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箱庭の王様  作者: 山司
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第20章 帝国 1

第20章

帝国 1





▪️▪️▪️▪️





イジャラン・バダ帝国 帝都イジャラン。


かつて、この街は6大魔王の1体、死の魔王 マラによる侵攻で壊滅的な被害を受けた、『伝説の勇者』の物語にも出て来る街だ。



この街では、今、隣国のガンヒンリン帝国との戦争の噂で持ちきりだ。


その中には、「ガンヒンリン帝国は呪われている」とか、「ガンヒンリン帝国を征服したら、今度はイジャラン・バダ帝国が呪われる」と云う根も葉も無い噂迄流れている。



何故、この噂が根も葉も無いと言い切れるのか?

其れは、この噂の原因となっている3つの出来事の内、2つは、僕がやった事だから、呪いでは無い事は明白だ。


そして、噂を流させた本人が、根も葉も無い噂だと言っているのだから間違いなく、根も葉も無い噂だ。




僕達は今、寂れ切ったハンターギルド イジャラン支部を出て、イジャラン・バダ帝国の帝城に向かっている。


今回のメンバーはいつもの親衛局の4人と、リティラとシイーデとツナフォーテだ。


今迄であれば、全員で行動せず誰かが“エヴィエイションクルーザー”でお留守番だったのだが、現在のルベスタリア王国には、“空中要塞 メタヴァース”が在る。


なので、全員で降りて、用件が終わってから迎えに来て貰う事が簡単に出来る様になったのだ。



みんなで、“エヴィエイションバイク”を走らせて、到着したイジャラン帝城の入り口たる大門。

門番には定番の様に、2人のフルプレートを着込んだ兵士が立っていた。



「止まれ!!貴様ら何者だ!!」


「僕はノッド、Sランクのハンターだ。

はい、此れハンター証ね。


とりあえず、誰でも良いから、キミが呼べる1番偉い人を呼んで来てくれるかな?」


「んな?!Sランクハンター?

この若造が?!」

「だが、ハンター証は本物だ」


「若造って、僕は此れでももう26歳だよ?

キミ達みたいに弱いと知らないかもしれないけど、一定以上に強くなったら殆ど老けないし、人によっては若返るんだよ。


まあ、分かったら誰か呼んで来てよ」


「よ、弱いだと!!」

「帝城の門を任される我らが弱いと言ったのか!!」


「ああ、ごめんごめん。

僕達の強さが全く分かって無いみたいだから、凄く弱いんだろうと思っただけだよ。


別にケンカしに来た訳じゃないから、早く呼んで来てよ」


「黙れ!!

貴様らの様な怪しげなヤツらを取り継ぐ訳が無いだろうが!!」

「そうだ!!

さっさと失せろ!!」


「分かったよ。

じゃあ、僕は帰るけど、ハンターギルドに、門番に追い返された事は報告しておくからね。

言っておくけど、今の対応の所為でキミ達が一家全員死刑になっても、僕を恨まないでね」


「な、何を偉そうに!!」

「そうだ!!

たかがハンター如きが!!」



どうやら、イジャラン・バダ帝国では、Sランクハンターでも、まともに取り合ってくれない様だ。

まあ、ダメだったら、別の方法を取るだけなので、良いかと思いながら踵を返すと、城門が開き、中から小型のホース系の魔獣に跨った大柄な男がやって来た。


両肩がまるで盾の様に大きな特徴的な鎧を纏って、背には巨大な斧を背負っている大男だ。


僕が振り向いてその男を見ると、バッチリと目が合った。

そして、僕は前を向いて、“エヴィエイションバイク”のハンドルを捻って、来た道を帰る。



「!!ま、待て!!


いや、ちょっと待て、ちょっと待て!!


今、ちゃんと目が合っただろう?!

何故、帰るんだ!!


おおい!!

おおおおい!!


待てぇ!!!!」



大男は、ホース系の魔獣を走らせて、追い掛けて来ると、僕達の前を塞ぐ。

帰れと言った連中の上司だろうに、いざ帰ると呼び止めるとは、失礼なヤツだ。


ペアクーレなんて、もう既にちょっとイライラしている。

リティラは既に怒っている。



「…………何なの?

僕は親切で出向いて上げたのに追い返されたんだよ?

今更何か用?」


「んな?!

貴様が上官を出せと騒いでいたから出て来たのではないか!!」


「あっそう。

でも、もう帰って良いよ、僕はこの国がどうなろうと関係無いから。

人の親切を無碍にしたのが悪いよね。


もうちょっと、門番の教育をしといた方が良いよ、それじゃあ…………」


「いや、ちょっと待………!!!!」



大男が僕の腕を掴もうと手を伸ばして来たが、その手が僕に触れる前にペアクーレとリティラの我慢が限界だった様だ…………


大男の首筋には、剣と槍が、動けば触れる程の距離にピッタリと付けられていた…………



「…………2人とも、しまって良いよ。

この人も、もう僕に触ろうとはしないだろうから」



僕の声に、ペアクーレとリティラが剣と槍を引くと、大男は、「ぶはぁ〜〜……」っと息を吐いた。

2人の切っ先は、この大男が呼吸をするだけで触れる程の距離だったからだ。



「ウチの娘達が失礼したね。

仕方ないから、用件を話すよ。


僕が出向いた用件は此れを渡す為だったんだよ」



そう言って、ヴィアルトから手渡された1冊の本と、2枚の地図、1枚のメモをそのまま大男に渡す。

大男は先程の一件が尾を引いているのか、若干躊躇いがちに受け取ると怪訝な表情をする。



「其れを皇帝にでも渡して上げてよ。

もし、直接話しが聞きたいなら、そのメモのホテルに一週間くらいは居るから、丁重なもてなしなら出向いて上げるよ」


「こ、皇帝陛下にだと?

この本と地図は一体何なのだ?!」


「分かる人には分かるよ、其れじゃあ今度こそ帰るから」





僕達が此処帝都イジャランに来た目的は2つ。

1つは、現在広めている『不思議な事は全部呪いの所為作戦』の噂に信憑性を持たせる為だ。

その為に、Sランクハンターの資格を持っている僕が直接来た。


まあ、僕で無くとも現在のルベスタリア王国の幹部達なら、Sランクハンターになる事は簡単なので誰かがSランクハンターになって来ても良いのだが、なったばかりのSランクハンターよりは数年でも実績の有る僕の方が信用され易いだろうと思ったからだ。


そして、もう1つの目的は、あわよくば、一度、チパーティアム・ヴァー・イジャラン女皇帝を見ておこうと思ったからだ。

もちろん、女皇帝が直接会うとは限らないが、まあ、可能ならばと云うヤツだ。


完全に僕の勘だが、この女皇帝は、無視出来ない気がするので、顔を覚えておこうと思ったのだ。



そう云う大した事の無い理由で僕が直接来た訳だが、帝都イジャランは思ったよりは活気のある街だった。

現在、戦争間近で、つい最近、クーデターが勃発したばかりなのを考えれば十分過ぎる活気だろう。


そんな街で食事や買い物を楽しんで過ごす事3日、とうとう帝城への招待状が届いた。

明日のお茶会へのご招待だ。


と、云う訳で明日の同行者決めとなった…………



「……とりあえず、同行者が2人と、“エヴィエイションバイク”で送り迎えをしてくれる者が3人、城門の外で待機が2人だ。


で、同行者の1人はネイザー、“エヴィエイションバイク”での送り迎えの1人はヴィアルト、此処は決定だ。

ネイザーは悪いけど、僕が説明している内容に対して時折、反対意見や別の可能性についての見解を言って貰いたい。

ヴィアルトも悪いんだけど、“エヴィエイションバイク”で、僕の“天地鳴動”と“千変万化改”を守っている様に見せながら、周囲をキョロキョロして、城門周辺の警備がどう云う風に行われているかを記憶して欲しい」


「畏まりました」

「はい、お任せ、下さい」


「じゃあ、後のポジションだけど、もう1人の同行者に関しては、誰でも良い。

正直言って、メイドっぽく振る舞ってくれたら良いから。


で、“エヴィエイションバイク”での留守番のもう2人は、1つ大事な仕事が有る。

其れは、トイレを借りる事だ。

恐らく、女性用は城内だろうから、その際に道に迷った振りをして城内を見て回って欲しい。

潜入の必要は無いから、ある程度の構造さえ見ておいてくれたら良い。


そして、外で待機して貰う2人は、いざと云う時の逃走ルートを見極める為に、周辺警備の動きを観察しておいて欲しい。


まあ、誰がどの配置でも問題は無いと思うから…………」


「其れなら、もう1人の同行者は、ルーツニアス。

城内に武器は持って入れないから、戦闘になった時にはルーツニアスが1番強い」


「はい!!」


「え?!ルーツニアス、素手だったらペアクーレよりも強いの?」


「はい、でもまだレアストマーセさんとティヤーロさんには敵いませんけど」


「そうなんだ。

そう言えば、最近の訓練はずっとナエラークとばっかりだったからなぁ〜……

今度、みんなとも一通り手合わせをしてみないといけないね」


「はい、是非お願いします」


「うん、で、ペアクーレ、他のポジションも決まってるの?」


「はい、トイレを借りる係は、シイーデとツナフォーテ。

多分、2人が城内のメイドっぽく紛れるのに向いてる」


「はい、お任せ下さい」

「が、頑張ります!!」


「うん。で、外の見張りが私とリティラ。

私は、城門が敵に封鎖された時に、手早く斬る為、リティラは城門が閉められた時に破壊する為」


「はい、任せて下さい。

でも、今日見た感じだと、最悪、城壁の破壊も可能だと思いますから、逃げる時は何処からでも大丈夫です」


「ええっと、うん、良いんじゃないかな?

でも、まあ、あくまで万が一の時の役割だから…………」


「ノッド様、もしかしたら、チパーティアム・ヴァー・イジャランがノッド様に一目惚れして、ノッド様を捕らえようとするかもしれない。

警戒はしっかりするべき」


「いや、もちろん警戒はするけど、その一目惚れして捕らえるって…………」


「ネクジェーが、前の皇帝が貴族の娘を食事に招いて、気に入ったら捕らえてたから、女皇帝が同じ事をしないか警戒した方が良いって言ってた」



ペアクーレの言葉に、S級代理官のメンバーが全員頷く。


みんな、なんて素直な良い娘達なんだろうか…………


間違い無くネクジェーの冗談なのに真剣な表情過ぎて、『ネクジェーの冗談でしょ?』とは言えない雰囲気だ…………


僕は助けを求める様にネイザーを見たが、笑顔で返して来るだけだ。

アレは諦めろと言っている。


ヴィアルトを見ても、苦笑している。

アレも諦めろと言っている。



…………僕は諦めた。

この話題はスルーしよう。



「じゃあ、明日はそんな感じで宜しくね」


「「「はい!!」」」


力強い返事が逆に心配でならない…………





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