さんだって、口に入る前にうまい! って言っているじゃないか。

それでいいんだよ!! 世の中のグルメ物を踏襲するんだよ! せい、イエス。 せい、おう、でりしゃ~す。


あああああああああ! いえねぇえええよぉおおおお! ちくしょおおおおお




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ