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父と娘 part2




 スマホや財布も持たず飛び出した私は、宛もなく夜道をフラフラと歩いていた。


 空は曇っていて星も見えず、まるで私の心を写すかのように真っ暗だ。雨が降りそうなのか、湿気を含んだ生温い風が涙で濡れた頬を撫でる。



 勢い良く飛び出したはいいものの、誰にも連絡出来ず、一銭も持ち合わせていないこの状況……


 これからどうしようかと途方に暮れながら歩いていると、ふと目の前に見覚えのある景色が飛び込んできた。

 そこは小さい頃にトンくんとよく遊んでいた公園だった。

 涙で滲む視界の中、私は誘われる様に公園へと入っていく。



 トンくんが引っ越してからもこの公園でまた会えるんじゃないかと期待して、暫くは足を運んでいたが、それもいつしか無くなった……

 それ以降全く訪れる事なく久しぶりに訪れた公園は、記憶の中にある印象と少し違った。


「このベンチ……こんなに小さかったっけ?」


 よく2人で座ってお喋りを楽しんだベンチは、9年もの月日が流れたせいか、とても小さく見えた。




 昔はここで同年代の子達が遊ぶのを1人で眺めていたっけ……

 内気な私は皆の輪に入れず、パパが友達と食べなさいと持たせてくれたメンチカツは結局全部私の胃袋に収まっていた。いじめっこに盗られた事もあったな……



 そんな日々が辛くて泣いていた時――

 トンくんと出会ったのだ。




 ちょうどこんな風に1人で泣いている時だったな……




「成美ちゃん?……どうしたの?」




 そうそう。

 こんな風にトンくんが優しく声を掛けてくれて……



 私は本当にトンくんの声が聞こえたような気がして視線を上げると、そこには心配そうにこちらを見つめているトンくんの姿があった。



「えぇ!?何でトンくんがここに居るの!?もしかして夢か幻か……」


 そんなタイミング良くトンくんが現れるわけないと思い、自分の頬を思いっきりつねってみた。


 「イタイッ!」




 ってことは本物だ……




「だ、大丈夫?僕、たまにジョギングコースでこの辺りを走るんだ。それで公園の前を通ったら、こんな時間に女の子が1人で居るから声を掛けたんだよ」


 そう言ったトンくんは確かにジャージ姿で、額にうっすらと汗をかいていた。


 予想外の出来事にビックリし過ぎて涙が引っ込んでしまったが、頬に残る涙の跡にトンくんは気づいたようだ。

 トンくんは私の顔を見て顔をしかめると、「ちょっと待ってて!」と言い残して公園の外へと向かって走る。


 私は頭に?を浮かべながら言われた通り待っていると、トンくんが小走りで戻って来た。



「お待たせ。どっちがいいかな?」


 戻って来たトンくんの両手にはコーヒーとミルクティーの缶が握られていた。



「いいの?ありがとう。えっと……じゃあコーヒーを……」


「コーヒーね。はい、どうぞ」



 私は手を伸ばして受けとると、さっそく一口コーヒーを口に含む。


 コーヒーのお陰かトンくんが側に居てくれるお陰か、さっきまで不安だった気持ちが少し落ち着いた気がした。




「ゆっくりでいいからさ、一体何があったか教えてくれる?」


 隣に腰掛けたトンくんが優しい声で私に話を促してくる。



「えっと、恥ずかしい話……さっきパパと大喧嘩して、家を飛び出て来ちゃったの……」


 私はトンくんに今に至るまでの経緯を簡単に話した。




 この歳になって親と喧嘩して、こんな格好で家を飛び出しただなんてトンくんは呆れるだろうか……



 私は我にかえって、改めて自分の格好を確認する。

 着古したTシャツに短パンと随分ラフな格好で、今更ながらこの部屋着姿でトンくんの前に居ることが恥ずかしくなってきた。

 いや、中学時代のジャージじゃなかっただけマシだったと思うべきか……




 そんな私の思いを余所に、トンくんは真剣な表情で考える素振りをして口を開く。



「もしかして、喧嘩っておじさんが僕の体型の事を言ってたのと関係してる?」



「な、何でその事知ってるの?」


 もしかして私が芹菜と百花ちゃんに話していた時に聞かれていたのだろうかとドキリとする。



「昨日お店に買い物に行った時に、直接おじさんから聞いたんだ。その後おじさんが凄く謝ってくれたよ。僕は全然気にしてないんだけどね」


 そう言ってトンくんは苦笑いを浮かべる。

 


「許しちゃダメだよ!パパってば、全然人の気持ちを考えてないんだもん!」



 一度パパへの不満を口に出してしまうと、今まで溜め込んでいた物が次々に溢れ出す。



「太りたくないって言ってるのに、揚げ物ばっかり食べさせようとするし、全然人の話は聞かないし、余計な一言が多いし!この前だって――」


 私が早口で捲し立てると、トンくんは「落ち着いて」とストップをかける。



「ご、ごめん……つい止まらなくなって」


 私は深呼吸して気持ちを落ち着かせると、改めてトンくんと向かい合う。



「私ね、トンくんがアメリカに行っちゃった後からダイエットを始めたの。その時から大好きだったメンチカツは食べてないんだ……というか揚げ物全般なんだけど。食べるとあの頃の自分に戻っちゃうんじゃないかって、恐いの……」





 痩せてからは意地悪を受ける事も無いし、少しだけど自分に自信も持てた。もしこれでまた昔のように太ったりなんかしたら、皆どんな反応をするだろう……そう考えると恐くなって、どうしてもあの頃の自分には戻りたくなかった。




「それに痩せてオシャレも頑張って、目標だったトンくんに見合う女の子にやっと近づけたのに……」


「えっ?それって……僕の為に痩せたってこと?」


 さっきまで静かに話を聞いていたトンくんが反応する。私がポツリと呟いたのを聞き逃さなかったようだ。私はしまったっと手で口を押さえるが、もう遅い。


 トンくんは「そうなんだ……」と呟きながら僅かに口許が緩んでいる。

 


「あ―もう……本人の前で恥ずかしいな……」


 私は熱くなった顔をパタパタと手で扇ぐ。



 その様子を見てトンくんはクスリと笑うと、真面目な顔に戻ってこう言った。


「でも、僕に見合うとか見合わないとか……見た目なんて関係ないよ。成美ちゃんは僕に再会した時、こんな体型になっててガッカリした?太ってる僕は嫌いかな?」


「え……?」


 突然の質問に一瞬言葉を失う。


 トンくんはベンチから立ち上がり、全身が見えるように私の前に立った。


 昔のトンくんはほっそりとした体型で、タレ目がちな目は笑うと細くなり、えくぼが可愛い少年だった。今目の前にいる彼は体型こそふくよかになったものの、笑い方や顔の面影などは昔と変わらない。


 そして何より、こうして私の事を心配して寄り添ってくれる……優しい性格もそのままだ。



「うーん……正直私の脳内でトンくんを美化し過ぎてたのもあって、ビックリはしたけど……どんな見た目でもトンくんだもん。嫌いになんかならないよ」



 私の返答を聞いて、トンくんは安心したように笑った。



「ありがとう。その気持ちは僕も一緒だよ。成美ちゃんがもし前の体型に戻ったって、嫌いになったりしない。それでまた成美ちゃんを虐めるような奴が居たら、今度こそ僕が君を守るよ。僕も変わりたいと思って、今まで努力してきたんだ」




 そう言えば、昔は私が虐められているのを見ていることしか出来なかったって言っていたっけ……

 トンくんもこの9年の間、自分を変えたいと頑張ってきたのかな……




「きっと富岡さんや井上さん……純だって、同じことを言うと思うよ?それとも皆、成美ちゃんの見た目が変わったら急に態度を変えると思う?」


 そうトンくんに聞かれ、私は即答した。


「ううん……絶対そんなことしないと思う」



 百花ちゃんや純くんは知り合って数ヶ月しか経ってないけど、なんとなく分かる。皆そんな事で人を判断するような事はしないだろう。




「でしょ?だから太った方がいいとは言わないけど、あまり気を張り過ぎないで」


「うん……確かにちょっと神経質になり過ぎてたところがあったかも」


 私は今までの自分がしてきたダイエットを振り返り、反省する。



「実は僕、管理栄養士を目指して勉強してるんだ。食事の事で悩むことがあったらいつでも相談してよ。力になるよ」


「凄い……もう将来の事まで考えてるの?私は全然考えた事なかったなぁ」


 私が感心したように言うと、「そんなことないよ」とトンくんは照れ臭そうに笑った。




「そういえば昔、志摩さんから聞いた話なんだけど……安堂精肉店のメンチカツは一人娘のために、店主とその奥さんが改良に改良を重ねて作ったものらしいよ」


「え……その一人娘って、もしかして私の事……?」


 私が自分を指差して問うと、トンくんはコクリと頷いた。



 確かに私は昔からメンチカツが大好物だったが、それが私の好みに合わせて作られたものだとは知らなかった。



「それから、昨日おじさんが僕に謝ってくれた時に聞かれたんだ。新作のメンチカツを作ってるんだけど、ダイエットしていても気軽に食べるにはどうしたらいいかって」


「パパ、さっきも新作のメンチカツがって言ってたけど……」



 先程パパが私に差し出してきたメンチカツを思い浮かべる。

 特段いつもの物と変わらないように見えたが、もしかしてアレは……




「おそらくその時に僕がアドバイスしたものを作ってみたんじゃないかな?」



「パパが私のために考えてくれてた……?」




 あんなにダイエットには否定的だったのに……

 そんなの言われないと分からないよ!

 てっきり私はいつものメンチカツを食べさせようとしてるんだと思って……




 でも実はアレは私のために試作したダイエット用メンチカツだったわけだ。

 しかし私は、そうとも知らずにそれを床に叩き落としてしまった。



「私ってば酷いことしちゃった……どうしよう、パパに謝らなくちゃ」




 頭を抱えながら、パパに対しての自分の言動を悔いていると、トンくんの手が私の肩に添えられた。


「おじさんもおばさんも成美ちゃんの事を大切に思ってるからこそ口煩くなるし、いっぱい衝突もしちゃうんだよね。だからしっかり向き合って素直な気持ちを伝えれば、2人とも分かってくれると思うよ」


「許してくれるかな……」


「大丈夫、きっと仲直りできる。ホラ、帰ろう?家まで送っていくよ」



 そう言ってトンくんは私に手を差し伸べた。




 なんだか不思議だ……

 トンくんが大丈夫って言えば、本当に大丈夫なような気がしてくる。



「うんっ!帰って、パパとママに謝りたい!」


 私は差し出されだ手を掴み、勢い良く立ち上がった。




――――――――――――――――――




 家の前に着くと、1階の電気が点いているのが見えた。

 つまりパパかママのどちらかは、確実に私の帰りを待ち構えているということだ……



「緊張する……」


 少しでも緊張を落ち着けるため深呼吸していると、後ろからトンくんがソッと背中を押してくれる。


「大丈夫。僕がついてるよ」


 私はトンくんの言葉に頷くと、ゆっくりとドアノブを回した。


 玄関の鍵は空いており、そのままドアを開いて中の様子を確認するが誰の姿も見当たらない。




「ただいま……」


 私は消え入りそうな声で恐る恐る声を出すと、リビングから慌ただしい足音と共にママの姿が見えた。



「成美!アンタって子は心配掛けて!……おバカッ」


 そう言うなりママは力いっぱい私を抱き締める。


「ッ……!ママ……」


 もっと怒られるものだと思っていただけに、ママの反応に驚く。

 抱き締め返すと、ママの体が小さく震えているのが分かった。




 一体私はどれだけ心配を掛けさせてしまったのだろう……




「……ごめんなさい」



 私が謝ると、ママの抱き締める力がより強くなる。


「無事に帰ってきてくれればいいの……本当に良かったわ」


 ママの優しい声が耳元で響く。

 先程まで緊張で冷たくなっていた指先が、ママの体温でじんわり温かくなるのを感じた。


「本当にごめんなさい……」


 私の視界は涙で滲み、震える声で再び謝罪した。



 ママは私から離れると、後ろに控えていたトンくんに気づいて頭を下げた。


「琢斗くん、成美の居場所を教えてくれてありがとうね。あの連絡がなかったら警察に駆け込もうと思ってたの」


「え!トンくんいつの間に連絡してたの!?」


 私はママの発言に、驚きの声をあげる。



「飲み物を買いに行った時だよ。泣いてるみたいだったし、何かあったのかと思って電話したんだ」


「本当に琢斗くんはしっかりしてるわ。成美、ちゃんとお礼は言ったの?」



 ママの言葉に、私は慌ててトンくんに向き直る。


「トンくん、今日はありがとう。話聞いてもらえてスッキリした!パパともちゃんと話してみる」


「しっかり成美ちゃんの気持ちを伝えておいで」


 トンくんはそう言って、私の頭をポンポンと軽く撫でた。


「うん、頑張るね」


 私がそれに照れた様子をみせていると、横からママの視線が突き刺さる。



「……!ま、また明日報告するね。それじゃ、おやすみっ」


 私はハッと我に返ると、誤魔化すように別れの挨拶を済ました。



「分かった。じゃあおばさん、今日はこれで帰ります」


「ええ、気をつけてね。成美の事、本当にありがとう」


 トンくんはママにペコリと頭を下げると、そのまま踵を返して帰ってしまった。




 さっきまではトンくんが付いていてくれる安心感があったが、側にいないと不安がドッと押し寄せてくる。


「パパはリビングに居るわよ」


 ママの言葉に私は頷く。




 私が帰って来た時、ママは駆けつけて来てくれたけどパパは来なかった……

 もしかしてまだ怒ってるんじゃないかな……




 そう考えると不安と緊張で、リビングに近づくにつれて私の鼓動は早くなった。




 リビングに入ると、パパはソファに座って新聞を読んでいた。


「パパ……」


「…………」


 近づいて後ろから声を掛けるも、返答は無い。


 私は意を決して、パパの正面に回り込む。



「パパ!さっきは酷いこと言ってごめんなさい。メンチカツも……折角作ってくれたのにダメにしてごめんなさい」


「…………」


 やはり怒っているのかパパは新聞から目を離す事はない。それでも私は続けた。



「トンくんから聞いたよ。私のためにダイエットメニューを考えてくれてたんでしょ?そうとも知らずに、最初から拒否ばっかりして……言い訳にしかならないけど、また太るのが恐かったの。揚げ物なんて食べたらまたあの時の自分に戻っちゃう気がして……だからいつもあんな態度ばっかり取っちゃった」



 パパはまだ押し黙ったまま下を向いている。



 でもトンくんとの約束だ。ちゃんと自分の気持ちを言葉にしなくちゃ!




「本当はパパとママが私のために言ってくれてることは分かってたけど、今まで我が儘ばっかり言ってごめんなさい。でも私の気持ちもちゃんと知って欲しい。だから今度からはちゃんと言葉にして伝えていくね」



 自分の思いの丈をぶつけ、私はパパの反応を待った。




「…………グスッ」


「ん……?パパ?」



 暫く沈黙が続いた後、鼻を啜る音が聞こえる。


「うぅ……成美ぃ……ズズッ」



 やっと顔を上げたと思ったら、パパの顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。



「パパ泣いてるの!?」


 思いもよらないパパの涙に私は目を丸くした。



「成美……パパが悪かった。出ていけなんて言ってごめんなぁ」


「パパったら成美が本当に出て行ったものだから、ショックを受けちゃって……琢斗くんの連絡があるまでずっと、どうしようって狼狽えてたのよ」


 私がパパの涙に呆気に取られていると、ママが苦笑しながら教えてくれた。



 私はパパの隣に座ると、背中を撫でてあげる。


「パパそんなに泣かないで。私が悪かったの。酷い事も言っちゃったし……」


「いや……成美の気持ちを考えてなかったパパが悪いんだ。パパが一番分かってやれるはずなのに……」



 私はパパの発言に、どういう事かと首を傾げる。

 するとママが教えてくれた。


「昔はパパも太ってたのよ」


「えっ!そうなの?」


「そう、昔はパパも太ってたんだ。しかも牛大なんて名前なもんだから、よくからかわれてな。全部嫌になって家を飛び出したこともあった……」


 パパは当時を思い出したようで、苦い顔をする。


「パパにもそんな事があったんだ」


 私は初めて聞くパパの過去に驚いていると、パパは改めて謝罪してくる。



「成美、悪かった。今度からは成美の気持ちも分かってやれるよう努力する。だが、パパとママの心配も分かってくれるか?」


 パパが真剣な顔つきで話す横から、ママが口を出してくる。


「大体、アナタは言葉が足りないのよ。いっつも成美の事心配してるくせに、成美の前では格好つけるんだから。この前の入学式だって――」


「お、おい!もうそれ以上はいいだろ!分かったからっ」


 ママの言葉を慌てて遮るパパ。その様子に、自然と笑いが込み上げてくる。


「フフッ……うん、私も2人に心配かけないようにするね」


「おう……」


「はい、これで仲直りって事でいいわねっ」


 ママは笑顔で手を叩く。


 無事にパパとも仲直り出来たことで、安堵していると、ぐぅぅぅ……と何処からか大きな音が聞こえてきた。



 いや、何処からかは分かっている。


 私のお腹の音だ……



「あら、お腹空いたの?待ってて、貴方が食べられるもの探してくるわ」


 そう言って、ママが台所に向かうのを私は咄嗟に引き留める。


「待って!あの……私、メンチカツが食べたいな……」


 私の発言に、両親2人は目を丸くする。



「……!わ、分かった。作ってやるから座って待ってろ」


 私の予想外の要望に、パパは一瞬動きが止まったが、直ぐに台所へと飛んでいく。



 暫くしてパパが持ってきたお皿には揚げたてのメンチカツが山盛りに乗っていた。



「熱いから気を付けろよ」


「うん、いただきます」



 私はメンチカツを箸で掴んで口へと運ぶ。その様子をパパとママが固唾を飲んで見守っていた。


 サクッ……


 静な空間にメンチカツを食べる音だけが響く。



 暫く咀嚼し、ゴクリと飲み込んだ後、私は顔を上げて口を開いた。


「……美味しい」



 私のその一言に、パパとママの顔が綻ぶのが分かった。


「そうかそうか。遠慮せず、全部食べていいぞ!」


「アナタ、そんなに食べられないわよ。なんだかお腹空いちゃった。ママも頂こうかしら」



 そこからは皆でメンチカツを囲んで食べた。



「昔と変わらないね。やっぱりパパのメンチカツが一番好きだな」


 そう言うとパパの目が少し潤んで、それを隠すように私の頭を乱暴に撫でる。



 私の大好きだったメンチカツ……

 それはずっと前からパパとママが私のために愛情を込めて作ってくれていたものだった……


 気がつけば一筋の涙が頬を伝って流れていた。



 口下手なパパの愛が詰まったメンチカツはいつもよりもしょっぱかった。




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