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第5話 勇者、犬疑惑をかけられる

「さて、リューガ、いや、リューガさん。俺は魔族のために何をすればいい?」


「今日はもう遅いから、儂の家に帰ろう。明日、軍の仲間に紹介する。……そういえば貴君に名はあるのか? 勇者は称号であって名前ではなかろう」


 そんなこと聞いてくれるなんて。俺は背筋を正して一礼する。


「ルーザーです。今後よろしくお願いします!」


「そうか、ルーザー。よろしく頼むぞ」


 元敵なのにあっぱれな人格者。

 こんないい人が雇い主で、遊んで暮らせるだけの金がもらえる上に高待遇。

 俺、もしかしてもうすぐ死ぬのかな。


『ハハハ。すでに今日2回も死んでるのに、何言ってるっすかー』


「ユーちゃん様だまらっしゃい」


 剣にツッコミを入れると、リューガさんは引いたりはせず、感心してうなった。


「ふむ。その剣はもしや言葉を解するのか?」


「あ、はい。めちゃめちゃノリが軽くて口が悪いけど」


「なんと言っているのか教えてはもらえぬか。ぜひとも、儂が生まれるよりも前の時代のことを聞いてみたい」


『あー、すまねっすリューちん。オラ、1000年のうち大半はハラグロ城の奥に安置されてたんで、950年分くらい見える景色は壁だけっす』


 ごめんリューガさん。1000年の剣生に夢も希望もなかったわ。





 それからリューガさんの転移魔法で、どこかの洞穴に飛んだ。

 なんと、これが竜人族の家だそうだ。

 天井がすごく高い。ほえー、と間抜けな声を出しちまって、それが洞穴内に反響する。


「我ら竜人族は人型と竜、二つの姿を持つゆえ。人の住むようなもろく小さな家には住めんのよ」


「そらそうだ」


 10メルト(地球で言うなら1メルト=1m)はある体で人間の家に住めるわけがない。俺が幼女向けドールハウスに飛び込むようなものだろう。


「じいじ、おかえり! おなかすいた!」


 洞穴の奥から、俺の腰くらいの背丈の幼女が飛び出してきた。

 小さくてもちゃんと竜人だ。ぶとい尻尾が生えていて、背中にもちんまり羽がある。伸ばした両手は人の手でなく、竜のかぎ爪。


 竜人幼女が俺を指差す。


「じいじ、これは食料か?」


 可愛らしい声でオソロシイこと言わんでー。

 見た目5歳になるかならないかでカニバリズムはいくない。 


「ドラコよ。彼はルーザー。人間だ。これから儂ら魔族のために働いてくれる者だ。食べ物ではないぞ……すまんなルーザー。孫はあまりここから離れたことがないから、人間を見たことがないんだ」


「あ、気にしないんで大丈夫。人間でも竜人族でも子どもって自由奔放なんだなー」


 俺もたぶんガキの頃こんな感じだったから、気にしない、気にしない。


「ぬー、じいじが食べたことがないだけで、うまいかもしれない。ドラコはこれを食べてみたい」


 キラキラ曇りない瞳で見られてもね。食っていいよなんて言えるか!


「はじめまして、ドラコ。俺はルーザー。食べ物じゃない」


「そうか、負け犬(ルーザー)って名前なのか。ルーザーは人間の姿だけど犬なのか?」


 幼女に負け犬って呼ばれるとクルわ。目からしょっぱい汁があふれてんだけど。


「犬なら飼っていいか? じいじ。人間って何を食べるんだ」


「ドラコ、ルーザーは仲間で、ペットではな……」


「ルーザーのエサは肉か? 肉だな」


 話を聞かない子ね、ドラコ。嫌いじゃないよ。 

 俺は食べ物じゃないと一晩かけて説明することになった。


挿絵(By みてみん)

ルーザー3「俺は食べ物じゃないんだよ。わかるね? だから噛んで味を確かめようとするのヤメテ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 因果応報を受けても、復活することができるのが勇者。 そして勇者就任一日で、魔族に寝返ることができるのがルーザー。 ユーちゃん様もリューガも面白いキャラで、漫才みたいな会話しながら人間に立ち…
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