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高校5年生

作者: みつ

私は彼に聞いてみた。

「高校に5年いるって、どんな気持ち?」と…。


谷崎 (ひとし)は高校3年時を二回、留年しており順当に高3である私と同クラスだった。

私は小さい頃から将来、看護師になる!と、ずっと決めていて、それに向かった勉学は順調であった。

高3時、私は理科において『生物』の授業が得意でテストでは、いつも満点だった。看護婦になりたい以上、俄然、『生物』の授業の理解が必要だと思っていた私は自ずと、それに力が入るのだ。それに、机の上での勉学において私の場合は『生物』が単純に一番楽しかった。

私は己の『優子(ゆうこ)』という名前を自らでも大変、気に入っている。男女問わず、クラスに友達が沢山おり私は回りから「ゆうちゃん」、「ゆう」等と呼ばれ、

高校生活最後の一年をそれは楽しく過ごしていた。

私のクラスで留年している生徒は谷崎君、只一人であった。

しかも、

3年生を二回、留年している…その事実を人づてに聞いた時、本当に私は驚いた。


春が終われば梅雨を挟み夏が来て、やがて秋になり、

冬の足音が聞こえてきそうな肌寒い日に、

彼は私の机に寄ってきて言った。

「ゆうこりん、俺に『生物』教えてくれよ~♪」

「え!何いきなり!?しかも『ゆうこりん』って私、初めての呼び名なんだけど…。」

それが、谷崎君との初めての会話だった。

私は今まで谷崎君と話したことが無かったのである…。

「いいじゃねぇかよ~♪ゆうこりん、頼むよ、お願いだから!」と、それは懇願され私は悩んだ末に渋々オッケーした。

それから放課後、私は谷崎君に『生物』を教えた。

彼は思いの外、飲み込みが早かった。

私は己の理解の復習にもなる…彼に教えることが、そこに繋がるというのを次第に実感し始め、そんな一石二鳥の日が続いた…。

ある時、ふと私は彼に聞いてみた。

真冬、外は雪が降っており二人だけの放課後に教室で「ねぇ、高校に5年いるって、どんな気持ち?」と…。

彼は下を向き少し重い口調で話し出した。

「…俺んち、魚屋なんだけど、もう高校卒業後は絶対に継がないといけなくて俺、わざと留年して、それから逃げてたんだ…で、『生物』の勉強だけはマジで苦手でさ…もう赤点は許されない…今年は是が非でも卒業したくて……もう高校生活は、いいかなぁ…。」

そう聞いた私は疲れた顔を見せている丸刈りの谷崎君を今までの人生にないくらい腹を抱えて笑ってしまったのだった…。【終】



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