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エリコの方舟  作者: 塚原春海
第五部
54/57

(54)暗殺者

 アトランティス島中央地下、約三〇〇メートルの深さにある管理中枢センターは、あたかもニニ世紀現在の最新データセンターのような、ライムグリーンの幾何学的な光が無数に走る、地上の古風な街並みとは正反対の機械的空間だった。最奥部にあるアトランティス島のエネルギーを管理するメインコンピューターが、このエクストラステージのゴールだった。

 地下深くに続く螺旋状の通路を、警備ロボットの妨害をかい潜りながら、レンレンとクリシュナはスケボーで駆け抜けた。

「非常に残念だな。よく作り込まれてはいるが、実際に存在したアトランティスの管理中枢とは、似ても似つかない」

 クリシュナの、いかにも残念そうな口調にレンレンは眉をひそめた。

「さっきから何のジョークだ。まるで、本物のアトランティスを見たことがあるような口ぶりだな。方舟ってのは、勉強に飽きて妄想を書き散らす中学生と同類か」

「何を言っているんだろうね。君だっていたじゃないか、あの偉大な国に」

「わけのわからない会話はいい。どうせ、まともに話をする気はないだろう!」

 レンレンはコース前方左の壁からせり出した四角い機械に、クリシュナを押し付けるようにラインを取った。だがクリシュナはそれを読み取って、一瞬早くオーリーを決め、機械を華麗に飛び越える。そのアクションのために消費したわずかな時間によって、クリシュナが少しだけ後退した。

「油断も隙もないな」

「体当たりの妨害以外は、全てルールの範囲内だ」

「ゲーマーの常套句だね! だが、これが人間の国家間の戦争ならどうだろう? ルール無用、それがルールだ。ゆうべ約束した休戦協定は、朝食のパンを焼く前に破られるものだ!」

 クリシュナは、レンレンの操作キャラに接近する素振りを見せた。レンレンは警戒したが、クリシュナが妨害行動を起こす事はなかった。

「楽しいな! そうじゃないか? 僕らの世界では、こんなふうに勝敗を決するゲームは存在しなかった。なぜなら、勝ち負けの概念がないからだ」

「それはまた、楽園のような世界だな。なら、今ここであたしがもう一度、負けるってことを教えてやる」

「構わないとも! 世界に、勝敗などというものは存在しないが、それを体験する事はできる。勝つ事も負ける事も、その楽しさも悔しさも、この現実世界という名の幻想のもとでしか、体験できないものだ!」

 クリシュナは、ほとんど直角のコーナーのインをギリギリのラインで取り、レンレンからほんの僅かなリードを取り戻す。だが、レンレンがアウト側を選んだのは、次のコーナーでインを取るためだった。

 ほんの数秒の間に互いがリードを奪い合う、凄まじいレースにオーディエンスは沸き立った。もう、ゴールまで二〇〇メートルを切り、地下から地上へと突き抜けるようにそびえる、プリズムのラインが走るコントロールタワーが姿を現した。


 残る障害物は床面のわずかな凹凸のみとなり、レンレンもクリシュナも、無言で限界のラインを読み取ることに集中した。

 三〇〇メートルの高さの空間を持つ、アトランティス島エネルギーコントロール中枢ルームに両者がゴールした時、およそ世界中のプレーヤーが見たことのない判定が表示された。


『判定不能』


 レース結果を表示する画面は、両者のゴールタイム差がゼロコンマ一六桁よりも小さな、測定限界以下の数値であることを告げていた。アルファベット順でクリシュナのプレイヤー名が上に表示されただけで、扱いは同着だった。ちなみにこの時、アトランティスステージのコースレコードは〇・二三秒更新される事になる。

 瞬く間にネットワーク上では、このレース記録が「伝説のレース」として、記録・複製されて世界中に拡散することになる。レンレンは、いかにも不完全燃焼という気分でハッカ味のドリンクをあおった。これだけ全力でやって、決着が着かないなんて話があるか。負けなら負けで、白黒ついた方がすっきりする。横で通信端末のディスプレイを睨むリネットは、ちらりとレース結果を見やると、ゲームに異様な心血を注ぐ一〇代の少年に怪訝そうな視線を送った。


 立体スクリーン上では、コースレコードを更新した時にだけ見られるスペシャルムービー『アトランティスの崩壊』の、恐ろしくも大迫力の映像が展開されていた。島中央のエネルギー中枢、ツーオイ石が暴走し、そこからエネルギーを遠隔供給されていた島や無数の船舶、航空機がコントロールを失って爆発、沈没してゆく。さらにそれは島北部の火山の噴火を誘発させ、七重のリング状の巨大な帝国は、炎と轟音を立てて大海の底へと沈んでいった。

「これは『史実』と較べてどうなんだ」

 半笑いでレンレンは訊ねた。皮肉を込めたつもりだったが、クリシュナの反応は少しばかり予想と異なっていた。

「崩壊の仕方なんて、どうだっていい。重要なのは、アトランティスが滅びた、その原因だ」

「エネルギー中枢が、コントロールを失ったからだろう?」

「その、失った原因は何だと思う?」

 それまでの、人をくったような態度はなりを潜め、レンレンは返答に戸惑った。スクリーンはやがてムービーが終わり、レースモードから好きなフィールドを自由に走るフリーモードに切り替わる。クリシュナの操る赤い髪のスケーターは、何事もなかったかのように元に戻った、アトランティス島の市街地を走り出した。仕方ないので、レンレンもついて行く。


 ゲーム内のアトランティス島は、古代ギリシャ風の石造りの空間でありながら、現代のホバービークルのような移動機械や、ほとんど異星人の宇宙船じみたデザインの、大小さまざまな航空機や船舶が動く世界だった。色々パターンはあっても、「超古代に現代を超える文明が存在した」という、古典的なSFお定まりのイメージから逸脱してはいない。

「このステージはゲームのリリース年から遡ること、一一八二八年前の時代という設定になっている。紀元前九七三〇年頃だね」

「もっともらしい、ずいぶん細かな設定だが、まあ当てずっぽうだな」

「そのとおりだ、正しくない。アトランティスが滅亡したのは正確には、紀元前一〇五九〇年前。今から一二六八八年前の、八月二五日だ」

 あまりにも淡々と、先月のカレンダーでも確認したかのように日付を言われると、レンレンは笑う事もできず、脱力するしかなかった。

「そこらの雑貨店か何かが潰れた、みたいななノリで断言されてもな」

「暇があったら調べてみるといい。ところで残念だが、そろそろゲームをしていられる時間もなくなってきたようだ」

 クリシュナが、心底残念そうにため息を吐いた。何かしら情報を引き出そうと考えていたレンレンは、どうにか引き留めることを試みた。

「待て! お前は本当に、エリコの行方を知らないのか?」

「行方は知っている。しかし、会う方法は僕にも、誰にもわからない。知っているのはエリコだけだ」

「どういう意味だ!? エリコはどこにいる!」

「答える事はできない。だが、これから海の上で起こる事に注意したまえ。いや、もう起きているかも知れないな」

 レンレンとリネットは、目を見合わせて同じことを考えた。海の上。それは間違いなく、南米連合と南パシフィックとの、海戦を指しているはずだ。クリシュナは、また元の人をくったような口調に戻って言った。

「人を救えるはずのエネルギーを戦争に費やしておいて、なぜ我々の世界は荒廃するのだろうかと訝るのが、彼ら人類だ。もっともっと高みに登れる可能性を、何度も自ら放り捨てて、そのたびに原始人からやり直す。まあ、それも神が与えたもうた自由意志だがね」

「待て、クリシュナ!」

「レンレン、こんなに楽しい対戦は初めてだった。いつかまた、機会があれば再戦しよう」

 それだけ言うと、クリシュナは通信を切ってしまった。レンレンはコントローラーを床に叩きつけようとしかけて、思いとどまりながらリネットを見た。

「こいつは、海で遭った時もこんな調子だったのか」

「まあ、そうね。思わせぶり、意味深、ケレン味たっぷりの冗長な会話に終始してた。意味があるんだか、ないんだか」

 わざとらしく肩をすくめるリネットに、レンレンはクリシュナの言葉を思い出して警戒の視線を向けた。

「あいつは、海の上で起こることに注意しろと言った。いま、戦況はどうなってる」

「ネットワークの情報だけじゃ、何ともね。海の彼方が戦時じゃ、マスコミもおいそれとは近付けない」

「あの男、いったい何を知っているんだ」

 稼働しっぱなしだった黒い円筒状のゲーム機をシャットダウンしながら、レンレンは立体映像が消えたコンクリートの空間を睨んだ。

「ひとつだけ……確証はないが、どうやらわかった事がある。エリコは少なくとも、死んだわけではないらしい」

「どこまで信用していいものかしらね」

「乗せられてやる以外に、選択肢はなさそうだ。どのみち、こっちは何も知らない」

 レンレンが、フェンリルの人員に連絡を取ろうとした時だった。ヘッドセットに、向こうから連絡が飛んできた。

「レンレン! 無事か!?」

 それは、年配の兄貴分の一人だった。レンレンはブラスターを構え、即座に臨戦態勢を取る。

「無事だ。どうした」

「大変な事になった」

 兄貴分の声は重い。だが、切迫よりは困惑の色が強く、通信を飛ばす余裕があるらしい事もレンレンはすぐに理解した。

「どうした」

「市内に展開していた陸軍部隊が、何者かによって次々と殺害されている。現在まで、すでに三四名。階級の上下は無差別にだ」

「なんだって!?」

 レンレンは、リネットもヘッドセットを装着していることを確認すると、つとめて冷静に訊ね返した。

「市民の反抗か?」

「違う。民間人は、軍が怖くてほとんど出歩いていない」

「まさか、フェンリルの構成員の仕業か?」

 レンレンは最悪の想像に背筋が寒くなったが、すぐにそれは訂正された。

「違う。俺たちは陸軍と、半ば睨み合いの状況だ。互いの動きは、おおむね察知している」

「だが、市街地でブラスターなり何なりをぶっ放せば、すぐにそれと気付かれるだろう。なぜ、だれがやったかわからないんだ」

「そうじゃない、レンレン」

 その声色から、歴戦の海賊が明らかに困惑し、また不安を隠せないでいるのがわかった。レンレンとリネットは、黙って説明の続きを待った。

「これまで死亡した陸軍兵士の死因は全て、喉を鋭利な刃物で切られたことによる。それも、死に至らしめるのに最小限の労力で、頸動脈を切断しているんだ」

「暗殺ってことか!?」

 さすがに、その情報には戦慄を禁じ得なかった。一人二人の人間が暗殺死体で発見された事は、稀ではあっても過去に例がある。だが、数十名の兵士が、白昼に誰にも悟られることなく、短時間に暗殺されるなど、明らかに常軌を逸している。

「暗殺のプロ集団が、このバリクパパンに入り込んだということか!?」

「現状では、そう理解せざるを得ない。うちの組織にだって、こんな鮮やかな手並みで殺れる奴は、数えるほどしかいない」

「そんな連中、いったいどこから……しかも、目的は何だ!?」

「わからん。緊急事態なので、先に本部には連絡した。フェンリルは、市民の安全を最優先で行動せよ、との事だ」

 それはつまり、陸軍部隊は放っておけ、という意味でもあった。レンレンは、急速に自身に課せられた責務の重さを実感して、かすかに肩を震わせた。

「あたしの任務はそのままなのか」

「お前は俺達を率いる。それは変わらない。どう動けばいい、レンレン」

「今から、あんたに代わってもらう事はできないんだろうな」

 それは冗談が二割、本音が八割というところだった。兄貴分の答えは明快であり、レンレンには冷徹にも聞こえた。

「今、俺達を取り巻く状況には、『普通ではない何か』が関わっているんだろう? それが何なのかは、俺にはわからないが。その状況で、何が起きてるか把握できる奴が司令塔にいなくては困る」

「……わかった」

 レンレンは形のいい指先で眉間をつまんで少考すると、自分が指揮する構成員全員に回線を開いた。

「レンレンだ。陸軍兵士の件は確認した。よく聞いてくれ。あたしが持ってる『手品』のことは、みんなも知っていると思う」

 それはレンレンの、相手の神経に作用する超能力を指していた。アンダルはじめフェンリル構成員の一部はすでに、そのことを知っている。

「もう明確にしておくが、あたし達の『敵』側にも、あたしのような意味不明の能力を持った奴がいる可能性は高い。それがどういう能力なのかは不明だが、いま起きている暗殺事件に、それが関わっている事もあり得る」

 すると、一人の若い構成員から質問が飛んできた。

「見分ける方法はありますか。そんな、特殊な相手を」

「外見的にはない。あたしが、まあ少しばかり女の子っぽい以外は、そこらにいるホモ・サピエンスと区別がつかないのと同じだ」

 それがジョークなのかどうか判断がつかないため、笑いを返す者はいなかった。

「問題なのは、相手が超能力者かどうかじゃない。常軌を逸した手段で、何らかの目的を達成しようとしている連中がいる、その事実だ。逃げられる時は逃げろ。そして、仲間や一般市民を守るためなら」

「”自分の命は後回しにしろ。命を捨てると覚悟した、仲間の意志も尊重しろ”」

 全員が一斉に『何条目かのフェンリルの掟』を返したので、レンレンは苦笑するしかなかった。

「そういうことだ」

「それで、当面はどう動くべきだと思う?」

 改めて兄貴分が質問してきたので、レンレンは再び状況を頭の中で整理した。

「まず、その陸軍兵士たちを殺害したのが誰なのか、把握するのが先だ」

「といっても、該当しそうな集団は心当たりがないぞ。フェンリルの縄張りだ、たとえ黒旗海賊だって簡単には入り込めない」

「そうなると、民間人を偽って侵入してきた何者か、という可能性も……」

 そこまで言って、レンレンとリネットは蒼白になって目を見合わせた。

「レンレン」

「ああ。間違いない」

 二人はリネットの携帯端末に表示された、ほんの少し前に報道された小さなニュースを改めて確認した。オーストラリア大陸から来た観光客船が、軍事情勢のために港に足止めをくらい、二〇〇人ほどの乗客が文句を言って船を降りた、という記事だ。


 この船を降りた二〇〇人の中に、暗殺チームが紛れ込んでいたら? それ以外は考えられない、とレンレンは結論づけた。観光客を装っていれば、フェンリルにも怪しまれない。

「そうなると、問題はそいつらの目的だ。あのノアという女は、自分が助かる目的でエリコに接触してきたが、本来はおそらく、背後にある組織の命令で動いていたはずだ」

「タラカン島で死んでいた、首にバレッタを埋め込まれていた男と同じ組織?」

「おそらくな。想像を飛躍させるなら、陸軍兵士たちを殺害した何者かも、ノア達の背後にいる何者かの指令で動いている可能性は高い」

「だとすると、またバレッタを埋め込まれた連中が現れた可能性もあるわね」

 リネットの指摘に、レンレンは背筋を強張らせた。あの、脳に直結された奇怪な装置は、これまでの情報を総合すると、人間に何らかの能力向上をもたらす装置と見て間違いない。それを考慮にいれると、陸軍兵士が容易く暗殺されてしまった事も説明がつくのだ。

 レンレンは、改めてフェンリル構成員たちに命じた。

「その暗殺チームは、観光客を装っている可能性が高い。市民に被害が出ないとも限らない、注意してくれ」

「さっき話してた、船から降りた乗客のリストを洗ってみるか?」

 一人の、神経質そうな声色の若衆が申し出た。レンレンは二、三考えたのち、付け加えて指示を出した。

「頼む。ついでに、そのデータを本部に送って、調べてもらってくれ。その中に収監中の犯罪者だとか、社会的にペナルティを背負った人間がいないか」

「わかった」

「それと申し訳ないが、エリコ・シュレーディンガーの行方も、継続して追ってほしい。あたしとリネットも、廃デパート周辺を警戒する」

「了解」「了解」

 

 普段はエリコが乗っている、青い改造ホバーバイクの後部座席にレンレンが乗り込むと、キャノピーが閉じられてイオンエンジンの甲高い始動音が唸った。これが、南太平洋の孤島からずっとエリコが見てきた光景か、とレンレンは思った。

「よくトランクにロケットランチャーが収まったな」

「中の荷物は全部出したけどね。それで、どう動くのかしら、司令塔さん」

 リネットの軍人らしく歯切れの良い声が、クリスタルモールドのキャノピー内に反響する。

「まずデパート裏側の、旧商店街跡地を見て回ろう。あそこは以前は半スラム化していたが、老朽化した建物の倒壊が進んでいて、今は浮浪者も住み着かない廃虚だ」

「身を隠すにはもってこい、ってわけね」

「ブロックの下敷きになるのが怖くなけりゃあな」

 それなりに二人の息も合ってきたところで、キャノピーの外を流れる市街地を眺めながら、リネットはネットワークから流れる陸軍のオールド大将の発表を聞いていた。

「本日、我々陸軍に対する挑戦的なテロ行為が何者かによって行われた! 勇敢なる兵士三四名が、その凶刃の標的となってしまった。私は彼らに哀悼の意を示すものである!」

 相変わらず、絵に描いたような軍人のオールド氏は、続けて驚くべき発表を行った。

「これはテロリストが、バリクパパン市内に潜伏しているという証拠である。よって我々陸軍は、超法規的権限をもって、民間の施設や住居に立ち入り捜査を行うこととする! 拒否した場合は反逆的行為と見なし、それ相応の処罰、逮捕勾留も辞さないことを理解していただきたい!」

 その剣幕と通告の内容に、レンレンもリネットも、呆れて数秒間、言葉が出なかった。

「ゲシュタポの亡霊にでも取り憑かれたのかしら」

「軍隊が警察の権限を掌握したら、もう民主主義とやらも単なる冗談だ」

「それにしても、こんな騒ぎを起こして軍を焚きつけて、いったい何のメリットがあるの? 動きにくくなるだけじゃないかしら」

 リネットの指摘に、レンレンもそのとおりだと頷いた。陸軍を刺激すれば、市内での活動はしにくくなる。だがそこで、レンレンは急速に悪寒が走るのを覚えた。

「……待てよ」

 レンレンは、エリコがいたらと心でぼやきながら、現状を頭の中で整理し、展開してみた。

 いま、市内は大規模な騒乱などは起きていないが、極度の緊張状態にある。市民の激発を抑えるために、フェンリル団員も総出で治安維持に当たっている。その状況で一箇所だけ、必然的に手薄になる場所がある。

「……大変だ」

 レンレンは血の気が失せた顔で、ヘッドセットのボタンを押して叫んだ。

「レンレンだ! さっきの指示を撤回する! 総員、フェンリル本部に戻れ!」

 無線を通じて、構成員たちに戦慄が走る。レンレンは、本部に無線を繋いでみたものの、通信が繋がらない。舌打ちするレンレンにリネットは、まさかと思いつつ、急いで確認した。

「フェンリル本部はどこ!?」

「旧オペラハウス跡地の正面だ! 急いでくれ!」

「そういう事なの?」

「そういう事だ。陸軍の件は、陽動にすぎない」

 下唇を噛んで、レンレンはブラスターのセーフティーを解除した。

「敵の狙いは、フェンリル本部の占拠だったんだ」

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