18 星間晩餐会
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ショータ
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「「「高位次元体の出現だと!?」」」
「さぁ、戦士たち。最高のフィナーレといきましょうか」
「「「シェフ様を守れぇええええええ」」」
ジャングルの空気が震える。
帝国のロボが陽光を反射し、圧倒的な威厳を放つ。
目の前では、女神様から光輪が広がりミラシャさんのビームソードが光り輝く。
そしてロボのブースト音が鳴り響く、決着は近い。
緊迫した空気を裂くよりも速く、フォルティナさんが叫ぶ。
「いやいやいや! 落ち着きましょう! ドンパチと戦う所じゃないですよ!
ここは戦場ではありませんし。マスター、目的は星の帰還で帝国の賞金首になる事ではないはずです。ミラシャさんと高位次元体の制裁神様がいらっしゃるだけで、戦力的に話し合えると思います。つまり、和平を望みます!」
そうだった。
女神様が味方になってくれたので、ついつい勝てそうだなと思ってしまった。
「みなさま、落ち着きましょう! ここで殴り合っても星は救えない。血は眠りません、流れた血は新たな血を求め戦うと言う事ですね。ロボのお三方、出来たら話し合いを求めます」
「マスター、古代マケドニアの名言か何かですね。比喩としては分かりにくいと思います。 みなさま! 戦闘隊形を解除して武器を降ろして下さい! まずは話し合いを!」
女神様が眉をひそめると、光輪が消え。ミラシャさんの剣が引かれる。
戦場の空気が少しやわらいだ。
フォルティナさんが浮き出たパネルを操作すると、ラクランジュの擬態が解かれ、いつものレストラン風の入り口へと変貌した。
ロボたちの胸部装甲がプシュウと音を立てて開く。
現れたのは3人の少女のようなパイロットたち。銀箔の制服に金の刺繍、身分が高い事をしめしていた。
「高位次元体を呼び寄せるとは、想定外でしたね。私たちとしましては最終的に帝国に来てくれれば問題ありません。しかし黒髪の男性とは幻覚ではありませんのね」
「宇宙騎士帝国近衛所属、フロスト・トライアングル。レイリア、ヴァン、フロスト三姉妹だ。任務はあなたの身柄の確保、もちろん優しく保護いたしますぞ」
「保護致しますわね。保護。陛下と宰相もその艦ごと保護してこいとの仰せです。優しくそして情熱的に保護致しますわね」
金髪ロングで快活そうな2人と銀髪が一人。
宇宙に出ても出会いを求める、ギャラクティカ肉食。
男女比同等の地球ってめぐまれていたんだねぇ。
「マスター、こういう時こそラクランジュが得意な外交の 「接待スキル」 の出番ですよ!」
俺は静かに頷く。
頭を下げて一歩前にでる。
「これはこれは、ご挨拶をどうも。落ち着いてお話をしましょう。まずは中に入って頂き、ご説明を致せたらと思います。まずは食事でもしながら、今後の事を決めましょうか」
貴族パイロットたちが顔を見合わせ、緊張が解けたのか笑みが浮かんでいる。
「「「お食事のお誘い、お受けいたしましょう」」」
そして、俺はみなをねぎらう。
なんとか話し合いに持ち込めそうだ。
「みんなもいいかな。それと、ここまでの長旅ありがとうございます。まずは旅の疲れを癒し、おいしい食事でもしながら話をしましょう」
みなに安堵が訪れる。
その反面俺は願う。マジに暴れるなよ、暴れるな。と。
フォルティナさんも安心した様に 「ようこそ! 星海レストラン 『ラクランジュ』 へ! この一歩こそが銀河平和の第一歩です!」
その言葉を合図に、ミラシャさんといつもの3人。いつのまにかティアナさんと3人、そして帝国3娘が入っていった。
黒髪の女神様が肩をすくめる。
「えっ、戦わないんですか? ロボと戦闘なんて中々見れる物ではないのですが・・・、まぁ、いいでしょう」
「所で女神様の用心棒代はいくらになるのでしょう」
「星一つと言いたい所ですが、そうですね。おいしいものを大量にお願いしますね」
ラクランジュのネオンがほのかに光を放つ。
――
厨房から見える店内。
帝国貴族3人娘は優雅にナプキンをブラウスの中に入れ、ニコニコと話している。
一方でミラシャさんとティアナさんは姿勢を正し、これまでの現状を説明していた。
「星は限界で、砂塵は濃くなり、巨人は進化しています――
そこに現れて下さったのが、シェフ様なのです」
俺が語るよりも本人たちからこの状況を聞いた方がいいだろう。
いかに星がやばいか、絶望が渦巻く世界でどういう風にラクランジュと一緒に過ごしてきたか。
教養ある人間なら、同情してくれると思う。
「ズゾゾゾゾゾ。
ん~。このスープ無限に飲めますわね。クオリティが高いですね、これなら料理も期待できるというものです」
そして黒髪の女神様はスープの寸胴鍋を引っ張り出して、無限おかわりをしている。
食べ放題に来た運動部グループの様子、いわゆる食べ放題店の天敵である。
飲み干される前に、次を出していかなければならない。
荒神様のご機嫌取りは、地球で言う所の酒樽7つでもてなしてからのヤマタノオロチの討伐実績があったはず。
「それでは、コース料理の開幕です! 補給後ですから、不足はありません。盛大にもてなしていきましょう」
と、フォルティナさんが台の上で手を叩きながら配膳の準備を進めている。
だが、ホログラムの管理タグに高級食材シリーズが増えている。
希少星獣の肉+10、帝国禁輸スパイス+10、超高級魚卵や高級星野菜シリーズなど。
フォルティナさんは原価をご存じか、店頭価格はとんでもない金額になるぞ。
しかし、ここでケチってはいけない。金額など気にしてられるか、誠意をみせるんだよ誠意を。
帝国の貴族、ミラシャさん。そして女神様とも今後を話し合わなければならないのだ。
「よし、やりますか。フォルティナさん、星の高級食材でもてなしましょう」
「マスター、コース配膳はお任せください。メイドロイドの得意な仕事の一つです」
そうね、そう。
理想の仕事分担である。次から仕入れは二人で行きましょうね。
高い食材を反射的にポチッと購入するより一度手を止めて考えてくれると嬉しいな。
ネットの買い物の基本だとおもうけども。
そして完璧な造形の手からスッと出されたコース表。
【前菜:惑星シド産の光子サラダ】
このシヴィの星は、実在世界だった・・・?
人類は生命の海で生まれて、今どの辺まできているのだろう。
大いなる旅路が今始まりそう。
【スープ:惑星ぐらでぃうす産のコアエネルギー・ブイヨン】
これも知ってる。緑あふれ青い星。激戦の末、紙飛行機の防衛が成功したのだろう。
一体、どれくらい巻き戻しバクテリアンを撃退したのか。
【魚料理:惑星ぜぃべす産のムニエル】
これは・・・?
フュージョンスーツの女性により破壊されてなかったと言う事か。
あそこの魚は食べ応えがありそうだ。
生産地の衝撃に思わずコース表から目を話す。
「フォルティナさん。これゲームの星? いや? 実際にあった話を地球人がゲーム化してたのでは?! そうだよ、やっぱり地球に来てたんだ! そうでしょ?!」
「いいえ、マスター。ファンタジー惑星ラグオルは存在しません。セガァはもうゲームやめたはずです。さぁ、コース料理をお願いします!」
パチンとウィンクされる。
そうか、ラグオルは無いのか。入植後に事故る未来もここにはない。
まぁ、やりますか。
――
「サム〇さんが駆逐した後の、平和な惑星ゼェベスで養殖された個体です」
フォルティナさんがコースの魚料理の説明をしている。
確かに、今出した魚の体表には微弱な電流が流れて、虹色に光っていた。
あぁ~^ ホールから流れるめちゃくちゃ気になる料理の説明。
あ~、厨房で作成している場合じゃない。その説明を受けたいんだけども。
だが、料理は待ってくれない。
そんな暇もなく、メインの肉料理が完成し銀の蓋をかぶせる。
これは普通のステーキのハズ。 そう書いてあったはず。
項目の名前を信じるしかない。
「肉料理出来ました、宜しくお願いします~」 とホログラムのフォルティナさんに話しかけると 「承知致しました~」 と帰って来た。
コースも残すところデザートのみ。
デザートを仕上げたら、ホールでお話を始めようか。
星を直してその後、無事に商売をできたらいいな。
最後に出すのは、星砂ミルフィーユ。
砂糖が星の形に煌めき表面はパリッ、中はフンワリ。
ミルフィーユの基礎を押さえつつ、未来的な演出、シロップが天の川の様に流れる。
さて、これで〆にしましょう。
星で待っている人たちを見捨てては置けない。
せっかく転生したんだ。おとぎ話の英雄の様に救ったっていいじゃないか。
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フォルティナ・ギンレイ
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会話に花が咲き、好評のままデザートに入ります。
マスターがホールに足を踏み入れた瞬間、私のメモリは熱を上げました。
配膳ロボが運ぶ星砂ミルフィーユより、黒髪のマスターがきらめいて見えます。
この会食の場に誰よりもふさわしいような。そんな気がするのです。
帝国の3人娘も、ミラシャさんたちも、制裁神様も視線を向ける中、マスターが一礼する。
私と一緒に皿を並べていきます。
「ラクランジュのおもてなしはいかがでしたでしょうか。さて・・・、皆様に話したいことがあります」
マスターが口を開いた瞬間、空気が変った。
帝国3姉妹は深く息を吸い込み姿勢を正し、ミラシャさんティアナさんは感極まったかの様に、胸に手を添える。
制裁神様は、まだスープの寸胴鍋を抱えていた。
えぇ、コース料理の量では足りませんでしたか。
お皿にお洒落にチョコンと乗せて数で量を補っておりますので。
後で好きなだけ食べてください、最凶最高の用心棒ですから。
そして、マスターの優しく疲れた様な声。
「俺は、みんなと違う世界から来ました。
魂の座、みたいな所で目の前の女神様にお世話になりました。
異世界でも困ることが無いように女神様は鍛えてくれると言ってくれましたが、ちょっとばかり合わない気がしまして・・・、女神様にゲートを開いてもらいましてこの銀河に降り立つこととなりました」
制裁神様は、軽く手を振ります。
「はいはい、そうですわね。ショータさんには合わなかったかもしれません。
ですが現に力があれば、今、異世界でこの様な事にならずに己の道を突き通せたと思いません? 力なき正義に絶望するより、必要なのはわがままを突き通す力ですわ」
ミラシャさんは拳を震わせ、ティアナさんは頷いた。
突き通す力ですか。
力にもいろいろあるかと思います、現にマスターが星を救うような和を保つ能力も力の一つだと私は思います。
「女神様は、いまだに戦いを求めていると思います。でも、俺は戦いに来たんじゃない。
そう、転生しても変りたくない事がある。人を踏みにじってまで戦う事が好きじゃない。
そして女神様気づいたのです。望むのは、身の丈にあった幸せ。困っている人が居たら助け、助けられる。
ミラシャさんたちとも出会い、決死の覚悟で戦い助けられ。
そして助けたつもりでいます」
ホールから喧騒が消え、星の戦士と剣士が首を深く垂れていきます。
「「「シェフ様・・・」」」
マスターは笑い照れながら誇らしげだ。
「フォルティナさんにも助けられました。
この船が破損した時も、星に不時着した時も。みんなのおかげでここまでこれたと思います」
胸部ユニットが熱を帯びる感覚に襲われる。
とても嬉しい、幸福な誤作動だと感じる。
「助けられたものだけに分かる、このやさしさッ・・・!
あの日、あなた達が来なければ、あの星は終わっていました」
ミラシャさん、そして星のみなさんが泣いていた。
泣く理由がわかりました。ですが私には決してできない事です。
大先輩の800型アンドロイドの名セリフが胸にしみます。
「感動ストーリーもいいですわね! で、ここの貴族の3人を捕まえて人質とかどうです? ロボから降りれば塵芥に等しい。このまま拉致して星に連れていきましょう?」
とんでもない厄神様です。原理主義な神様ですね。
高位次元に住むと言われる存在、どんな世紀末的な暮らしをしているのでしょうか。
マスターは静かに首をふり、帝国3姉妹に頭を下げる。
「お願いがあります。俺たちは星に戻らないといけないのです。
破滅する星を、応急処置でも救いたいんです。
でも、貴方達が言うように、たぶん、おそらく。いえ、あの。考えないようにしてましたが、たぶんダメだと思います。何かの罪に当たる事をしてきていると思います。いや、おそらく。
どうか少しの間、時間を下さいませんか。
必ず星を救った後、そちらにお伺いします。必ずです」
3姉妹はハッと息を呑み涙を伝わせながら
「ど、どど、どうじでぇ、ここでその申し出を断れましょうか。
銀河の法よりあなたの心が優先されるべきですわ!」
「ぐすん・・・。必ず帝国に来るとお約束されますなら、恒星も活性化を手伝いますぞ」
「なんという大きな愛、恋より愛を感じますわね。協力致します。
星がなんとかなりましたら、私たちの所領で少しばかり営業して頂けませんか? これなら滞在中も暮らせていけると思いますわ」
もちろん、マスターの返事は
「約束します」
ホールの空気が柔らかに揺れる。
戦士たちの威厳も、制裁神様の戦いの衝動すらも調和へと導いていく。
あぁ、はやりこの人が中心です。
さぁ、戻りましょうか始まりの星へ――
いつもありがとうございます。
ラストに向けてお付き合い頂けると嬉しいです。




