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集えバレー部

 5月……

 桜の花はすっかり散り、青々とした若葉の色が青空に良く映える。


 高校に入学してから色々な事があったが、早くも1ヶ月が経とうとしていた。



「トンくん、手の具合はどう?」


「もうすっかり良くなったよ。成美ちゃんが色々助けてくれたお陰だね」


 トンくんに怪我をさせてしまった負い目から一緒に登下校するようになった私達。最初は怪我が治るまでの期間と考えていたが、習慣になってしまったそれは怪我が治った今でもずっと続いている。



 いつものようにトンくんと教室に入ると、何やらクラスの皆が集まって盛り上がっていた。


「おはよう。皆どうしたの?」


 私は気になって輪の中心に居た林くんに声を掛ける。


「あ、安堂さんおはよう。いやー今日のホームルームでさ、今度の球技大会で出場する種目を決めるらしいんだよ。それで今、皆で何がいいかって盛り上がってたんだ」


「へぇ、もうそんな時期かぁ」



 この学校では毎年5月の上旬に、学年の垣根を越えて交流する事やクラスの団結を深める事を目的として球技大会が行われる。

 種目は男女別で行われるバスケ、卓球、フットサルと男女混合で行われるバレーの4種目である。



 教室の隅で話していた、芹菜と百花ちゃんがこちらに気づいてやって来る。


「成美っちおはよー!球技大会の話聞いた?さっきセリセリと話してたんだけど、良かったら一緒にバレーに出ない?」


「いいね、楽しそう」


 個人競技よりも皆で楽しめる競技がしたいと思っていた私は、二つ返事で承諾する。



「私は、楽ができれば何でもいい……」


 一方の芹菜は心底興味が無さそうだ。



「安堂さんバレーに出るの?じゃあ俺もバレーにしちゃおうかなぁ……」


 私達の話を聞いて、林くんもバレーに名乗りを上げた。


「うん、一緒に頑張ろうね。ところでトンくんはどうするの?」


 私が横に視線を向けると、トンくんは何やら浮かない顔をして悩んでいた。


「どうしたの?」


「えっと……僕、運動があんまり得意じゃなくて……皆に迷惑がかかるから、個人競技の卓球にしようかなと思って……」


 トンくんは自信なさげに呟いた。


「全然迷惑だなんて思わないよ。折角だからトンくんだって楽しまないと!私達と同じバレーにしたら?一緒に練習しようよ」


「フフッそうだね……成美ちゃんとなら頑張れそうな気がする」


 トンくんは柔らかく微笑んだ。

 私はやっとトンくんの笑顔が引き出せて、ホッとする。



「や、八城だけズルいぞ!安堂さん、俺も参加していいかな?」


「勿論だよ。皆で頑張ろうよ」


 そしてホームルームの時間になり、各々出たい種目に立候補した結果、バレーは私、トンくん、芹菜、百花ちゃん、林くんを含め8人の生徒が集まった。



 ちなみに一番人気だった種目は、純くんが立候補したフットサルで、男女別の種目にも関わらず女子の殆んどがフットサルに名乗りを上げた。

 6人の人数枠を取り合う女子達の闘いは、血が流れたとか流れなかったとか……






 昼休み、バレーに参加するメンバー全員で体育館へ向かう。

 体育館には既に球技大会に向けて練習する生徒達が大勢居た。


「よくこんな行事に必死になれるね……私は控え選手でいいから」


 全くやる気を見出だせない芹菜に対して、林くんが魔法の言葉を発する。


「そういえば先輩に聞いた話だと、各種目で1位になった個人・チームには学食の食券が配られるらしいぞ」



「……!!さぁ皆、サーブ練習から始めましょう」


 食券が貰えると聞いた途端、芹菜は目の色を変えて仕切り出す。



 相変わらず、変わり身の早さに脱帽するよ……


「よぉし、セリセリもやる気になったし……1位目指しちゃいますか!」


「「おー!」」



 百花ちゃんの掛け声により、私達の思いは1つになった。


 目指すは優勝だ!




 早速練習用に広いスペースを確保するため、場所を移動する。

 するとそこにもバレーの練習をしている集団が居た。



「桜子!ボールそっちに行ったよ」


「ハイッ」


 眼鏡は外しているが見覚えのあるおさげ髪を振り乱しながら、必死にボールをレシーブする彼女……


「あれって藤崎さん……?」


 トンくんが普段の大人しそうな藤崎さんとはかけ離れた様子に面食らっている。


 その声に反応した彼女はこちらを見やった。


「八城くんも練習に来たんだ!……あー、安堂さんも」


 藤崎さんは笑顔でトンくんに挨拶した後、私の存在に気がつくと真顔に戻ってしまった。



 同じ調理部の部員である藤崎さんは、あの部活見学の後から何だか私に対してだけ態度が素っ気ない気がする。


「藤崎さんの所の練習は凄く気合いが入っているね」


 トンくんは先程の練習風景を思い出して、感心する。


「そうなの。うちはメンバーにバレー経験者が4人居るからスパルタなの」


「バ、バレー部が4人?確か公平を期すために各種目、入れる部員数は2人までだったはずだろ?ルール違反だ!」



 林くんが抗議するが、藤崎さんの後ろに居た長身の男の子が前に出て、余裕の笑みを浮かべた。


「ちゃんと大会要項を読んだのか?制限されてるのは”現役の“部員だけだ。したがって元バレー部員はその制限に含まれてないのさ」


 林くんはその指摘にぐうの音も出なかった。



「アタシらのクラスにも女子バレー部が2人居たけど、全員純くん目当てでフットサルに行っちゃったからなぁ……」


 百花ちゃんが肩をガクリと落とす。



 その様子を見て、長身の男の子は勝ち誇った様に笑った。


「ハッハッハ!優勝はオレらが貰ったな」


 すると優勝の文字に芹菜が反応する。


「食券は誰にも渡さない……まだ大会まで1週間ある。私達は私達に出来る事をするだけ」



 な、なんか芹菜が凄くまともな事を言っている!?

 一番やる気が無かったはずなのに……



「芹菜にここまで言われたら頑張るしかないよね!トンくん、私達の練習もスパルタでいくよっ」


「えっ!お、お手柔らかに……」



 私達が仲良く円陣を組んでいる様子を見て、藤崎さんは目つきを鋭くさせる。


「私だって、負けない……」



 斯くして球技大会優勝に向けて、私達の地獄の練習が始まるのであった……

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