2話 大丈夫
え・・どうして?ねぇどうして!なんで?なんで?なんで
女の号哭が、部屋の中を駆け巡る
どなたか!救急隊を!誰か!
男の焦りの色が濃くなっていく、しかしそれに応えようとする者は一人といなかった、いや答える必要がなかったのだろう
「え、あれってぼったくり宿屋じゃね?」
「あ、ほんとだ、やっとつけが回ってきたのかしらね?」
「ぼったくり宿屋?」
「ああ、ここら辺だと有名な話だぜ、よくわからん油売りとつるんでいて、泊まると高額で油を売りつけられ る・・・なんて話だぜ。」
みんな、何を言っているの?あのお母さんが、ぼったくり?ほんとに何を言っているの?
3ヶ月前・・・
ありゃ?珍しく若いお客さんだね、
明るい声で女に話しかけた
あの・・・油・・買ってくれませんか?
女は少し赤面して声を詰まらせながらそう言った
え!あんたこれ夜光油じゃないかい!あなた一人で取採ってきたのかい??
い、いえ、あの、外にいるガンさんて言う人と、、一緒に、、
おお、そうかい!じゃあ1樽お願いしようかな!
いいんですか!?
いいもなにも、いいと思って売ってるんだろう?
女は少し間が空いてから小さく頷いた
ならよし!せっかくだから泊まってくかい?お金はいらないよ!
女は初めて雪を見た子供のように目を輝かせた
その、ガンさんって人も呼んでおいで
女は軽快なステップで外に飛び出した
ガンさん!今日泊めてくれるって!
え!なんで急に?
いいからいいから!
女は男の返事を待たずに、宿の中に引きづり込んだ
あはは、げんきだねえ
お、お邪魔します
あなたがガンさんかい?
あ、はい、ガン・クロームウェルと申します
おおそうかいそうかい、はてガンさんとやらどこかで私と会ったことあるかい?
え!?いえ、今日が初めてかと・・・
だよねえ、ダメだね歳取ると記憶が曖昧になっちまって
いえいえ、まだまだお若いですよ
あら、お世辞が上手ねえ
そんなやりとりをして3ヶ月、来るたびに毎回この宿屋によっていた
宿屋と油売りはそんなこんなで信頼を築き、お互いのことを疑う余地はそこになかった
ねえ!どうしようガンさん!このままだと・・・
落ち着け、大丈夫だから、大丈夫だから落ち着くんだ
微塵も大丈夫だなんて気を持っていなかった、しかし男にはそれしか発せる言葉がなかった
私が、私があの時まだ宿屋にいたら!ここに来る日が明日だったら!
違う!そうじゃない!マリアのせいじゃない!だから!大丈夫だから!
もう、男の声は届いていない
ちくしょう!なんで!なんで、こうなるんだ!こうなるなら・・・・・・助けるんじゃ・・・
なにがあったんですか!?
見知らぬ声がドアから聞こえる
そこには、17歳くらいだろうか、若々しい青年が中を覗き込んでいた!
え!ちょっと、離れてください!止血します!なんでもいい縛るものを!
男と女は状況の理解ができず、茫然自失していた
はやく!!
その言葉で我を取り戻した二人は大慌てで、タオルを持ちに行き男に渡した、
毎週通い続けていた宿屋だ、タオルがどこにあるかくらいは把握していた
応急処置を終えた男は、自分の汗を拭いゆっくりと息を吸い込んだ
はぁあ、
とりあえずできることはしました、あとはこの方の生命力次第といったところでしょう
あの、ありがとうございます
どうやら、女も落ち着いたようで、とぼとぼと言葉を口にした
この人は、私の本当のお母さんみたいな人で、出会って3ヶ月なんですけど私たちにすごい良くしてくれていて・・・それで・・・
心が落ち着いたからなのか、大粒の雫を瞳からこぼしていた
あはは、大丈夫だよ、今夜はゆっくり寝るといい。きっとお母さんも大丈夫だから
女は、そう言われると涙を見せないようにいつも使わせてもらっていた部屋に入っていった
男は聞きたいことがありすぎて何から話していいかわからなかったが、考えるより先に口が動いた
あなたは、一体誰ですか?なんで助けてくれたんですか?
え!敬語はやめてくださいよ!きっと僕の方が年下です!
僕はルーク・クルニカです!なぜって言われても・・・うーん特に理由はないですけど、強いて言うなら助けたかったから・・・ですかね!
そういうとルークと名乗った男は微笑んだ。
読んでくださりありがとうございます!
まだまだ続く予定なのでゆっくり見ていってください!
ちなみに、ガン・クロームウェルは19歳、ルーク・クルニカは17歳です!