第6話 勇者、王国兵の情報をリークする
「起きろ犬!」
「ごふぅ!」
朝っぱらからドラコに叩き起こされた。
見た目は幼女でも竜人族。パワーがえげつない。
俺のか弱い右腕ちゃんは、一撃で骨折した。
「たんとお食べ」
ドラコが掴んでいるのは魚。焼き魚にすると美味いやつだ。
生け捕りして間もないようで、左右にビチビチしている。
「あぁあぁあ!! やめてください助けてください! わたしには帰りを待つ妻と99匹の子どもがいるんです。子どもたちは生まれたばかり……」
もしかして全種族言語翻訳ってモンスター以外に普通の生き物の言語も翻訳されちゃう?
そっか、この魚、魚のくせに子持ちのパパさんかぁ。
「ドラコ。こいつ食うときに焼いていい?」
「ふむ、ルーザーは焼き魚派か。焼いてやる」
ドラコの口から吹き出るファイア。
俺の朝食は一瞬でケシズミになった。
風に吹かれてかけらが飛んでいく。
「ぬー。ひかげんを、まちがえた」
「あー、うん。ミスは誰にでもあるからネー。はははは」
明日は我が身。ドラコを怒らせないようにしよう。
「ところでリューガさん。ドラコの親はいないのか? 孫ってことは娘と息子がいるはずだよな」
「……去年死んだ。この子の両親は二人とも、ハラクローイの兵に殺されてしまった」
あ、去年ハラクローイで商隊の通るルートにドラゴンが出るからって、討伐隊が向かったような。
兵士長がドラゴンを討ち取ったのはその時の話だ。
だから経験値たっぷり入ってレベル30なわけで。
「その敵が見つかったらどうします?」
「自ら討ち取り、息子夫婦の墓の前に首を供える」
リューガさんの牙が怪しく光る。仇が目の前にいたら食い殺しそうな顔をしている。
息子夫婦の仇なら仕方ないよね。
家族が死んだら悲しいのは人間も魔族も同じ。
ってなわけで、大切な仲間のために犯人を教えてあげよう。なんて仲間想いな俺。
「ハラクローイでドラゴンを倒せるなんて兵士長カーマ・セイ・ヌーだけです。通称ヌー兵士長」
「そうか、ヌー兵士長か。良いことをきいた。必ずやこの手で討つ!」
リューガさんが大剣を掲げて誓う。
兵士長、死亡フラグ二本目が立ったぜ。
仕切り直して2匹目の朝食
「いやぁぁああーーーーー!! やめて、助けてください! わたしには夫と帰りを待つ99匹の子が」
シュゴーーー。
リューガさんのブレスで上手に焼けました。