表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/18

第1話 勇者になれってなんでやねん

挿絵(By みてみん)


「おおゆうしゃ、しんでしまうとはなさけない」


 スライムの一家にボコられて死亡した俺、ルーザー。

 デスワープで旅立った最初の地点に戻ってきた。

 記念すべき初回の死だ。

 

 なんで死んだのに生きているのかというと、原因は目の前にいるハラクローイ国の王、カスラにある。

 勇者にされた俺は、死んでも復活して最初の地点(ココ)に戻る魔法がかかっているのだ。





 遡ること数時間前。

 新入りの兵士だった俺は、仕えていた王に呼ばれた。


 そして玉座の間にて、ハラクローイ国の建国時からあるという勇者の剣を渡された。


「勇者の剣の主に選ばれた者は魔王を討つ使命を持つ。魔王を討ち取るそのときまで死ぬことはできない。やってくれるな勇者よ」

「いやッス」


 玉座のまわりにいた兵士や大臣たちがざわざわしている。国王の頼みを断るなんて無礼ななんて声も聞こえてくる。



「勇者の剣に選ばれた者は魔王を討つ使命を持つ。魔王を討ち取るそのときまで死ぬことはできない。やってくれるな勇者よ」


 おっと、同じ台詞が繰り返されているぞ。聞こえなかったのかな。なら俺ももう一度。


「いやッス」


 まだ16歳になったばかりのぴっちぴちの若者なのに、何が悲しうて魔王討伐なんてものせなあかんのじゃ。

 しかもレベル1だぞ。今のレベルじゃ城下町の外にいる雑魚モンスターに苦戦する。


 そんな人間を、魔族の頂点魔王と戦わせようなんて鬼畜にもほどがあんだろ。

 じつはカスラってば人間の皮を被った魔族なんじゃないか。


「俺みたいなスライムより弱い雑魚より、あなたの隣にいる兵士長(レベル30)を送り出せばいいじゃないですか。てか俺一人で行かせるより、兵士総出で打って出た方が良くないっすか」


「すまないルーザー。おれ、妻が妊娠中で。もうすぐ子供が生まれるんだ。人類の未来を左右する戦い、本来ならおれが行くべきなのだが、剣はおれを選ばなかった」


 兵士長にあからさまな死亡フラグが立っている。これは帰国前にダンジョンのどっかで死ぬやつだ。いや、勇者の剣で死ねない付加があるなら、大丈夫なのでは。


「どうぞどうぞ兵士長様。あなた様の方がお強いですし、遠慮なさらずこの勇者の剣とやらを持って実力発揮しちゃってくださいよう」


 俺は死にたくないのでパス。

 どうせなら老い先短いおっさんが先に死んでくれ。なんて思っているのはおくびにもださない俺。


 ずずいと剣を鞘ごと兵士長の方に押し出そうとしたら、おかしなことが起きた。


 右手から剣が離れない。超強力なネバリ草の液を塗りたくったかのように、手のひらにくっついている。

 剣の内側から声のようなものが響いてくる。


『ちっーすちーっす。ぱねぇっすね今代の勇者さん。オラと気が合いそうだなあ。とりま、魔王ぶっ殺すまでおなしゃっす!』


 同年代の、やけにチャラい男の声が挨拶してくる。辺りを見回しても、誰も口を開いていない。


「誰だ」

『おっす、オラ勇者の剣、略してユーちゃん様とでも呼んでくれっす!』

「きも!!」


 剣がしゃべるなんて幻覚だ。訓練しすぎて疲れてんだな俺。

 投げ捨てたいのに手から剥がせねぇ。

 その場に座り込んだ俺に、カス王がもう一回言った。


「勇者の剣に選ばれた者は魔王を討つ使命を持つ。魔王を討ち取るそのときまで死ぬことはできない。やってくれるな勇者よ」


「人類の未来を左右するってんなら手付金として国庫の半分俺によこせ!!」



 有無を言わさず城を追い出された。

 せめて剣の中身がパイオツのでかいネーチャンならがんばるのに。


挿絵(By みてみん) 

挿絵(By みてみん)

ルーザー「俺の覇道が気になると思ったら、ブックマークと下にある☆を押して応援してくれよな!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ