表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/20

19 星の帰還

――


ショータ


――


窓の外には、巨大な艦影が並走していた。

帝国の巨大戦艦がラクランジュを護衛しているかのようだ。


惑星復活に協力をしてくれると、女性貴族たちが快諾してくれた。

とはいえ、無償であるはずがない。無償なわけがない。

大人になったら誰でもわかる、無償があるのは子供の時だけ。

ただほど高い物は無い、メーカーは何のために無償サンプルを提供するのか、考えればすぐわかる事だ。

とうぜん対価を要求されるだろう。

巨大な意思に目をつけられた、そんな気がしてならない。


「帝国から、そして女神様から逃げられそうですかね?

星は回復したところで、帝国と女神様イベントが回避出来る未来が見えないんですけど」


フォルティナさんが銀髪をさらりと払い、ため息をつく。


「マスター、ここまで来たら大人しくするのが吉と計算結果が出てます。

確率表記じゃなくて、吉ってのがウケますよね! もうここまできたら仕方ないです! マスターの所でいう、古代ヴァイキングに目をつけられた感じです! 捕まるか、戦うかの自由ぐらいはありそうです」


「そのヤケな感じが現実的でで、とても蛮族な選択ですね。今も昔も自由を得るには対価が必要と言う事ですか。

なんだか、近い未来そうなる気がしてきましたのでこの話題はやめましょうか」


しかし、なぜ我々に固執をするのだろうか。

見逃してくれないかな~。ちょっとスローライフがしたいだけなんだけど。

ただ日々を働いて、不安少なく過ごす。

手に入る幸せの形として十分じゃないか。


そして人生の命題を答えてくれる存在が、今日もホールで楽しそうにミラシャさん達とお喋りしている。

いわゆる黒髪の着物ゴッド。

高次元体と呼ばれる秩序の神様らしい。


「これもおいしいですわね~。星が変れば肉の味も変ると言うものです。

じゃんじゃんお願いしますわね。ステーキ100枚程、焼き方はレアでお願いします」


女神様はホールで優雅にナイフとフォークでむしゃむしゃと肉を食べ続けている。


気品を感じられるのは大変いい事だ。

食糧庫の高級食材が空にされる前に、山積みの問題を早く片付けなければいけない。

早く星に帰ろう。


「シェフ様。あの地獄の様な星に帰る事が、こんなに嬉しく待ち遠しい事はありません。

あの・・・、私たち10枚ほどで結構です・・・」


「神様相手にご相伴しなければ不作法と言う物でして、ミディアムでお願いいたします・・・」

「はい・・・。行儀よく食べさせて頂きます・・・」

「と、言いますか剣士たちが、毎日この祭り状態で過ごしていたってマジですか? 仕事も大してしていない気がする。ぶち〇さなきゃ」


まぁまぁ、いいじゃん。そういうの。労働に当たり外れがあるのは世の理。

お刺身タンポポ労働に思いを馳せるんだ。当たりの職場は必ずある。ラッキーと思って楽に過ごそうよ。

制裁の女神様は、ミラシャさん達がお気に入りらしい。


そして、青ざめるフォルティナさん。


「マスター、高級食材が底をつきそうです。

そして大和の武将のセリフを思い出します。働かない武力ほど、困る物はないそうですよ。兵糧の消費が凄いですからね」


「あっ。地球の東の果ての事に詳しいですね。

あ、なんとなく言いたい事が分かりますが事を荒立てないよう、このまま続けましょう。なぁに、星に着くまでの数日の我慢ですから」


女神様は満面の笑みでナプキンで口をフキフキ。

そして、そっと皿を差し出す。


「では、おかわりです! ロース50枚程お願いしますわね。 星獣肉の希少部位も・・・」


「シェフ様、すみません。本当においしくていくらでも食べれます。幸せで涙が出てきます」

「お手数をおかけするのが申し訳ないのでロース10枚ぐらいで全然大丈夫です」

「そうです、大変申し訳ございません。10枚で頑張ります」


ミラシャさんが、思い出したかの様に急に立ち上がる。


「どうやら、剣士たちを問い詰めなければなりません。あいつら毎日なに食って遊んでましたかね」


ハッピーエンドが見えてきたが、その後の展開が相当まずそうだ。

剣士達に休暇を与えて楽しんでもらっていた。と、言える雰囲気ではなさそうだ。

待機組はあの星で苦労していたのが、疲れた雰囲気から伺える。

このままだと帝国貴族に借りを作ってしまうし、女神様も大人しくしてくれるとは思えない。


が、『深く考えるのは、良くない。恐怖を呼び込む』 と。ピストルのスタンド使いは言っていた。

あれは名言だと思う。

とりあえず、星を治療してから考えましょうか。


「フォルティナさん、まずは星を治してからですかね」


「そうですね、マスター。どんな未来になろうとも最後の瞬間まで一緒ですよ」


聞こえたのはアンドロイドの声ではなく、心に響く肉声だった気がする。

驚き見つめ返すと、緑眼の奥には星を映したような輝き。


「マスター? どうかしましたか?」


「あれ? いえ。気のせいですか」


星に着くまでの間、魂の定義でも考えてみよう。

人より、人らしい。メイド服が趣味の緑瞳と銀の髪。


そして星の治療が始まる。


――


星に戻ると、大気圏から遠く見える太陽が揺らめいていた。

帝国貴族たちは、この恒星に活性核を撃ち込むためそのまま太陽へと向かっていった。


武士は情けを受けない、そんな言葉もあったけども。

星の人々を救うのを助けてくれると言うなら、感謝しかないなぁ。

その善意はありがたく頂戴するとして、受けた恩を返せる時に返すとしよう。


残されたキッチンカーのビーコンに導かれる様にラクランジュは進む。

暴風砂塵は収まっていたが、深い霧だけが漂っていた。


映し出される、懐かしの湖畔の映像にはみんなが待っていた。

戦士、剣士、銃の部族、そして湖畔の方々の全員。


俺は急いでラクランジュのタラップを降りた。

迎えてくれたのは、立ち行かない星の放浪者ではない。戦うもの達の顔がそこにはあった。

過酷な環境が人類を成長させると、学者が言っていたのを思い出す。


「シェフ様、おかえりっす。

この日を待ち続けて、日々、ダンジョンで鍛錬してたっすよ。

『必ず帰ってくる』 って、そう信じていました。

今なら対価を払えるっす。私たちの力を使って欲しいっす」


銃の部族。

もう、見た感じ強い。その道の戦闘のプロだと言うのが、雰囲気から感じられる。

スゴみってやつだ。


その横には、小さな祭服を着た黒髪の女の子がいた。

制裁神様と同じ様な雰囲気がする少女。


銃の部族長が続ける。


「シェフ様、我々はダンジョン、星の試練に全員到達したっす。

魂と肉体の内なる声を聞くのは本当に大変でしたが・・・、運命に打ち勝ちました」


その言葉と同時に、戦士のミラシャさんと、剣士のティアナさんたちが飛び出し、全員に抱き着く。


「「「よく待っていてくれた! おまえたち待たせたな! もう大丈夫だ! 全て報われる日が来たのだ!!!」」」


全員涙を流し、抱き合った。

歓声が輪となり広がる。


フォルティナさんも手を合わせてこちらをのぞき込む。


「マスター。ハッピーエンドとなりそうですね~。後は、この星に活性剤を撃ち込むだけ。

帝国貴族もやってくれたみたいですね、太陽から強いエネルギー反応を確認しました」


ちょうどその時――

太陽が活性化し、霧の上から黄金の光が差し込んできた。

まぶしい。子供のころ感じた事がある、あの夏の日差しの爽快感。

大人になるとげんなりするあの熱光線。


「光が! 温かい! 太陽シェフ様のご帰還でございます!」

「見える、光が! 太陽、太陽だ! 温かい・・・、本当に温かい!」

「太陽がこんなに明るいなんて! そうか、眠っていたのだ、私たちは眠っていたのだ!」


歓喜に喜ぶ星の人々、そして帝国貴族はやってくれたのだ。

無償の対価に、俺は彼女たちに応える必要がある。

もちろん、ここの星の人々にご協力を仰ぐとしよう。ダンジョンで魔石を稼いでもらう事になるだろう。


そんな中一人だけ、外に出てこない存在がいた。

制裁神様だ。

ラクランジュのドアから一歩も出ない。

どうしたのだろう、こういう人の触れ合い(物理)が好きな神様がこういう場面に来ないとは。

思慮深く気品あふれるように見えて、お祭り大好きで戦い大好きなバイキング思考の制裁神とは思えない。

今日は凄い静かだ。


「マスター、後は地核起動装置を撃ち込みます。これで星は再生するでしょう。

星の方々に最後の確認で口上をお願いしますね!」


そうか。一言何かを言わなければいけないか。

太陽が照らす中、どうしたものかと考える。

結局、全員の協力あってこその星の再生だ。


「えーとですね。まず自分は神様じゃないです。神様は今、ラクランジュの中にいます」


「あ、わらわも神じゃよ? この者達の願いでここに来たのじゃ。小雨と治水の神じゃよ、米と餅は飽きたのじゃ、甘味を奉納して欲しいのじゃ」

可愛い声の娘々髪の少女。

ダンジョンの中には、高次元体がいる言うことだったか。


「竜神様、階級と言う物があるっす。

シェフ様の邪魔になっているので、こちらへどうぞ。子供は餅でも食べてて欲しいっす」


「扱いが雑じゃの。わらわ神ぞ? そもそも毎日餅じゃ、飽きるといっておろう? お主ら武の域に到達しながら、食事は質素じゃの~。人は体が資本じゃよ」


と、手を引かれながら小さい神様はキッチンカーへ連れられていった。

まぁ、続けようか。


「ええ、自分の戦闘力は皆無ですね。スペランカァってミーム分かります? ファミコン時代の残機は価値なかったそうですよ。親父がそう言ってました。俺はスぺランより弱いですね」


全員が疑問を浮かべる。

何を言っているか分からないだろう。フォルティナさんだけは、クスッと笑っているが。


「でも最近わかった事があるんです。生きるって何かって。

この星に来る前は何となくぼんやりと毎日を生きていました。ただ一日を過ごす。 『このまま人生が終わっていくのだろうか?』 と、どこかに焦りを感じながら。

こっちに来て気づきました。人はなぜ、助け、争い、祈り、食を得てなぜ安寧を求めるのか。

全ては、明日を生きたいと言う心からくるものじゃないかって。

さぁ、明日を暮らしましょう。エレガントそしてプリミティブ(原始的)に。

きっと明日からもっと忙しいと思います、それはとっても十分な事ではありませんか?」


沈黙が流れる。

滑ったかな? 誇張無しの等身大のセリフだったけども。


「マスター、やさしいセリフですね。何となくぼんやりとしていますが、その定義に私も救われました。明日を生きる。そうですね、アンドロイドもその定義で生きています」


フォルティナさんが胸に手を当て目をつぶる。

このまま歓声が沸くと思いきや、全員が胸に手を当てかしずいた。


太陽が照らす、この星で。


――


「マスター。準備オッケーです。トリガーを引いて下さい。」


トリガーを引くとラクランジュの艦腹から光線が大地へ突き刺さる。

地核を揺らしながら、活性核は到達した。

大地がゆれ、星が眠りから覚める。


ズドン! ど跳ね上がるような衝撃。

遠くの山が赤く光り炎柱が立ち上る。

人々は、噴火を神の怒りと表現したか、個人ではどうしようもないパワー。


「マスター、地核の脈動が正常値へと戻って行きます。

成功です。さて、明日からが忙しくなりますよ。キッチンカーも頑張ってくれました、もう高級食材は残っておりませんが、今日は記念日です。お祭りしましょう!」


そんなまさかと思い、ホログラムを操作し在庫ログを確認すると確かに綺麗になくなっている。

あるもので頑張りましょうか。


ラクランジュの外には前に次々と人が集まり、祈り始めていた。


「さて、記念日ですか。腕を振るってみますかね。さて、プリミティブに明日から働くとして・・・、帝国へ出稼ぎもしなければなりませんし」


「了解です、マスター。お祭りですね!」


――


太陽を活性化させてもらった帝国貴族に 「心ばかりのお礼ですが、星に寄ってください。今後の事と、感謝を気持ちを述べさせて頂きたい」 と、メッセージを送る。


刹那の返信で閣下と3姉妹と呼ばれる方から 「最速でいきます」 「今向かいます」 「じっくりと今後の事を語り合いましょう」 「はい、旦那様」 と返答があった。


とっても話が早くて助かる。

来て頂いたら、今後のお話をまとめなければならないな。


そして、フォルティナさんが祭り用メニューを提案してくれた。

さすが、メイドロイド。


「マスター、高級食材ありました。 惑星マリオールのすーぱぁキノコ、惑星リンクのハートの器の実、惑星岩男のエネルギー缶は、ラクランジュ用ですね! ヨガのフレイムもありますのでBBQなんていかがでしょうか」


「あれ食いもんやったんか。いや鑑賞用だよ、観賞用。

数多の星があろうとも、そんなスーファミっぽい惑星ある? 冗談ですよね、メタすぎますって。本当にあったら永住したいんだけど、これから忙しそうで現世では無理そうですね。

それとヨガはいらないですけど、バーベキューいいですね。会社のバーベキューは最悪ですけど、ここなら最高に楽しめそうですか」


だとしたら、決まりだ。


「よし、バーベキューにしましょう」


「マスター、承知致しました。キノコは巨大化するのでやめておきますね。

では、大量に肉を用意するだけで後は、タレだけあればキャンプファイヤーで上手に彼女達は焼くと思います。お祭りです大量に焼きましょうか!」


「了解! では、じゃんじゃん運んで行ってもらいましょう」


――


「肉持っていきます!」 「肉持っていきますね!」 「あ、あの野菜はございませんか・・・。いえ、肉もっていきます!」


ガンガンと肉が排出され湖に焚かれた業火の周りでマシュマロの様に肉がフランベされている。

惑星版、キャンプファイヤーだ。

かつて我々の祖先も踊り、焼き、肉を食していたのだろう。火の光はいまだ遺伝子の奥底に焼き付いていると思う。


そんな祭りが始まろうとしている中、ラクランジュのロビーの隅で制裁神様がピタッと柱に張り付いていた。

力の化身とは思えない行動だ。


「制裁神様、お祭りですよ。出ないんですか? 力試しもあると思いますよ、制裁神様の仕切りでやって頂いても全然かまいません。彼女たちは喜ぶでしょう」


ハッと胸を押さえる制裁神様。

ゆらりと、着物が揺れる。


「出たいですわよ! ええ、めちゃくちゃ出たいですわ。力試しをしていいんですの!? 

お肉も山の様に食べたいですし、太古の祭りは大好きですわ!」


「えっ、ではなぜ? 俺としては制裁神様に忖度をしてもらえればと、もてなしたい気持ちであふれているのですが。制裁神様の機嫌よくしてもらい、そのまま俺を見逃して頂ければ」


「正直ですわね?

エントロピーの元は取れたから、無理にショータさんを連れて行かなくてもいいのですけれど・・・。

私は秩序の担当、神々の怠慢や不正、現世干渉を取り締まるお仕事です。あっ、ショータさんの転生はイレギュラーなので、緊急に私が担当しました」


「ですよね」


「しかし!! ひざびさに現世におりて、調子に乗ってしまいました。

私自身が、転生者に肩入れし、現世のスローライフを満喫してしまいました」


「それって、だめなんですか?」


「普段、干渉する神々をボコしてる側なので、マズイですわね。

まさか・・・、竜神が来ているとは。ばれたら、神々に言いふらされて言葉の槍で神々から 『おまえ、何やってんの?』 と、言われる事間違いありませんわね、論争で間違いなく負けます」


「なるほど。力で勝てるなら、大丈夫じゃないんですか?

誰にも言わないんで上手く切り抜けたら、俺を見逃してもらえますかね」


「ほほう、ショータさん。成長しましたわね。

戦士達と来世の約束もしましたし。ここを離れるのはおしいです。

いいですわ、では切り抜けてもらいましょう。

それと竜神は、もう気づいています。証拠を取られる前に、私にすり身にされることを恐れて様子を見ているのでしょう」


おお、懐にはいれば邪見にはされないものだ。

この銀河で暮らして良いって言ってもらえた。




いつもありがとうございます。

帯状疱疹にかかり地獄をみてました。


自分なりの発見ですが、読んでくれる人が居ればいいかなと取り組むより。

自分こそランキングに乗ってしかるべしと思う、強欲と横暴さが必要みたいです。

いい感じに上達したところでお話は、終わりに向かいます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ